文字サイズ

第117回 田中滋さん

第117回 田中滋さん

住  吉
では、地域包括ケアシステムにおいては、本人もそのシステムに参加する意志というのがすごく大切になってくるんですね。
田  中
その通りです。地域包括ケアシステムの主人公は本人です。プロフェッショナルたちはそれを支える人、脇役なんです。自治体がそれを演出して、地域をプロデュースする。我々学者が黒子として支える、という言い方をします。
そして、4つ目は「住まい」です。住まいが古くて、お風呂が危険だったりすると、健康を全うできません。風呂場やトイレを年齢に合わせて改造するのは大切です。最後は、買い物や洗濯、掃除などを支える「生活支援」ですね。この5つで成り立っています。
住  吉
生活支援は、プロが関わることなのでしょうか?
田  中
違いますね。生活支援は、お金を払ってスーパーやコンビニに届けてもらうこともありますし、地域の自然発生的な互助もありますし、NPOなどが自然発生ではなく仕組みとしてきちんと仕掛けて、地域食堂を開いたり、買い物を手伝ったりするようなこともあります。買い物バスとして、地域の医療機関が巡回で使っているバスにタダで乗せてくれたりするということも生活支援です。プロの仕事ではないです。その洗濯や掃除に介護福祉士や看護師さんを使ったら人が足りなくなります。
住  吉
地域包括ケアシステムというのは、介護、医療のプロが連携して頑張ることだと思いがちですが、本人やその地域に暮らしているみんなが意識改革をして作っていくものなんですね。
田  中
おっしゃる通りです。
住  吉
そういう意識をみんなが持つということが一番大変なのではないかと思いますが、その部分について課題はあるのでしょうか?
田  中
義務感に訴えてはできません。「地域の集まりに行くと楽しいね」ということで作らなければなりません。ですから、昼間に集える場所や、散歩したくなるような街づくりをしておくと、必然的にそこで寄り合いができます。その寄り合いの場所に、週に1回は看護師が来て、健康相談に乗ってくれたり、社会福祉士さんが来て、家族の金銭問題の相談に乗ってくれたり、などという仕掛けをしていくと、「そこに行くと楽しいね」と思って、みんなの意識改革が進みます。
住  吉
それをするために、政府や自治体は具体的にどういう取り組みをしているのでしょうか?
田  中
自治体では、地域支援事業と言いますが、地域のそういう集まりをプロデュースするためのコーディネーターを積極的に作っています。
住  吉
そういった新しい職業も普通になっていくのかもしれませんね。
どの層の方にも大切なのは、健康でいること。それが幸せにも繋がると思いますが、健康を決める要因について、実は私たちが思っている以外の要因も大きく影響しているそうですね。
田  中
はい。最近、世界で研究が進んでいます。健康を決める要素のうち、一番大きいのは、社会的要因と言われています。わかりやすい言葉で言うと、人との付き合いですね。人のネットワークをどのくらい持っているか。これは地元でなくてもいいです。外国で働いている子供夫婦や孫と、SNS上で会話したりしてもいいんです。それも含めて、どのくらい喋れる相手がいるか、笑い合う相手がいるか、これが人の健康に第一に効くという研究が進んでいます。比率としては、それが4割ぐらいですね。3割ぐらいが、健康行動と言って、運動したり、タバコをやめたり、お酒を適量にしたり、食事に気をつけたりすること。2割ぐらいが医療や介護サービスですね。きちんとした通院をして、血圧をコントロールする。残りの1割ぐらいが、家を含めて物理的な環境です。階段が転びにくいようにできているか、など。だいたいこんな比率ではないかと研究されています。
住  吉
健康はかなり長いスパンで、しかも健康と関係ないと思っているものも全て関係しているんだなと、今お話を伺って改めて思います。今日の先生のお話についてもっと詳しく知りたいという方は、岩波新書『医の希望』に掲載された田中先生の論文「多世代共生社会に地域包括ケアシステムを役立てる」をぜひお読みいただければと思います。田中滋先生、ありがとうございました!
ここで、あなたの健康をサポートする協会けんぽ東京支部からのお知らせです。協会けんぽでご用意している、35歳以上の加入者ご本人向けの生活習慣病予防健診、40歳以上のご家族向けの特定健診はもう受けましたか? 健診の結果、生活習慣病の発生リスクが高いとわかった方には、保健師や管理栄養士が食生活や運動などの改善策をご提案する、特定保健指導を行っています。特定保健指導のご案内が届きましたら、ぜひご利用ください。
7月4日(木)のゲストは、女優の藤山直美さんです。次回もどうぞお楽しみに!