第73回 若村麻由美さん
- 住 吉
- 住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、俳優の若村麻由美さんです。
- 若 村
- おはようございます。
- 住 吉
- テレビドラマなどで活躍する若村さんですが、俳優になるきっかけは、高校時代に観たお芝居だったそうですね。
- 若 村
- そうです。高3の時に渋谷の公園通りを歩いていて、たまたまパルコ劇場で「無名塾」の公演をやっていたので当日券を買って観ました。あっと驚く出会いと言うんですかね。「こういうものがあることを知らないで17年間生きてきたんだわ…」と思って、衝撃を受けました。
- 住 吉
- その前から舞台が好きだったというわけでもなく?
- 若 村
- いわゆるストレートプレイという、セリフだけの会話劇を初めて観て。なんで観ることになったのかも未だにわからないんですけど…看板にひかれたとか、そういうことかな?(笑)
- 住 吉
- 運命だったのかもしれないですね。無名塾は仲代達矢さんが主宰で…。
- 若 村
- そうです。仲代さんが初めて演出をして、奥様の宮崎恭子さんが何十年ぶりかで女優復帰してご出演されていた『ハロルドとモード』というお芝居でした。それで演劇の空間をつくる仕事に何でも良いから携わりたいと思ったんです。
- 住 吉
- そのまま無名塾の門を叩いて?
- 若 村
- 無名塾では年に1回オーディションがあるんですが、それが翌月だったんです。
- 住 吉
- すごい! 運命ですね。
- 若 村
- ありがたいことに拾ってもらえたので…。
- 住 吉
- ドラマや映画と幅広く活躍していらっしゃいますけれども、舞台というのはご自身にとって特別ですか?
- 若 村
- やっぱり元々志したところでもありますし、無名塾の劇空間が好きだったので、夢がすぐ叶ってしまった感じです。無名塾が残していたその頃の舞台の記録映像を、11月10日~25日まで無名塾の稽古場で上映するんですよ。一般のお客様に稽古場に入っていただいて、そこで観ていただくんですが、私は最終日、上映後に仲代さんと対談することになりました。27歳の時に仲代さんの相手役をさせていただいた『ソルネス』というお芝居なんですけど、私も初めて観るのでドキドキしています。
- 住 吉
- わぁ…すごいですね! 9月には、ご自身が出演する舞台『チルドレン』の上演もあります。こちらは、どんな作品なのでしょうか?
- 若 村
- “大地震があって、津波があって、原発事故があった、とある国”という設定なんです。まさに日本の3.11を受けて、イギリスのルーシー・カークウッドさんという30代前半の女性の劇作家が書いた作品です。ロンドンのウエストエンドでやって、その後ブロードウェイでやって、今年のトニー賞にノミネートされ、ついこの間まではシドニーでやっていました。各国で、全て違う出演者でやっているんです。そして、いよいよ日本で。高畑淳子さんと鶴見辰吾さんと私の3人で、この3人は原発をつくっていた元物理学者なんですが、そういう大きな事故があって、自分たちの次の世代の人たちが現場にいる、リタイアした自分たちは今どうすべきか、ということが最終的な大きなテーマで。それぞれの人生を振り返ったり、これからの人生をどう生きるのか、ということをそれぞれが見つめたり。でも、面白いんです、これ。会話劇なんですけど、よく30代の人がこんなことを書けたなというぐらいに60代の人の言葉が巧みに描かれていて。演出は、今日本で一番尊敬する演出家の栗山民也さんなんですが、喜劇がとても上手な方なので、人間関係をとても面白く見せてくれて、結構笑えるところもあります。
- 住 吉
- ルーシー・カークウッドさんは、発想を得た国でいよいよ作品が上演されるということで、期待を寄せたりされているんでしょうか?
- 若 村
- 私がちらっと聞いたのは「日本でどう受け止められるのか、本当に気になる」ということをおっしゃっていたそうです。私も最初に台本をいただいた時に、当事国であるので、色んな立場の方がいらっしゃるし、これは他国でやるよりもすごくデリケートな問題があるなと思ったんですが、台本を読めば読むほど、稽古をやればやるほど、「今やらなければ!」「今ご覧いただかなければ!」という、国境を越え、地球規模で人類の話としてみんなが捉えるべき作品だなというふうに仕上がっています。