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第41回 向井亜紀さん

第41回 向井亜紀さん

住  吉
肉体的にも長くかかったと思いますけれども、気持ちを持ち直すところまで持っていくには、どういうことが大事だったと振り返りますか?
向  井
同じ時期に同じ病棟に入院していた他の患者さんたちが、どういう風に前に進んでいるかを、お医者さんにも看護師さんにもヘルパーさんにもその患者さんたちにも色々と教えてもらいました。私は泣いてすねて、先生に物をぶつけたりして、「亜紀さんが今生きていることには意味があるんですよ」と先生に励まされても、「意味なんかない!」と思っていたのが、こんな風に頑張っている人がいるんだというのを見て、すごく勉強になったんです。その時は、勉強という感じ方もできなかったんですけど、この人がこんなに頑張っている時に、私が泣き散らかしていたら、この人にだけは申し訳ないなと。皆さん、ママたちがすごかったです。この病気って、マザーキラーと呼ばれているんですけれども、これからママになりたかった人や、今ママとして子育てしたい人、私のようにお腹の中に赤ちゃんが入っていた人、そのママを脅かす、殺してしまいかねない病気で。その色々なママたちが、次その子に何をしてあげたいか、家に帰ったら何を作ってあげる、どんな言葉をかけてあげる、とか。今思い出しても泣いちゃうぐらいのすごい人がいたんです。
住  吉
2月4日に『がんとの共生社会を目指して』というシンポジウムにも参加されるということですけれども、そういうことをシェアすることがいかに力になっているかということをお感じになっているから、きっとそういう活動もされているんですよね。子宮頸がん、さらには14回ぐらい手術をされたという中で、腎臓がんやS状結腸がんの手術などもされて、今活動を続けていらっしゃいます。そして、2003年にアメリカでの代理出産で双子の男の子を授かって、(その子が)今中2?
向  井
中2。14歳。
住  吉
息子さんたちを授かってから、自分のこれからの健康や人生の見方が変わったんじゃないですか?
向  井
そうですね。この子たちにあれも伝えたい、これも見せたい、こんな体験もさせたい、と思うと、自分はそこに居られるかなと。未来から自分を見るというような、もう一つの違う目で自分の身体のことを見られるようになったと思います。
住  吉
もちろんだと思いますが、健康診断には欠かさず行っていらして、健康のままいられるかをこまめにチェックされていますか?
向  井
チェックしています。婦人科系の方も、S状結腸がんをやっているのでそちらの内視鏡検査も、毎年受けています。
住  吉
そうなると、ご家族の健康もより心配に…。
向  井
そうなんですよ。病院嫌いの旦那と一緒に(健康診断に)行くことにしているんです。巻き込んで。「何か悪いことが見つかったら、俺は怖い」と言っているので(笑)。だから、「検査に行くことはおめでたいことなんだよ」といつも言っています。「検査に行って、何もなかったらおめでとう、でも何か自分の弱点や悪いことが始まりそうなところが見つかったら、それもおめでとうだからね。病気は1日でも半日でも早く見つけて、そこに対してどうやっつけられるかというのをしっかり考える時間との勝負だから、できるだけ早く見つけた方が良いよ」と言って、2人で内視鏡検査などに行って、「さあ、この時間がやってまいりました! 2人で1発目の下剤、いきますか!」と(笑)。
住  吉
そこも2人で乗り越えると(笑)。素敵なご夫妻ですね。
向  井
そうするとなんだか笑えるんですよね。
住  吉
笑いって大事ですよね、乗り越える時に。あと、同じ経験をされている女性にもすごく励まされたとおっしゃっていましたが、そういうご自身の経験を踏まえて、特に女性リスナーに向けて伝えたいことはどういうことですか?
向  井
がんという病気はもちろん怖いんですけど、怖いから遠ざけるということではなくて、怖いからできるだけ早く折り合いをつけるという方が良いと思うんです。今の時代、長生きする国に生きているので、自分にもしがんという病気が降りかかったらどうすれば良いかという折り合いを、元気な今からつけておいた方が良いかなと思って。自分が生物農芸学科なんですけど、がんというイメージを考える時に、田んぼをイメージしているんです。私、稲が大好きで、稲の研究をやっていたんですけど、稲をイメージしてください、と。自分の身体の中に田んぼがあって、そこに元気な稲が育つイメージをしてください。そこに雑草が生えた時に、できるだけ早く雑草を摘み取れば、稲は農薬などを使わなくても元気に育って、黄金の稲穂を実らせてくれるけど、その雑草を摘むか摘まないかでその先が変わってくるから、見つけて摘み取る力を大事にする。でももし、変だな、いつもと違うなという身体の中からのSOSが聞こえたら、雑草がはびこっているかもしれないので、絶対に田んぼの検査をしてください、と。小さなうちに摘み取れば大丈夫。大きくなったら先生にざーっと田んぼをめくり取ってもらわないといけなくなる。色々なところに転移していたら、農薬という抗がん剤を流し込んで、自分の身体が弱っても、全体的に雑草をやっつけないといけなくなるので、雑草摘みですよ、と。
住  吉
新しいですけれども、すごくイメージしやすいですね。皆さんぜひ、この田んぼのイメージを持って、検査に行っていただきたいですね。
最後に、今、向井さんの考える「健康の秘密」を教えてください。
向  井
私にとって健康の秘密は“未来のイメージ”です。これがなくなってしまうと、「どうせ私なんて生きていたって…」という風になって、自然治癒力、免疫力、抵抗力がゼロになってしまうんです。それで敗血症になって、本当に危なかった時もあったんですけど、雑草を見つける力も摘み取る力もゼロになってしまうんです。なので、秋になったら稲刈りをしよう、というようなイメージです。「家に帰ってお味噌汁を作ろう」「子供に会ってこんな言葉をかけよう」「春になったら同窓会におしゃれして行くぞ」という風に、自分をどのイメージの中に連れていくかということをしっかり考えると、身体がグッと上がるんです。
住  吉
健康の秘密は“未来のイメージ”、素敵な言葉ですね。向井亜紀さんも参加されるシンポジウムが2月に開催されます。『ネクストリボン ―がんとの共生社会を目指して―』2月4日(日)、場所は丸ビルホールです。詳しくはイベントのオフィシャルサイトをチェックしてみてください。向井亜紀さん、ありがとうございました!
ここで、あなたの健康をサポートする協会けんぽ東京支部からのお知らせです。お医者さんから処方されるお薬、皆さんはジェネリックを選んでいますか? ジェネリック医薬品は先発医薬品と同じ有効成分を含み、効き目や安全性が同等であると国から認められたお薬です。先発医薬品に比べ、3割~5割程度安くなる場合が多いジェネリック。上手に使って、賢くお薬代を節約。かかりつけのお医者さん、薬剤師さんに相談してみましょう。
1月18日(木)のゲストは、シンガーソングライターの尾崎亜美さんです。次回もどうぞお楽しみに!