第25回 松尾たいこさん
- 住 吉
- 住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、アーティストでイラストレーターの松尾たいこさんです。
- 松 尾
- よろしくお願いします。
- 住 吉
- カラフルでポップなイラストで人気でいらっしゃいます。広告や雑誌、CDのジャケット、本の装丁など、松尾さんの作品を一度は目にしたことがあると思います。企画展などのアートディレクションも手掛けていらっしゃいます。そんな松尾さんの最近のご著書が『35歳からわたしが輝くために捨てるもの』という本なんですけれども、なぜ“35歳”に着目されたのでしょうか?
- 松 尾
- 実際に私が、32歳まで広島で普通の会社員をしていたんですけど、32歳の時に東京に出てきて、初めて夢だったイラストレーターを目指して、35歳からイラストレーターになって、そこからすごく自分の内面も実際の環境も変わっていったから、ということなんです。
- 住 吉
- なるほど。今、松尾さんは54歳で、30代、40代を通ってきているわけですが…振り返ると、色々と捨てて来られましたか?
- 松 尾
- そうですね。持っている必要がないものはいっぱい捨ててきたと思います。
- 住 吉
- その方が良かったなと今も感じているということですよね。
- 松 尾
- そうです。
- 住 吉
- ということで、「手放すこと」「捨てること」が今日のキーワードになっていますが、松尾さんの「捨ててきたもの」、あるいは「捨てた方が良いと思っているもの」が、『35歳からわたしが輝くために捨てるもの』の巻末にまとまっています。「くすまない女性になるための松尾流捨てるものリスト39」というのが載っているんですけれども、今日はその中から10項目をピックアップしました。
- 若さへの執着を捨てる
- コンプレックスを捨てる
- “知らないと恥ずかしい”を捨てる
- “完璧主義”を捨てる
- “あると便利”を捨てる
- 詰め込みすぎをやめる
- 不機嫌顔をやめる
- 努力への期待をやめる
- “他人のものさし”を捨てる
- プロへの口出しをやめる
- 住 吉
- 聴いている皆さんは(この10項目を)できているでしょうか? 私は、『不機嫌顔をやめる』は意外にできないんですが…大事だということですよね。
- 松 尾
- 大事ですね。本当は不機嫌じゃなくても不機嫌に見える顔の人はすごく損しているなと思って。特に40、50代ぐらいになってくると、普通にしていても顔が垂れて口角が下がってくるから、美味しいものを食べているのに口角が下がっていたり、電車の中で眉間にシワを寄せながら携帯を見たり。そういう人は絶対損だなと思うんです。それで私は、何でもない時もなるべく口角を上げるように気をつけていたら、楽しそうに見えるから、みんなに親切にしてもらえるようになったんです。やっぱり不機嫌顔をしない方が良いんだなと。
- 住 吉
- 無意識の不機嫌顔はしない方が良いということなんですね。イラッとした時にすぐ顔に出てしまうということかと…。
- 松 尾
- それは仕方ないと思うんですけど…気づいたのが、口角を上げているとあまり人の悪口が言えないんですよ。そうすると、本当は不機嫌でも、その場の雰囲気がそこまで悪くならないなと。でも、怒るときは怒って良いと思います。
- 住 吉
- あと、『努力への期待をやめる』というのはどういうことですか?
- 松 尾
- 努力したものが必ず成功に繋がると思ってしまうと、繋がらなかった時に努力が無駄だと思うじゃないですか。
- 住 吉
- 「こんなに努力したのに!」と。
- 松 尾
- はい。だけど、初めから「努力したものが絶対成功する」と思っていなくても、努力をすると少しずつ身につくじゃないですか。例えば、英語の勉強を始めて「通訳になろう」と思っても、(通訳には)なれないかもしれないけど、海外の友達ができたり。なので「努力の経過を楽しむ」と思えば、初めから努力を諦めるということにはならないと思ったんです。
- 住 吉
- 「努力の経過を楽しむ」って面白いですね。しかも、歳を重ねるごとに「努力してもしょうがないや」という諦めが積み重なって、どんどん努力自体をしない人になってしまう恐れがあるかもしれないと。
あと『“完璧主義”を捨てる』、これが意外とできない…。体力が落ちてくるから“完璧にできない度”は上がっていくのに、頭では「完璧にしたい」という気持ちのままだと、そのギャップに対する自分への失望感や疲労が溜まるんですよね。 - 松 尾
- そうですね。だから、「できるところまででOK」と思ったり、自分だけで完璧にしようとしない。例えば私だったら、絵を描くところは完璧にできたとしても、それを売り込んだり、事務的なことは苦手なので、それを完璧にしようとするために、マネージャーにお願いしています。