忘れてはいけない、長時間労働対策
当コーナーでは、従業員40人程度の架空の会社「きょうかい株式会社」が健康企業宣言に取り組むという設定で、具体的な方策について解説しています。
第4回目の今回は、長時間労働対策について取り上げます。長時間労働対策は、健康優良法人の認定基準の評価項目に入っており、「きょうかい株式会社」でも課題の一つです。
※「健康経営」は、特定非営利活動法人健康経営研究会の登録商標です。
長時間労働(残業)を減らすには、まずは意識改革から
2020年4月から中小企業にも働き方改革関連法が施行され、時間外労働(残業)の上限規制が導入されました(大企業は2019年4月から)。時間外労働の上限は、原則月45時間、年360時間となり、臨時的な事情があって労使が合意する場合でも、時間外労働は年720時間以内とする必要があります。また、時間外労働と休日労働の合計は単月100時間未満、2~6カ月平均80時間以内に設定する必要があり、上限を超える残業には罰則が科されるようになっています。
「きょうかい株式会社」でも、長時間労働の是正と残業の削減が課題です。
「繁忙期の先月は、80時間を超える時間外労働をした従業員が4人か……。健康面への影響も心配だなぁ」
長時間労働が続くと、睡眠不足や危険な自覚症状に気づかなかったり、健康管理が不十分になったりしがちです。その結果、食習慣が不規則になり、睡眠時間が短くなってしまいます。それらが重なり、ゆくゆくは脳・心臓疾患(過労死)、精神疾患や自殺(過労自殺)、他にも胃十二指腸潰瘍・過敏性腸症候群など、さまざまな健康障害や事故・けが(過労事故死)にもつながりかねません。過去の裁判例でも、長時間労働は心身の疲労を招き、重大な健康問題を発生させることになることが明らかにされています。
きょうかい株式会社では、夜遅くまで働いている管理職も増えてきていますが、その実態を正確に把握できていません。健康管理担当者のケンポウさんは具体的な対応策をいくつか考え、社長にも相談して長時間労働対策を強化することにしました。
長時間労働解消の具体策
①勤務時間・タスクを「見える化」して適正管理する
長時間労働の原因の1つに、従業員の業務内容とスケジュールを正確に把握できていないことがあります。専用のITツールなどを活用しながら、従業員のタスクと1日のスケジュールを可視化することにしました。
また、日々の勤務時間を「見える化」することも重要です。事業所の入退出管理やPCのログオン、ログオフ時間の管理などの方法を検討し、客観的に従業員の勤務時間を管理することとしました。
②管理職の意識改革をする
管理職の意識が変われば、チーム内の長時間労働が是正されることもあります。例えば、「上司が部下の適性とキャパシティを考えながら、業務を公平に振り分ける」「上司が率先して定時退社することで、部下が帰りやすいようにする」などです。
③経営陣が率先して指針を示す
意識改革において最も大切なのは、トップが率先してメッセージを発信すること。残業削減について指針を打ち出す際も、「月〇〇時間削減する」という具体的な目標を設定し、「毎週水曜日はノー残業デーとする」という具体的な行動計画とともに発表してもらいました。
社内コミュニケーションの活性化にも
社長がリーダーシップをとって組織として取り組むことで、残業を“善”とする社内風土が変わり始めました。
以前は残業を前提として業務のスケジュールを組んでいた従業員も、普段の業務を見直し、効率的に仕事に取り組めているようです。また、チーム内で業務を公平に振り分けることで、社内コミュニケーションの活性化にもつながりました。
引き続き、働き方改革を継続し、従業員みんなが健康で安心して仕事ができるといいな、と思うケンポウさんです。