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第13回 山本雄士さん

第13回 山本雄士さん

住  吉
住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、(株)ミナケア 代表取締役で、医師の山本雄士さんです。
山  本
よろしくお願いします。
住  吉
山本さんは、内科医の経験を活かしながら、企業や団体、個人に向けて、「健康」「病気の予防」に関するコンサルティングを行っていらっしゃるということですが、今日は“コラボヘルス”というキーワードでお話を伺っていきます。まず、“コラボヘルス”とは何でしょうか?
山  本
聞き慣れない言葉だと思うのですが、“コラボ”は英語で「協力する」、“ヘルス”は「健康」ということで、「みんなで協力して健康を支え合おう」という意味なんです。元々は「企業と健康保険組合の両者で、企業の従業員の皆さんやそのご家族の健康を支えよう」という意味でしたが、それが段々と広まってきて、「お住まいの自治体と国民健康保険で支えよう」だったり、「みんなでお互いに健康をサポートしよう」という意味にまで広がりつつあります。
住  吉
では、割と広い意味で使われる言葉なんですね。
山  本
むしろ使ってほしい言葉です。
住  吉
具体的に“コラボヘルス”というのはどういう取り組みを指すのでしょうか?
山  本
例えば、会社の中での「タバコをやめましょう」「社内は完全禁煙です」というような取り組みもその一つです。せっかくの大事な人材が急に病気で休んだりすると、会社としても損害が大きいので、健康保険組合や国民健康保険という保険者と言われる人たちが、健診の結果等の色んなデータを使って「Aさんはこういうリスクがあるから、それをもっと良くしておかないとあとで病気になる」等の分析をして、その人にあった健康対策を考えたり、同僚やみんなで支えていこう、ということがコラボヘルスの取り組みです。
住  吉
健康診断の結果を送って終わりではなく、その先までサポートするということですね。これが根付いてきているということですか?
山  本
今まさに根付こうとしています。政府も積極的に動いていますし、企業の経営者も、これがいかに重要かということに段々と気づいてきています。政府は、高齢化で医療費が増えてくる時代に、健康を守ることがこの国の未来をつくる、ということをしっかりとわかっているので、力を入れています。そして企業は、大事な人材が病気等で働けなくなってしまうとなると、会社にとっての損失も大きいですし、医療費(健康保険料)は会社が半分払う仕組みになっていますから、医療費の負担も大きくなりますし、何より従業員やその家族の人生に不幸なことがあってはいけない、避けられる病気は避けよう、という発想からみんなが頑張っています。
住  吉
ちなみに、会社員の方は、今隣にいる方が倒れたら自分の手取りの給料が下がるらしい、ということですが?
山  本
そうなんです。会社員の方が銀行口座に振り込まれるお給料は、税金と健康保険料が引かれた額になっています。その引かれた健康保険料が何に使われるかというと、同僚たちの医療費に使われるんです。ということは、隣の人が倒れたら、その人の医療費を会社(が加入する健康保険全体)で支えなければいけないので、従業員一人ひとりの給与天引き額(健康保険料)が増えていきます。
住  吉
そのことによって健康保険の引かれる額が変わってくるんですか?
山  本
変わります。なので、医者にかからなくて済むように健康を管理している方が、お財布にとっても健康なんです。
住  吉
そのことを知らない人は多いですよね。
山  本
多いんです。
住  吉
では、会社の隣の人や同じチームの人の健康について、「大丈夫?」と言ってあげることが、自分のお給料にかえってくるかもしれないんですね。
山  本
確実にかえってきます。
住  吉
そうすると、健康に対して周りを見る目も変わるかもしれませんね。山本さんは元々内科のドクターでいらして、今は医療コンサルティングをされていますが、医療コンサルティングに関わるようになったきっかけはあったんですか?
山  本
私、6年医者をやっていて、心臓が専門だったので、救急医療等の命に関わることをやっていました。今もそうですが、日本の医療の場合、患者さんが病院に来るまで待っているんです。患者さんがやってきて、治療して、亡くなられる方もいる。そのときにふと、患者さんが倒れるまで待っている医療はもう時代に合っていない、と思いました。倒れる前に「あなた、放っておいたら倒れちゃうよ」と。倒れた後のご本人の人生だったり、ご家族の大変さ等を日々目の当たりにしていると、放っておけないなと思ったんです。