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第113回 木田厚瑞さん

第113回 木田厚瑞さん

住  吉
住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、元日本医科大学教授で、現在は呼吸ケアクリニック東京の統括責任者で医師の木田厚瑞先生です。
木  田
よろしくお願いします。
住  吉
今日のキーワードは「禁煙」。木田先生はタバコと大変関係が深い「COPD」という病気のスペシャリストだと伺っています。この番組でも何度かCOPDについて取り上げてきましたが、改めて「COPD」とはどんな病気なのかを教えてください。
木  田
「COPD」というのは、慢性閉塞性肺疾患の英語の略で、2003年に全世界で統一した病名にしようということで「COPD」となったのですが、日本人にはなかなか馴染みの少ない病気です。昔は「慢性気管支炎」あるいは「肺気腫」と言われていました。タバコの外箱には今でも「肺気腫になるから注意」と書いてありますが、実は「COPDになるから注意」なんです。つまり、慢性気管支炎と肺気腫は異なる病気なのですが、それを一緒にしたものを「COPD」と呼ぼうということになったわけです。
住  吉
どういう方がなりやすい病気なんでしょうか?
木  田
一番知られている原因はタバコの煙ですが、タバコの煙だけではなくて、大気汚染も問題なんです。あるいは、職場の色んな煙や粉塵を吸う、それも問題なんです。それを長期にわたって吸うと、気管支の細いところに病変が起こって、空気が通りにくくなるんです。空気が通りにくくなると、息切れが出てくる。あるいは、傷がつくわけですから、咳と痰の原因になります。それが長く続いて、肺の機能が低下してくる、というのが「COPD」という病気なんです。
住  吉
木田先生が「この患者さんはCOPDかもしれないな」と疑うポイントはどういうところにありますか?
木  田
私が患者さんを診る時に聞くことが、まず「タバコを吸ったことがありますか?」と。この病気はタバコをやめても進行するんですよ。10年前にタバコをやめましたという人が、50歳か60歳ぐらいになってから息切れが出てくるんです。非常に難しいのは、止める方法がないんです。一旦スタートするとずっと進み続けると言われています。ですから「タバコを吸っていた、あるいは今吸っているか?」ということですね。そして一番のポイントは「風邪をひきやすいですか?」。咳と痰が出ることがあるか、それから息切れですね。息切れという聞き方は非常に難しいんですよ。「息切れがありますか?」と聞いても、ほとんどの人が「ないです」と答えるんですが、例えば「駅の階段をご夫婦で上った時に、遅れていくようなことはありませんか?」「重い荷物を今までは持てたのに、持つとほとんど歩けなくなった、ということはありませんか?」という聞き方をすると、「そういえば女房に遅れるようになりました」などと言われるんです。もっと進むと、「痩せてきて、原因は分からないんだけども体重が減ってきた」ということを言われます。
住  吉
そんなCOPDの患者さんは、今増えているのでしょうか?
木  田
増えているというよりも、元々調査ではだいたい40歳以上の8.6%に相当すると言われています。ところが、新しく診断されて治療している人は、20%以下だと言われているんです。これは日本だけが悪いのではなくて、全世界的に診断率が非常に低い病気なんです。診断されていなければ、当然、必要な注意もされていないので、タバコは有害だけれどもずっと吸い続ける、という人もいらっしゃるわけです。
住  吉
つまり、COPDにかかっているけど気づいていないような方もいると。
木  田
ご本人が気づいていない、あるいは診断する医師も気づかない、それが大きな問題なんです。具合が悪くなって咳と痰が続く患者さんが「風邪で具合が悪くなってきました」と言うと「風邪ですか」で終わる場合がある。でも実際はそうではなくて、COPDの始まりだということがあります。
住  吉
治療法はあるんですか?
木  田
治療法は、まず原因を除くということです。一番大事なことは禁煙。それから薬ということなのですが、COPDに必要な最少限度の薬からスタートします。その理由は、病気の進行を抑えるということと、毎日を快適にする、ということなんです。つまり、咳や痰、息切れが出ないように、毎日の生活を快適にするために薬を出す。そして、この病気のもう一つの特徴は、経過中、一時的に悪くなるんです。これが非常に問題で、一時的に悪くなる原因は、ほとんどが風邪なんですよ。2、3日前から風邪気味で、1週間経つと今度は息切れが出て、もうほとんど動けなくなったと救急車を呼ぶ、ということになってしまいます。それを増悪と言いますが、増悪の頻度というのは、1回起こすと肺機能が低下してしまうんです。入院すれば非常にお金もかかりますし、命も危なくなることがあります。場合によっては、人工呼吸器をつけなければいけないということもあり得るわけです。ですから、そういう増悪をできるだけ防ぐ、肺機能を低下させない、そのために治療を始めるということなんです。
住  吉
今おっしゃったように、病気が進行するとかなり深刻な状況になるケースもあるんですね。
木  田
はい。そして薬の他に、3番目は栄養状態を落とさないこと。だんだん痩せてくるというのはまずいんです。ですから、痩せを防ぐ。それから、太りすぎも息切れの原因になるので、太りすぎないこと。ですから、栄養に気をつけていただくことと、運動していただくこと、これも大事です。これが非常に難しいことで、息切れがある人に「運動しなさい」と言うことは簡単なことではない。ですから、安全に、そして楽しくやって、続けていただかなければいけないんですよね。そのためには、どのくらいの運動をしていいかを決めて、それを日課にして毎日やっていただく、というのが大事です。