女性は40歳を過ぎたら忘れずに! 乳がん検診
尿検査を終えた主婦の協子さん40歳。特定健康診査(メタボ健診)の検査項目で残っているのは診察のみですが、実は、いい機会だからと別に申し込んでおいたオプション検査があります。係の人に案内されて、さらに次の検査へと向かいます。
乳がん検診を初体験
協子さんは尿検査を終えて、待合室に戻ってきました。
『ふう~。もっと時間がかかるかと思ってたけど、意外と早かったわ。苦手な採血もそんなに痛くなかったし、これなら毎年健診を受けるのもおっくうじゃないかも』
気持ちがほぐれたところで、係の人がカルテを確認して次の案内をしてくれます。
「特定健康診査は尿検査で最後になります。先生による診察が残っていますが、これはほかの検査もすべて終わったあとに行いますね」
「はい」
がん検診は特定健康診査に含まれていないため、基本的には市区町村が実施するものを受けることになります。40歳は、乳がん、子宮頸がん、大腸がん検診の無料クーポン配布の対象年齢に当たるため、協子さんも受け取っていました。
ここの健診機関では、健保組合などの医療保険者が実施する特定健康診査だけでなく、市区町村のがん検診も受けられるため、今回一緒に申し込んでいたのです。
「では、次は乳がん検診のマンモグラフィ検査になります。順番をお待ちになっている間に、こちらの問診票にご記入をお願いします」
協子さんは問診票を受け取ると、記入を始めました。
乳がんは日本人女性が最も多くかかるがんで、生涯に11人に1人がかかるといわれています(国立がん研究センターがん対策情報センター「がん統計」より)。30歳代から増え始め、40歳代後半から50歳代前半が発症のピークになります。そこで日本では、40歳を超えた女性は、2年に1度乳がん検診を受けることが推奨されています。
『まず、乳がん検診歴はなし、それから妊娠は2回で授乳は母乳で…って、こんな質問も必要なの? 婦人科系の病気や治療歴はとくになし、家族歴は私の父と母が高血圧で薬を飲んでいたわね。身近な親戚には、乳がんも含めてがん患者はなし。気になる乳房の症状もなし、と』
乳がんの発症には、女性ホルモンの一種であるエストロゲンが大きく影響しています。そのため、初潮年齢が早い、初産が遅い、出産経験がない、閉経が遅い、などのようにエストロゲンにさらされる期間が長い人は、乳がんの発症リスクが高くなることがわかっています。また、良性の乳腺疾患がある人、血縁者に乳がん患者がいる人、肥満の人なども、乳がん発症のリスクが高いとされています。
乳がん検診の問診で質問される妊娠歴や家族歴などは、これらのようなリスク要因がないかを確かめるものです。
マンモグラフィ検査は痛い?
問診票の記入が終わって少ししたころ、協子さんの順番がやってきて検査室へと案内されます。乳がん検診が初めての協子さんは、マンモグラフィ検査も初体験。女性の技師さんに問診票を渡すと、検査前の確認が行われます。
「マンモグラフィ検査は、乳房を透明な板で押し挟んで平らにしたところを、レントゲン(X線)で撮影します。妊娠中、もしくは妊娠している可能性はありますか?」
「いいえ」
「豊胸手術をしていますか?」
「し…してません」
「心臓ペースメーカーなど、胸に埋め込んでいる器機などはありませんか?」
「ありません…」
「では、少し胸に触ります。押されて少し痛いかもしれませんが、がまんできないようでしたらおっしゃってください」
検査前の質問でドキドキしてきた協子さんですが、技師さんはてきぱきと準備を進めます。乳房の撮影は片方ずつ。まずは右の乳房を、検査機械に取り付けられている透明な2枚の板の間に乗せます。乳房全体が乗るように技師さんが調整してから機械を操作すると、板が動いて上下からギューッと押さえられます。
「このまま、しばらく動かないでください。撮影します」
「はい」
上方向からの撮影に続けて、斜めの方向からも1枚撮影したあと、左乳房も同じように撮影して検査は終了です。
『マンモグラフィ検査は痛いって聞いていたけど、私はそうでもなかったわ。ほっぺとかおなかの肉を、強めにつままれたくらいかしらね』
検査着を着直して、協子さんは次の検査に向かいます。