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第33回 塩沼亮潤大阿闍梨

第33回 塩沼亮潤大阿闍梨

住  吉
受け止めて乗り越える、と。塩沼さんは『歩くだけで不調が消える 歩行禅のすすめ』という著書を出されましたが、歩くことが「禅の行」になるということなんですよね?
塩  沼
はい。行の時、雑念が自分の中にあるなと思う時は、必ず猫背になっているんです。どういうことかというと、まず「姿勢を正す」、そして「呼吸を整える」、そうすると「気持ちが安定してくる」、この順番なんです。なので例えば、通勤の時や会社で仕事をしている時、しんどいな、疲れたなと思う時は、おそらく猫背になっていると思います。そういう時には、姿勢を正して、呼吸を整える。そうすると、色々なこと、嫌だなと思うことも感謝に変わってきたり、意外と身近なところを調整していくことによって、健康になったり、自分の気持ちが晴れやかになったりします。私が山の中での厳しい修行で得たものを、皆さんの実生活に活かしていただきたいなと思います。
住  吉
リスナーから「私は歩くことがルーティーンで、家から職場まで片道40分くらい歩いている」というメッセージをいただきました。この方は日常の中に歩くことを取り入れていますが、これでも「歩行禅」にあたるんでしょうか?
塩  沼
そうですね。あとは、何も考えないよりは、今日1日あった、あるいは今まであったことでも構いませんが、できるだけ多くの「ありがとう」を思い浮かべることですね、感謝の気持ち。あのときもありがとう、こんなこともありがとう、こういうことがあったから今があるんだなと。逆に、冷たい態度を取ったり、自分はこれが正しいんじゃないかと強く言ったために、陰で傷ついた人がいたりするわけですよね、知らない間に。色々なことを「ごめんなさい」と反省して、何個も思い出しながら歩くというのも、この歩行禅に繋がります。
住  吉
塩沼さんの提案していらっしゃる3つの行、「懺悔の行」「感謝の行」「坐禅の行」がご本に出てきますが、「懺悔の行」がその「ごめんなさい」で、「感謝の行」が「ありがとう」と。禅は、無になるというイメージなので、何も思い浮かべない方が良いのかなと思ったのですが、色々とあったことを思い返すのは、雑念ではないんですか?
塩  沼
雑念ではなく、自分を顧みることですね。1日の終わりに3分でも5分でも静かに座って自分と向き合う、今の人生と向き合う、環境と向き合う。そういうことがあると、次の日すっきりと目が覚めると。
住  吉
それが「坐禅の行」ですね。
塩  沼
はい。これを言葉にすると、「ありがとうございます」「すみません」「はい」ということになります。「はい」というのは何かというと、例えば自分と向き合ったり、相手と向き合う。相手を尊重するということは、相手を拝むような心で。“拝む”は“拝(はい)”と書きますでしょ。相手に敬意を払う、どんな人にも敬意を払う、という気持ちが大事。あと例えば、何か言われた時に「はい!」と言うのと「はい…」と言うのとでは全然違いますよね。「はい…」というのは自分の今の気持ちを全部表しているのと一緒なので、「はい!」と言った方が相手が気持ち良いですよね。これだけでも夫婦の関係が良くなったとか、そういうお話もいただきますね。
住  吉
「行」というと少し難しそうですけど、そう考えるとできそうですよね。そして、姿勢を正して歩きながら「ごめんなさい」「ありがとう」の時間を作ると。1日何歩や何分、どこを歩く、と決めた方が良いんですか?
塩  沼
大体決めても良いし、通勤・通学の時に姿勢を正して、少し早めに歩く、とかでも変わりますね、ダラダラ歩くよりは。一生懸命歩くのとダラダラ歩くのは違いますからね。どうせ歩くなら、ちゃんと歩いた方がより健康になると思います。
住  吉
おしゃべりをせずに、自分の中で「ごめんなさい」「ありがとう」を繰り返す。それだけで違ってきたなと感じられるくらい、行になる?
塩  沼
そうですね。あまり肩に力を入れずに、日常の自分を振り返ってみて、感謝の心やありがとうという想いが強いと、その人からどんどん良い雰囲気が出てきます。それだけでも周りが変わり、家庭が変わり、職場が変わり、環境が変わってくると思うんです。
住  吉
わざわざやると思うと大変なんですけど、通勤や必ず歩く道のルーティーンの中に組み込むとできそうですよね。「ルーティーンをすると心が穏やかになるんですが、それを崩された時にイラッとしてしまう」というメッセージも来ているのですが、ルーティーンが崩されてしまったと感じた時の心の揺れに対しては、どう対処したら良いのでしょうか?
塩  沼
自分の心に1本の針があると思ってください。イラッとするとマイナスの方向に行きます。マイナスの方向に行くと、どんどん恨み憎しみになりますから、自分の人生もそっちの暗い方に行くんですね。ではなく、イラッとしたり、ムッとすることは人間ですからあると思うんですけど、瞬間的に早めに1mmでもプラスの方向にもっていくと、自然と良い方に運ばれていくんですよね。“運ぶ”は“運”と書きますでしょ。運が良いとか悪いというのは、自分の心の針がどっちの方向に向いているかで変わるわけです。
住  吉
じゃあルーティーンが壊されても「ま、いいか」と。
塩  沼
そうです。捉われないことです、そのマイナスの方向に。
住  吉
皆さん、ぜひ歩行禅を始めてみてはいかがでしょうか。塩沼さんは、健康と向き合う機会である健康診断には行っていらっしゃいますか?
塩  沼
必ず行っています。
住  吉
そして最後に、塩沼さんの「健康の秘密」を教えてください。
塩  沼
健康の秘密は“明るい心で生きること”です。
住  吉
今日は、塩沼さんの著書『歩くだけで不調が消える 歩行禅のすすめ』もご紹介しました。ぜひ手にとって、お読みください。塩沼亮潤大阿闍梨、ありがとうございました!
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