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ストレッチングで体をほぐし、ロコモも予防しよう

ストレッチングで体をほぐし、ロコモも予防しよう

 ロコモ(ロコモティブシンドローム)にならない元気な足腰を保つには、普段から「ロコトレ」で鍛えておくことが大切です。ロコトレの基本の運動は、開眼片脚立ちとスクワットの2つだけ。簡単にできるので、「10分多く」体を動かす「+10(プラス・テン)」に、ぜひ取り入れましょう。

ストレッチングにはさまざまな効果がある

 短時間でできる運動の中でも、手軽にでき、これまで運動不足だった人に特におすすめなのが「ストレッチング」です。
 ストレッチングは、意図的に筋肉や関節を伸ばす運動のこと。本格的な運動の前後に、準備運動や整理運動として行われることが多いですが、ストレッチングだけを行っても、次のようなさまざまな効果があります。

  • 体がやわらかくなる
    筋肉や関節を伸ばすことで体の柔軟性が増し、筋温(筋肉の温度)や体温が上がります。肩・首のこりや体の冷えの改善、姿勢矯正などが期待できます。
  • リラクゼーション効果がある
     ストレッチングの前後に脳波や自律神経活動を調べた研究では、α波が増加し、心拍数が低下することが明らかになっています(*)。
     深く呼吸をしながら体を伸ばすことで、気持ちが落ち着き、よく眠れるようになったり、疲労回復につながったりします。
  • ロコモ予防につながる
     ロコモ(ロコモティブシンドローム)とは、骨や関節、筋肉をはじめとする運動器の障害のために、「立つ」「歩く」などの移動機能が低下している状態のことをいいます。
     ストレッチングを習慣づけて筋肉や関節をほぐしておくことが、ロコモ予防につながります。

*斉藤剛, 保野孝弘, 宮地元彦.特集「ストレッチングの生理学」大脳皮質・自律神経系活動および全身循環への影響.運動・物理療法 2001; 12: 2-9.

ストレッチングを行うときの5つの注意点

 効果的にストレッチングを行うには、次の5つのポイントに注意しましょう。

(1) 呼吸は止めないようにする
(2) 20~30秒程度、ゆっくり伸ばす
(3) 痛いと感じない程度に、適度に伸ばす
(4) ストレッチングする部位の筋が十分伸びている感覚を意識する
(5) 反動をつけたり、押さえつけたりしない

 これらを守らないと、かえって筋が硬直してしまったり、痛めたりしてしまいます。「ゆっくり、気持ちよい程度に」が基本です。

部位ごとにストレッチングをやってみよう

 では、実際にストレッチングを行ってみましょう。
 広い場所も道具も必要なく、簡単なので、家事や仕事の合間やテレビを見ながらなど、いつでもどこでもすぐできます。

【脚】

①ふくらはぎ ②太ももの裏側 ③太ももの表側 ④太ももの内側

【体幹】

①お尻と腰 ②背中の上部 ③首

【肩・腕】

①肩 ②上腕 ③手首

資料:厚生労働省「健康づくりのための運動指針2006」(エクササイズガイド2006)より一部改変

ロコモ予防にはストレッチングに筋トレを組み合わせよう

 ロコモは、要支援・要介護状態となる原因の第1位となっており、働きざかりのころからの対策が重要です。
 日ごろからストレッチングを行って体の柔軟性を保つとともに、簡単なトレーニングを組み合わせるのがよいでしょう。次回からは、体全体の働きをよくするロコトレ(ロコモーショントレーニング)と、足腰を鍛えるための軽い筋トレ(筋力トレーニング)を紹介します。

6月の「+10(プラス・テン)」

●家事や仕事の合間、テレビを見ながらなど、空いた時間にストレッチングを取り入れてみましょう。
●ストレッチングの効果を上げ、安全に行うには、5つの注意点を守るようにしましょう。

宮地 元彦 先生

監修者 宮地 元彦 先生 (国立健康・栄養研究所 健康増進研究部部長)
1988年鹿屋体育大学体育スポーツ課程卒業、1990年鹿屋体育大学大学院修了。川崎医療短期大学助手、講師等を経て、1999年川崎医療福祉大学助教授、同年米コロラド大学客員研究員。2001年国立健康・栄養研究所身体活動調査研究室長、2011年より現職。厚生労働省の『エクササイズガイド』や『健康日本21(第2次)』の策定などに関わる。