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膝の痛みの予防には、「膝痛体操」とウオーキングが効果的

膝の痛みの予防には、「膝痛体操」とウオーキングが効果的

年をとるにつれて痛みを感じやすいのが膝です。膝まわりの筋力が弱いと痛みが出やすいので、若いうちから鍛えておきたいもの。「10分多く」体を動かす「+10(プラス・テン)」に、膝周辺の筋力と柔軟性を高める運動や、ウオーキングを取り入れるのがおすすめです

大きな負担がかかっている膝。老化などで関節軟骨がすり減ると痛みが起こる

 腰痛とともに、ロコモ(ロコモティブシンドローム:運動器症候群)を引き起こしやすいのが、「変形性膝関節症」をはじめとする膝の痛みです。
 膝は、立っているときは体重のほとんどを受け止めています。さらに、歩いているときには膝には体重の約2、3倍の負荷が、階段の昇り降りや走っているときにはもっと多くの負荷がかかっています。また、立ったり座ったり、歩いたり走ったりするたびに曲げ伸ばしを繰り返しているため、膝には負担が集中しやすいのです。
 膝をはさむ上下の骨と骨の間には「関節軟骨」があり、本来、骨同士の摩擦を防いだり衝撃をやわらげるクッションの役割をしています。しかし、老化や病気、膝の使いすぎなどによって関節軟骨がすり減っていくと、はがれ落ちた破片が炎症を起こして痛みを生みます。これが変形性膝関節症です。
 変形性膝関節症は、50代以降、特に女性に起こりやすい病気。さらに、肥満や運動不足で筋力が弱い人、O脚の人、家族に変形性膝関節症の患者さんがいる人、膝に負担がかかる仕事や運動をしている人は、発症しやすいので要注意です。

膝の痛みの予防や悪化防止には、ウオーキングや膝周辺の筋トレとストレッチを

 関節軟骨はいったんすり減るとほとんど修復されることがなく、どんどん悪化していってしまいます。膝の痛みを予防したり悪化を食い止めるためには、適切な運動を行いましょう。
 激しすぎる運動は膝に負担がかかるおそれがありますが、ウオーキングのような軽い運動は、関節軟骨に適度な刺激を与え、軟骨の維持・増強が期待できます。
また、これから紹介する膝痛体操は、膝周辺の筋肉や靭帯(じんたい)を鍛えたり柔軟性を高めたりするものです。膝関節の柔軟性や関節周りの筋力を向上させることで、負担の軽減につながります。  これらの運動と、体全体の働きをよくするロコトレを一緒に行うとさらに効果的です。
 なお、すでに痛みのある人の症状緩和にもおすすめですが、医師の指導に基づき、症状が落ち着いているときに無理のない範囲で行うようにしましょう。

【太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)に力をつける】
どちらかの運動を20回1セットとして、1日に2セット行いましょう。
●いすに腰かけて行う方法
 ①高めのいすの縁につかまって浅く腰かけます。
 ②片方の脚は床につけたまま、もう片方は足首を直角に曲げて、膝をまっすぐ伸ばします。
 ③伸ばした脚のかかとを床から10cmの高さまで上げ、5秒間キープ。その後ゆっくり下ろします。
 ※床に脚をつけたら2~3秒休みます。
  左右両方の脚で行いましょう。

①運動

●あおむけで行う方法
 ①あおむけに寝て、片方の膝を直角以上に曲げて立てます。
 ②もう片方の脚を、膝を伸ばしたまま床から10cmの高さまでゆっくり上げます。
 ③そのまま5秒間キープして、ゆっくり下ろします。
  ※床に脚をつけたら2~3秒休みます。
  左右両方の脚で行いましょう。

②運動

【膝を伸ばす・曲げる】
それぞれ15~30秒間、1~3回を1セットとして、1日に1セット行いましょう。
●膝を曲げる
 片方の脚の足首に両手を添えて、足首をお尻のほうへゆっくり引き寄せ、膝を曲げます。痛みの出ない範囲で行います。
 ※左右、両方の脚で行いましょう。

③運動

●膝を伸ばす
 ①いすに浅く腰かけ、片方の脚をまっすぐ伸ばします。
 ②伸ばした脚の膝の皿の少し太もも寄りに手を添えて、痛くない範囲で、ゆっくり押して伸ばします。
 ③背中を伸ばしたまま上半身を腰から前に倒します。このとき、つま先を手前に引きつけると、ふくらはぎがよく伸びます。
 ※左右、両方の脚で行いましょう。
 ※入浴後など、体が温まっているときに行うと効果的です。

④運動

資料:日本整形外科学会「ロコモパンフレット2015年度版」、日本版変形性膝関節症患者機能評価表(JKOM)

9月の「+10(プラス・テン)」

●いつまでも元気で歩ける膝を維持するために、膝痛体操で膝周りの筋力と柔軟性を高めておきましょう。
●膝の痛みの予防・改善には、ウオーキングもあわせて行うと効果的です。

宮地 元彦 先生

監修者 宮地 元彦 先生 (国立健康・栄養研究所 健康増進研究部部長)
1988年鹿屋体育大学体育スポーツ課程卒業、1990年鹿屋体育大学大学院修了。川崎医療短期大学助手、講師等を経て、1999年川崎医療福祉大学助教授、同年米コロラド大学客員研究員。2001年国立健康・栄養研究所身体活動調査研究室長、2011年より現職。厚生労働省の『エクササイズガイド』や『健康日本21(第2次)』の策定などに関わる。