第94回 森田豊さん
- 住 吉
- 住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、医師で医療ジャーナリストの、森田豊先生です。
- 森 田
- よろしくお願いします。
- 住 吉
- 今日はインフルエンザ関連のメッセージをお寄せいただいているのですが、ものすごくたくさん来ていて、いよいよインフルエンザの流行が本格化しているんだなと実感しています。
- 森 田
- すごい量のメッセージですよね。
- 住 吉
-
そうなんですよ。先生にもたくさん質問をいただいているので、色々と伺っていきたいと思います。
まずは、今シーズンの状況について教えてください。 - 森 田
- 1月になって、寒くなって乾燥してきたためか、患者数が激増していますよね。東京都でも警報の基準値を上回ったと言われています。今年もA型が多いということなので、全身の痛みや高熱が続くという症状が多いです。
- 住 吉
- 「ワクチンを打っても効果がなかった」という方もいるのですが、これは本当ですか?
- 森 田
- よく「ワクチンは効果がない」「ワクチンを打ったのにインフルエンザにかかった」という方もいらっしゃいますが、ワクチンを打ったからといって、絶対にかからないわけではないんです。ただ、ワクチンを打つと、かかる確率が下がります。大体半分から半分強ぐらいまで下がると言われています。さらに、ワクチンを打ってインフルエンザになっても、重症化を防ぐことができるので、やはり打った方が良いんですよね。
- 住 吉
- あと、複数のメッセージをいただいているのですが、新薬の「ゾフルーザ」というものが出ているんですね?
- 森 田
- そうですね。昨年から保険適用になったんですが、1回だけ内服薬を飲むだけで治療が終わるので、飲み忘れもなくて、非常に利便性に富んでいます。これまであったタミフルなどの薬と違って、このゾフルーザという薬は、身体からウイルスが排出されるまでの時間が短いんです。2016年から1年間にわたって行われた治験では、従来の薬より2日ほど早く身体からインフルエンザウイルスが除去されるのではないかと言われているんです。ただ、全部その薬に取って代わるかというと、少し心配なこともありまして。まだ開発して歴史が短いので、今後1、2年、もっと年月が経つ間に、予期せぬ副作用が出てくる可能性もあるということを危惧する医師もいます。あと、1回服用した薬というのは数日間身体の中で効いていますので、頻度は少ないですが、下痢などの副作用が生じた時に、薬をやめるということができない。ですから、患者さんが希望をおっしゃるのも良いとは思いますが、医師と患者さんで、従来の薬にするか新しいゾフルーザにするかを決めていくということになるでしょうね。
- 住 吉
- では、医師ときちんと相談して、疑問や心配があったらその場で聞いた方が良いですね。
- 森 田
- そうですね。あと、希望は自分で言った方が良いですね。「ゾフルーザを飲んでみたいんだけど…」ということを言えば、医師もきちんと説明してくれるはずです。
- 住 吉
- なるほど。この質問も先ほど来ていたのですが、インフルエンザの予防について「うがいは効果がない」と最近言われているのが大変気になるのですが、これは本当ですか? そして、正しい予防法はありますか?
- 森 田
- うがいの科学的根拠はない、というのが正しいですね。総理官邸のホームページにも、うがいはインフルエンザ予防に科学的根拠がないと記載されていますし、厚生労働省が配布しているインフルエンザ予防のパンフレットにも、マスクや手洗いは効果があると書いてあるんですが、最近になって、うがいという項目が削除されたんです。
- 住 吉
- 小さい時から、学校の手洗い場にも「うがい・手洗いをしましょう」と書かれていたのに、急にうがいは効果がないと言われると若干ショックもありますね…。
- 森 田
- 家に帰った時も「うがいしなさい」とよく言われましたよね。でも、それでは効果がないのはなぜかというと、インフルエンザウイルスが鼻や喉に入ってきますと、たった20分ぐらいで細胞の中に侵入してくるんです。ですから、家に帰ってからうがいしては意味がない。では、20分ごとにうがいできるかと言われるとできない。例えば電車の中や会議中はできないですよね。ですから、この項目が削除されました。ではどうしたらいいかですが、医療仲間で今流行っているのは「20分ごとにお茶を飲む」。お茶のカテキンがインフルエンザウイルスをやっつけてくれるので、お茶を飲むことによって、喉などにあるウイルスをやっつけることができます。
- 住 吉
- お水ではあまり効果がないのでしょうか?
- 森 田
- お水よりは、お茶のカテキン、あるいは紅茶でも良いですね。紅茶にもウイルスをやっつける成分が入っていると言われています。
- 住 吉
- 「気合いで予防できる!」というメッセージも来ているのですが…。
- 森 田
- 気合いを持つというのは良いことだと思います。インフルエンザになった時は、人とも会えなくなりますし、何だか気持ちがすさんでしまうので、気合いを持つことは良いと思いますが、気合いがあればウイルスが排除できるというのは間違いですね。インフルエンザになった時は、できれば家族で食事をしない方が良いです。患者さんは1人で食事をさせた方が良いと、最近言われつつあります。
- 住 吉
- 「家族内でどう感染を防ぐか」というメッセージも複数来ていますが、今おっしゃった「食事を一緒にしない」ということ以外にもポイントはありますか?
- 森 田
- 家の中の意外なところにウイルスが潜んでいるんですよ。例えば、患者さんが咳をして、その唾液がドアノブなどにつき、そのドアノブを触った手が口の中に入る。ですから、そういう唾液がつくようなところを徹底的にアルコール除菌するのがポイントです。
- 住 吉
- では、お手洗いや洗面所などのドアノブは十分に気をつけた方が良いですね。
- 森 田
- はい。タオルなども共有しない方が良いですね。あとは咳が直接ふりかからないようにする。咳のしぶきを介した感染が多いので、これも絶つということで、みんなでしっかりマスクをつける。マスクを予防のためにつけている方がいらっしゃいますが、やはり一番大事なのは、かかった方がマスクをすることです。
- 住 吉
- 広めないということですね。広めないという意味では、薬のおかげでインフルエンザが重症化しにくくなったのはすごく良いことだと思うのですが、「重症じゃないから出かけてしまおう」「仕事に行ってしまおう」というのは、周りの方に迷惑だったり危険だったりしますよね。
- 森 田
- その通りです。今、良い薬がたくさん出てきましたので、熱はすぐ下がることが多いんですよね。ただ、熱が下がった=ウイルスがなくなった、ということではなく、熱が下がってもウイルスは排出されています。学校に行くまでは熱が下がって2日間、発症してから5日間、といった法律もありますし、大人でもそれに準じた方が良いと思います。