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問診票がやってきた-セルフチェックを生活習慣改善のスタートに

食事を減らしているのに太る……栄養不足のせいかもしれません

医師の薬を使っている人は特定保健指導の対象にならない

協子さんが最初の質問を見ると、いきなり薬の使用の有無を答えるもので、やや身構えてしまいました。

「薬……。父は血圧を下げる薬をのんでいるけど、私はどれも当てはまらないわ」

質問1~3は、高血圧症、糖尿病、脂質異常症といった生活習慣病についての治療状況をたずね、検査結果の解釈に役立てたり、情報提供・保健指導などの対応を検討するためのものです。薬をのんでいる人は説明書などを確認のうえ、記入するとよいでしょう。

質問4~6になると、脳卒中や心筋梗塞、慢性腎不全といった、重い病気の名前が並んでいます。協子さんはすべて「いいえ」でしたが、これらの病気にかかっている人や、治療を受けたことがある人の場合、主治医と連携して生活習慣の改善指導を行うことになります。

喫煙は健康を害する習慣

質問7は貧血の有無を確認するもの。

「貧血かなと思うことはあるけど、医師にいわれたことはないわね」

協子さんを含む多くの女性が「はい」と答えそうですが、立ちくらみなどのいわゆる脳貧血はこれに該当しません。医師の診断を受けたほどの貧血(鉄欠乏性貧血など)では、主治医と連携して生活習慣改善指導を進める必要があります。

質問8は喫煙習慣を問うものです。

「私は『いいえ』だけど、夫は外でどれくらい吸ってるのかしら?」

喫煙は動脈硬化を進め、生活習慣病や心筋梗塞、脳卒中のリスクを高めることが明らかなので、メタボ健診では、喫煙していること自体が異常値とみなされます。「はい」と答えた人は、禁煙に関するアドバイスや耳より情報を受けるとよいですね。

協子さんは、夫に改めて禁煙を強く勧めようと思いました。

食事・運動習慣の見直しが生活習慣病のリスクを低下させる

質問9は、体重の増加を問うもの。体重の増加は、食事からとるエネルギー量が、消費しているエネルギー量を超えた状態であることを示します。また、増加量が大きいほど糖尿病や高血圧にかかっている人の割合が高いことがわかっています。

協子さんも、ここまでくるといくつか「はい」となる項目が出てきました。 質問10~12は、特にグサリとくる質問です。

「子育てで忙しくて、全然運動してないなぁ」

適度な運動をしっかり続けると、生活習慣病のリスクが低下。運動といえない程度であっても、日常生活で体を動かすこと(身体活動)を増やすだけでも効果があります。

また、サッサッと速く歩ける人は、生活習慣病になりにくいことがわかっています。

「うーん、家事や子育ての合間にできることから、始めてみようかな」

こうして回答しながら、自分のふだんの生活の不健康なポイントを確認していくことが、生活習慣改善の第一歩となります。これも、問診票のメリットの1つです。

早食い、夜間飲食、朝食抜きなどが生活習慣病のリスクに

「また体重の話~? それに、食べる速さなんて聞いてどうするの?」

質問13に入り、協子さんは少々げんなりしてきましたが、体重が増えていても減っていても、変動が大きい場合は、その原因をはっきりさせることが大切です。

早食いは一見、健康と関係ないように感じますが、肥満のもとになりますから、家族の中でいつも早く食べ終わってしまう協子さんは、要注意。

また、質問15~16にある、就寝直前に夕食や間食をとることも、いずれも肥満につながりやすい習慣です。

「間食、ついしちゃうのよね。そういえば夕食後にもお菓子に手が……」

肥満の人は、ふつうの体重の人よりも夕食後に間食をすることが多いという、ショッキングな調査結果があります。一方で、これらの習慣をやめた人は、実際に腹囲や体重が減少したという報告も出ています。協子さんも今夜から意識してやめれば、最近入らなくなった服がまた着られるかもしれません。

質問17の「朝食抜き」は夜の食事が遅いか食べ過ぎている、朝の時間がない、などの生活習慣の乱れと関係しています。

特定保健指導のポイントは本人の改善意欲

質問18、19は、飲酒習慣に関するもの。飲むなら、ここに書かれた適量(清酒で1合程度)を守ること。お酒の飲み過ぎを続けていると、心筋梗塞や脳卒中のリスクが高まるどころか、がんの原因にも!

質問20では、十分な時間、ぐっすり眠れているかどうかを答えます。睡眠の質や量は、生活習慣病やうつ病と密接な関係にあります。

どれも問題がなかった協子さん。しかし「夫には、飲酒量や夜ふかしなど、改めて注意したほうがよさそうだ」と思いました。

「とうとうあと2問。よし、6カ月、いえ1カ月以内に生活習慣を改善するわ!」

自分の生活習慣改善ポイントが見えてきた協子さんは、前向きな気持ちになり、質問21では③を、質問22では①を、力強く選びました。

特定保健指導は、ここで回答した「本人の改善意欲」を念頭におき、一人ひとりに適した方法で進められます。

問診票の記入を終えた協子さん。次は、いよいよ健診を受けて、自分の体の現状を知ることになります。

津下 一代 先生

監修者 津下 一代 先生 (あいち健康の森健康科学総合センター センター長兼 あいち介護予防支援センター センター長)
昭和58年名古屋大学医学部医学科卒業後、国立名古屋病院内科(内分泌代謝科)、名古屋大学第一内科での臨床・研究活動を経て、平成4年愛知県総合保健センターに勤務。12年あいち健康の森健康科学総合センター、22年より同あいち介護予防支援センター センター長兼務、23年より現職。
厚生労働省における「健康日本21」、「健診・保健指導プログラム」の各委員会や日本健康会議に携わる。