第108回 成瀬浩史さん
【著作権について(写真の左から)】
・性感染症の予防啓発:美少女戦士セーラームーン (C)Naoko Takeuchi
・麻しんの予防啓発:マジンガーZ (C)永井豪/ダイナミック企画・MZ製作委員会
・薬剤耐性(AMR)対策:機動戦士ガンダム (C)創通・サンライズ
・咳エチケット啓発:進撃の巨人 (C)諫山創・講談社/「進撃の巨人」製作委員会
・風しんの追加的対策の啓発:劇場版シティーハンター (C)北条司/NSP・「2019 劇場版シティーハンター」製作委員会
- 住 吉
- 住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、厚生労働省 健康局 結核感染症課の成瀬浩史さんです。
- 成 瀬
- よろしくお願いします。
- 住 吉
- 成瀬さんは元々、医薬を専門とする広告代理店に勤務されていて、官民の人事交流で、現在、厚生労働省で勤務されているそうですね。
- 成 瀬
- はい、そうなんです。医薬専門の広告代理店から2代目の出向者に選ばれて、今は新型インフルエンザなどの感染症に関する情報発信などを求められる籍で業務しています。
- 住 吉
- 実際、感染症の予防啓発について、ユニークな取り組みをなさったと聞きました。どんな取り組みなんですか?
- 成 瀬
- 様々なキャラクターとコラボレーションして、感染症の啓発をしています。具体的には、性感染症の検査啓発で『美少女戦士セーラームーン』と、麻しん(はしか)の予防啓発で『マジンガーZ』とコラボレーションしています。また、薬剤耐性(AMR)対策で『機動戦士ガンダム』と、咳エチケットの啓発でアニメ『進撃の巨人』と、風しんの追加的対策の啓発で『劇場版シティーハンター』とコラボレーションしました。
- 住 吉
- どうして漫画やアニメとコラボしようと思われたんですか?
- 成 瀬
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感染症予防を、他人事ではなく自分事として捉えていただくために行っています。例えば、風邪にかかってしまった場合などにおいては、実際に症状があるので「何とかしたい」とご本人は思うと思います。まさに「自分の事」としての問題と認識していると思うのですが、その一方で、感染症の予防となると、感染する前に予め知識としてもっていただく必要があります。ですが「予め」ですので、ターゲットとなる人は、症状がなくて健康な人が多いと思います。「感染症に注意しよう」と言われても、関心をもっていただけないことがあるのではないかと思っています。
そこで、皆さんが大好きな、かつて憧れたキャラクターとのコラボレーションを企画しました。TV、新聞、SNSなどのメディア、職場、学校、家庭などで話題にしていただいて、様々なタッチポイントを通して「なるほど」「面白い」と心にとめてもらえるように、ダジャレといった言葉遊びや名台詞と絡める工夫をしています。
コラボレーションする相手は、啓発ターゲットと親和性の高いコンテンツを選ぶように心がけています。ターゲット層が「かつて憧れた」「好きな」「今もファン」というようなマンガ・アニメのヒーローやヒロインとコラボレーションすることで、啓発内容に耳を傾けてもらうことを目指しています。 - 住 吉
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どの世代をターゲットにするかということと、言葉遊びができるかなどがポイントになっているんですね。
そんな様々な取り組みの中からいくつか伺いたいのですが、まずは、多くの世代が馴染んでいて大好きな『機動戦士ガンダム』。こちらはどんなコラボレーションをしているんですか? - 成 瀬
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こちらは「薬剤耐性(AMR)対策」としてコラボレーションさせていただきました。この企画は、医療従事者と患者さんとのコミュニケーションにおいて、抗菌薬とのつきあい方を今一度考えていただくことを目指しています。
年代の異なる医療従事者、患者さんとの共通言語となり得る長寿コンテンツであること、そしてAMRを主人公の名前である「アムロ」と読むこともできることから、『機動戦士ガンダム』とのコラボレーションを決めました。そこから、「みんなにもできることがあるんだ」といった名台詞に絡めたコピーも織り交ぜています。
その結果、日本語のメディアだけでなく、The Japan TimesやBBCなどの英語メディア、世界保健機関(WHO)のWEBサイトでも紹介していただきました。Yahoo!へのコメントでも、ガンダムの名台詞に絡めて、多くの方がコメントをくださっています。このようにして皆さんに参加していただくのも、自分事化の一つと言って良いかもしれません。 - 住 吉
- 「AMR」という言葉を知らなくても、機動戦士ガンダムがあることで皆さん立ち止まって、読んだり、目を引いたりするんだろうなと思いますね。
- 成 瀬
- そうですね。感染症と直接関係ないものとコラボレーションすることによって、自分の好きなものからまず入って、関心を持ってもらって、「感染症に注意しないといけないな」と思ってもらえるといいのではないかなと思っています。