第8回 斎藤博さん
- 住 吉
- 住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、医学博士で「国立がん研究センター/社会と健康研究センター」部長の斎藤博さんです。
- 斎 藤
- よろしくお願いします。
- 住 吉
- 「国立がん研究センター/社会と健康研究センター」部長ということで、まさに「がんの予防と検診」のスペシャリストです。『がん検診は誤解だらけ 何を選んでどう受ける』という著書もお書きになっています。今日は「がん」という病気について、また「がん検診」について、いろいろと伺っていきます。
日本人の死因の第1位が「がん」というのは知っている方が多いと思うんですが、具体的にどのくらいの人が、どんな種類のがんで亡くなっているんでしょうか? - 斎 藤
- 男女合わせて年間37~38万人が亡くなっているという統計があります。その中でも男女共通で多いのは「大腸がん」「肺がん」「胃がん」で、男女で順位は違いますが上位3位以内です。女性は「乳がん」が5位ですね。こういった上位のがんを合わせると、全体の人数の半分ぐらいになります。ですが、この中には検診でカバーできるものもあるので、検診が勧められています。
- 住 吉
- 今は“早期に発見するとがんは治る”という認識に変わってきている方が多いと思うんですが、予防と検診でがんを防ぐことができるんでしょうか?
- 斎 藤
- この“予防”というのは、「タバコ対策」のことですね。生活習慣を改めていただくことも(予防として)期待はあるんですが、今のところ具体的な手立てとしては、タバコをやめるというのが確実ながん対策だというようにWHO(世界保健機関)も言っていますね。
- 住 吉
- 予防として科学的根拠があるのが、“タバコをやめること”だと。
- 斎 藤
- そうですね。そしてもう一つが「がん検診」ですね。一部のがんについては、国ごとの死亡率がはっきり下がっています。具体的に言うと、女性の乳がんや子宮がんで、過去に死亡率が劇的に下がった国がいくつもありますね。
- 住 吉
- なるほど。がんの予防に関して「一次予防」「二次予防」という言い方をされているそうですが、それぞれどういうことなのか教えていただけますか?
- 斎 藤
- はい。「一次予防」「二次予防」というのは学術用語なんですが、「一次予防」というのは“まず”ということですから、がんにかかるのを防ぐ、ということです。しかし、全部防げるわけではないので、かかってしまった場合、がんの一番怖いところである“命を奪われる”、これを回避する予防が「二次予防」。つまり、検診が二次予防です。
- 住 吉
- その検診について、色々な誤解があると斎藤先生は考えていらっしゃるそうですが?
- 斎 藤
- はい。まず、一番大事なポイントですが、“検診”の対象者は「自分では異常を感じない健康な人」です。では、「どこか異常を感じている人」はどうするか?というと、病院で“診療”の対象となるわけです。この2つの違いをおさえる必要があります。
- 住 吉
- 自分は健康だから検診に行かなくて大丈夫、と思ってしまう人が多いですよね。
- 斎 藤
- 実はそこがシークレットなんですよ。症状があって困っている人は、もしその人にがんがあるとすると、がんが症状の原因になっているわけですから、結構進んだがんになっている可能性があるんです。しかも、がんを持っている確率も、健康な人に比べるとずっと高いわけです。ですから、こういった方は病院に行って、検査も含めて積極的に診断を受けなくちゃいけない。一方、健康な人の中でがんを持っている人は、1000人中3、4人ぐらいなんです。そういう人たちのがんはまだ症状が出ていないので、圧倒的に早期がんの確率が高いわけです。健康な人が検診を受けることによって、そういったまだ進む前のがんを見つけるというのが、がん検診の本質です。