第32回 加藤俊徳さん
- 住 吉
- 深いですね。弱い脳番地をどう鍛えれば良いのか、脳トレ方法もいくつか教えていただけるとのことですが、自分のイライラがコントロールできなかったり、人と接する時に感情的になってしまったり、という感情系の番地の脳トレ方法はあるんでしょうか?
- 加 藤
- はい。一番簡単な方法は、人の話を聴いた時に、正確にメモするということです。
- 住 吉
- 聴覚と関係しているんですか?
- 加 藤
- 聴覚と関係しています。正確に脳に情報が入っていないので怒りに繋がっている、ということがほとんどなんです。正確に入れば考えることができるんですが、入っていないので、理解できなくてすぐキレる。
- 住 吉
- では、人に対してイライラしてしまう人は、その人とのやりとりを書き出したり?
- 加 藤
- じっくり書いてみて、「この人はこういうことを言いたかったんだ」と一呼吸置くと、怒りがかなり出にくくなります。それでも収まらない場合は、両手に新聞紙を持って、その新聞紙を両手でくしゃくしゃにして丸めてください。そうすると、右脳と左脳が運動系の脳番地を両方使わないといけないので、他の番地に行かないんですよ。
- 住 吉
- えー面白い! 落ち着かせてみたり書き出してみることが、特に脳の感情系で、イライラしたり怒りっぽくなることに効くと。
- 加 藤
- そうですね。そこの感情系を使わないようなトレーニングです。
- 住 吉
- あと、私の周りでも結構悩んでいる人が多いんですが、物忘れが激しい人。
- 加 藤
- 物忘れが激しい人は、2種類います。一つは、忙しい人。忙しい人は、今と明日のことしか考えていないんです。
- 住 吉
- 私、そうかも…。
- 加 藤
- 昨日、一昨日やったラジオ番組や、食べたご飯など、振り返っている暇がないんです。つまり、振り返る脳を使っていないんです。
- 住 吉
- トレーニングはどうしたら良いんですか?
- 加 藤
- 1日10分でも5分でも、昨日やったこと、あるいは今日1日やったことを箇条書きする、ということです。
- 住 吉
- じゃあ、2、3行日記は効果があるんですね。
- 加 藤
- あります。
- 住 吉
- もう一つの、物忘れが激しい人の特徴は?
- 加 藤
- それは、認知症かもしれないです。
- 住 吉
- では、最近物忘れがひどいなという場合にできる脳トレはありますか?
- 加 藤
- あります。まず、睡眠時間は6時間以上寝ているかを確認してください。睡眠時間が減ってくると、昼間の集中力が上がらなくて、物忘れしやすくなります。次に、例えば料理の作り方が突然出てこなくなったりする場合は、(症状が)結構重くなっているので、外に出て1日7千歩ぐらい歩くと、それも徐々に改善していきます。特に週末は、1万歩ぐらい歩けたら予防になります。
- 住 吉
- ちなみに加藤先生はもう研究しているので、悩みはないですか?
- 加 藤
- 僕は、最近運動不足なのが悩みですかね。
- 住 吉
- お忙しいですからね。今日はリスナーの皆さんから、SNSなどでのシェアについてメッセージをいただいているんですが、パソコンやスマホなどのIT機器をたくさん使うことによって、脳が影響を受けたり、変わってきていたりすることはあるんですか?
- 加 藤
- ありますね。使用頻度が高くなればなるほど、脳の中の同じ道路を毎日使っているので、そこが太くなるんです。SNSはほとんど手書きしないじゃないですか。なので、例えば漢字を書く道路がまた別にあるんですが、そこは全然通りませんよね。そうすると、漢字が書けなくなったり。
- 住 吉
- なるほど。携帯電話が出てきてから、電話番号も覚えられなくなったということも聴きますけど、それも関係しているんですか?
- 加 藤
- そうですね。脳はすごく適応するので、番号を覚える必要がないという先入観が入ると、海馬、記憶力にスイッチが入らないんです。だからSNSを使うなら、1日10分でも15分でも何かを記憶する時間を作らないと、その部分はどんどん劣化してきますね。
- 住 吉
- あと、スマホをずっと見ていることによる影響はあるんですか?
- 加 藤
- ありますね。それは、実は見ていることよりも、やっていないことが多くなるんです。特に、人の話を聴いていない。耳を使わないんです。(スマホで)映画などを観る人はまた別ですけども、人が何を言うかわからない状況というのがあまり生じないんですよね。想定内で事が起こるので、想定外の事を言われたり、現実に戻った時に、非常にキレやすくなったりしますね。
- 住 吉
- 先ほどの「聴いていないから怒ってしまう」ということに繋がるわけですね。
- 加 藤
- そうですね。ですから、スマホ、SNS以外にも日常で色々な行動を取った方が良いと思いますね。例えば、ジョギングをしたり、歩く時は絶対にスマホを持たないとか、集中して1~2時間スマホを手に取らないということをしないと、脳は健康にならないですね。
- 住 吉
- 人との食事中にはスマホを出さない、ということでも良いんですか?
- 加 藤
- それは良いですね。
- 住 吉
- 人とお茶しながらでも平気でスマホを使っている人がいますけど、相手も不愉快だったりしますからね。少し気をつけることで変わるということなので、脳って面白いですね。そういう自分の脳の弱点や偏りを知ることで、悩みが変わったり、ストレスが解消されるということなんですよね。
- 加 藤
- そうですね。それを自覚することが一番脳の健康に繋がってきます。
- 住 吉
- まずは自覚から。加藤さんの著書『悩まない脳の作り方』は辰巳出版から発売中です。脳番地のクセがわかる「脳番地チェックリスト」も掲載されていますので、自分の脳のクセをチェックすることもできますし、悩まない脳トレーニングの具体的な方法も27通り掲載されています。気になる方はぜひチェックしてみてください。
加藤さんはドクターでいらっしゃるので、健康診断は定期的に行っていらっしゃいますか? - 加 藤
- そうですね。ついつい忘れがちになりますが、胃の検査や腸の検査をすごく気にしてやっています。毎年変わってくる場合が多いし、脳にとっても、悩みが多くなると胃や腸に来たりすることが多いんです。
- 住 吉
- なるほど。最後に、加藤さんの「健康の秘密」を教えてください。
- 加 藤
- 健康の秘密は“母と連絡を取ること”です。母親に連絡すると、どうも元気になるんです。今日は何をした、天候はどうだ、ということしか喋らないんですが、何だかワクワクしてくるんです。その理由をよくよく考えていたら、母親は僕の人生のアルバムの第1ページに出てくる人で、母親と喋っていると、生まれてからここまでの自分の記憶が一瞬でよみがえってくるんですよ。そうしたら、「よし、今日も頑張ろう」と。自分の脳の健康の一番の源かなと。
- 住 吉
- 健康の秘密は、お母様と連絡を取ること、素敵ですね。加藤俊徳さん、ありがとうございました!
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