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第22回 河盛隆造さん

第22回 河盛隆造さん

住  吉
そうすると、糖尿病は治るんですか?
河  盛
治りますよ、もちろん。
住  吉
一度糖尿病になってしまうと、アレルギーのように一生糖尿病というものかと思っていましたが…。
河  盛
世間一般でいう「糖尿病」、学問的には「2型糖尿病」と言いますが、これは治る方もたくさんいます。「10年間、お薬やインスリンの注射を使って糖尿病の治療をしたら、良い状態が続いて、ついにはそれらの治療をやめてしまった。それでも良い状態が続いていて、糖尿病が治ったと言わざるをえない」というケースもいくらでもあります。
住  吉
そうなんですね。
河  盛
でも多くの方は「糖尿病の治療などを受けると、美味しいものを食べられなくなる。甘いものを食べられなくなる」と思ってしまって、病院に来られないんです。
住  吉
糖尿病と診断されているのに、病院に行かない?
河  盛
はい。
住  吉
放置すると危険ですよね?
河  盛
そう。私はそれを「糖尿病放置病」と言っています。
住  吉
糖尿病が重度になってしまうと、どんな症状が…?
河  盛
糖尿病特有の合併症というのは、目の網膜の血管が破れてしまう。そのために、最悪の場合は失明する。日本で1年に1万人の方が失明していますけれども、その理由の半分は糖尿病です。それから、腎臓が悪くなって透析になる原因の第1位も、糖尿病なんです。でも、その合併症が起こるのは、とても悪い状態が20~30年続いた場合です。ただ、「まだ大したことはないけど糖尿病だよ」と言われているときにも、動脈硬化は進行しているので、心筋梗塞や脳梗塞になる方もとても多いんです。ですから、軽いときからでもきちんと(治療)しなければいけないということですね。
住  吉
そして、早く改善すればするほど、重度の合併症にはなりにくいわけですもんね。
河  盛
なるはずがないんですね。
住  吉
しかも治ると。それは私も知りませんでした。
さて、若い方でも糖尿病になってしまうとのことでしたが、若い女性も注意しなければならないという「サルコペニア」とは何でしょうか?
河  盛
東京の20代の女性で、背がすらっと高いけど痩せている、いわゆる、BMIが20を切っているような方々、60数名に来ていただいて、検査をしました。そうすると、(肌の)色がとても白いんです。血液中のビタミンDのレベルを調べると、とても低かったので、骨粗しょう症じゃないかと調べてみると、骨粗しょう症になっていました。なぜそういうことになったのかをお聞きすると、「日に当たって(肌が焼けて)黒くなるのは嫌だから、なかなか外出しない。外出しても、日傘をさしたりして、日に当たらないようにしている」と。紫外線がビタミンDなどを活性化させて、骨にカルシウムを取り込みますので、それがないために、20代の女性が骨粗しょう症になっている。そして、足が細いですから、全身の筋肉の量を調べてみると、とても少ないんです。「サルコペニア」というのが今注目されていますが、“サルコ”というのは“筋肉”という意味で、“ペニア”は“少ない”という意味。
住  吉
筋肉が少なすぎる状態?
河  盛
そうです。サルコペニアは、お年寄りに起きるんです。お年を召してくると、栄養状態も悪くなり、動きませんから。
住  吉
だんだん筋肉が減ってきますよね。
河  盛
そうすると、たやすく転倒する。転倒すると骨折も起こす。動けなくなる。介護になってしまう。そういうことで、サルコペニアというのはお年寄りの女性などで注目されていて、それを防ごうとしているんです。ところが、東京の若い女性がそうなっているということで、とても驚きました。
住  吉
そのサルコペニアや骨粗しょう症である状態というのは、糖尿病とも何か繋がるんでしょうか?
河  盛
繋がります。なぜ、若い女性でお仕事もしている方が、こんなことになったのかと聞きますと、先ほどお話ししたように、外出しないんですね。次は、運動しないんです。もう1つは、太りたくないから炭水化物を食べない。何を食べているかというと、例えば、ハンバーガーのパンを捨てて、中身だけ食べたり、唐揚げだけの夕ご飯にしていたり…とおっしゃるんです。そうすると、身体中でブドウ糖が足りない。身体は、大切な筋肉のタンパクを分解してブドウ糖に変えようとします。だから筋肉がどんどん落ちてしまう。
住  吉
サルコペニアの状態がもっと悪くなるということですね。
河  盛
そうなんです。そして、ブドウ糖を含んだいつも通りの食事をとっていただいて、食後の血糖値を見ると、上がっていっているんです。下がってこない。
住  吉
どうしてですか?
河  盛
わずかだけれども脂っこいものばかり食べているので、肝臓が脂肪肝になって、インスリンの働きが落ちているんです。
住  吉
えっ、サルコペニアになるぐらい痩せているのに、肝臓は脂肪肝?
河  盛
はい。肝臓はときどき入ってくる脂を取り込んでいる。だから、インスリンが出ても、肝臓が上手く働かないので、ブドウ糖が抜けて、食後に血糖値が上がる。そのブドウ糖を筋肉は取り込みたいんですけれども、筋肉の量はとても少ないし、上手く取り込めない。だから血糖値が上がって、だらだらと下がってこない。やはり糖尿病と同じ状態になっているんです。
住  吉
では、今は糖尿病になる要因が多様化しているんですね。
河  盛
おっしゃる通りです。だから、極端な炭水化物制限食は非常に良くないんです。特に若いときから、バランス良く、美味しいものを1日3回きちんと召し上がること、それが非常に重要です。それから、筋力をつけるためにも、よく動き回らないといけないんです。朝から晩まで机に向かって、コンピューターばかりいじっているお仕事の方には、せめて通勤のときにしっかり歩いたりしてくださいね、とお伝えしています。
住  吉
では、糖尿病予防のための食事や生活では、何を大事にしていけば良いでしょうか?
河  盛
1日3回の食事ですね。それをバランス良く、せめて炭水化物は60~70%、残りはできるだけタンパク質を多くして、脂肪を控える。戦後日本は、お米の消費量が半分以下になったんです。ところが、日本人はみんな肥満になってきている。この原因は、脂なんです。脂を無意識の間にたくさんとっていますので、ぜひバランスの良い食事をとるように。それから運動ですね。歩いていただくなら、早足で歩く。だらだら歩くよりも、少し早足で歩くと、筋力はよりついてくるんです。そのように意識していただくことが重要だと思いますね。
住  吉
血糖値は健康診断でチェックすることができるんですね。
河  盛
もちろんです。
住  吉
健康診断に行ったときには、気にした方が良いと。
河  盛
そうですね。
住  吉
河盛先生ご自身も、健康診断は受けていらっしゃいますか?
河  盛
もちろんです。毎年きちんと受けています。
住  吉
ご自身の血糖値の値も気にして?
河  盛
はい。よく知っています。
住  吉
自分を知るということが大事だということですね。最後に、河盛先生の「健康の秘密」を教えてください。
河  盛
やはり“好奇心”ですね。歳をとってくると、認知症が怖い。認知症を防ぐためには、あらゆることに好奇心を持つことです。例えば、ドラマを観て、次に何が起こるのか、とても興味を持つことが大事ですね。それから何よりも、身体を動かすこと。まめに動かすことによって、筋力を維持することですね。
住  吉
河盛先生のご著書『今すぐできる! 血糖値を下げる40のルール』『最新版 計算いらず 糖尿病のおいしいレシピ』などでも、糖尿病、そして血糖値について知ることができます。興味のある方はぜひチェックしてみてください。河盛隆造さん、ありがとうございました!
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