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第121回 福田洋さん

第121回 福田洋さん

住  吉
住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、順天堂大学医学部総合診療科 先任准教授の福田洋先生です。
福  田
よろしくお願いします。
住  吉
福田先生は、病院で診療や治療にあたるほか、産業医として「働く人の健康」についても詳しく、提言もされているということで、今日の前半のキーワードは「働き方改革と健康」です。
今、広く「働き方改革」が叫ばれていますよね。働き方改革というと、まずは「長時間労働の是正」があげられますが、これは働く人の健康を考える立場からすると重要なことでしょうか?
福  田
そうですね。長時間労働というとすぐ「メンタルヘルス」への影響と思われがちですが、産業医として過重労働面談をしていると、元気でバリバリ働いているような人ばかり来ます。2006年に面談の義務化が施行されたのですが、その時のメインターゲットは心臓や脳の事故(脳梗塞や心筋梗塞)の予防なんです。ですから、大丈夫だと思って忙しく働いている人が突然倒れてしまう、いわゆる「過労死」の予防をターゲットとしています。
住  吉
働いてばかりいて、元気だけれども体を休める時間がない、ということですか。
福  田
そうですね。鍵となるのは睡眠時間です。1日は24時間ですよね。総務省の調査によると、このうち14時間は仕事や通勤、家事などで自由に使えない時間と言われています。残り10時間を睡眠と残業で分けていると考えます。例えば、1日2時間の残業(月40時間)だと、8時間は睡眠に残せます。4時間の残業(月80時間)では睡眠時間は6時間、5時間の残業(月100時間)では睡眠時間は5時間になってしまいます。「睡眠が5時間を切ると脳卒中や心臓病のリスクが2倍以上」と言われています。今回の法改正で禁じられる「月100時間」というのは、そういう意味があるんです。
住  吉
時間だけでなく、働く環境やストレスが健康に影響することもありますよね?
福  田
もちろん長時間労働だけではなく、労働の質も大変影響します。睡眠時間が減ったり、長時間労働そのものがうつ病に対してリスクを2倍程度に高めると言われていますが、時間だけでなく働き方も問題になります。
「テレプレッシャー」という言葉はご存知でしょうか? 「テレ」は「遠隔の」、「プレッシャー」は「ストレス」という意味で、現代はスマホ社会ですので、いつでもどこでもメールやメッセージが飛んでくると思いますが、そういったことがストレスになる、という言葉です。人によっては、1日100〜200件のメールを処理しないといけない人もいらっしゃいますし、土日に上司のメールに返信するのはストレスですよね。フランスでは2017年から「休日にオフラインになる権利」が施行されているそうで、そういったことも考えないといけないでしょう。
住  吉
時間だけでなく、環境やストレスなど、実は見落としているものがあるかもしれませんね。
福田先生は、産業医としても「働く人の健康」を支えているということですが、働く現代人の健康の悩みで多いのはどういったことでしょうか?
福  田
働く現代人で圧倒的に多い自覚症状は、「腰痛・肩こり・首のこり」次いで「目の疲れ」です。これは、パソコンの使用や労働の機械化、長時間の座り仕事の影響があります。また、倦怠感や不安、抑うつ(落ち込み)といったメンタル系の訴えも多く聞かれます。
住  吉
「首や肩がこる」「少し疲れ気味」というのは日常茶飯時という方が多いかもしれませんが、こういったよくある症状でも、それがずっと続くともっと重大なことに繋がるリスクはあるのでしょうか?
福  田
そういった自覚症状から病気になっていくということも、予防しなければいけない大事なことなのですが、最近、企業が注目しているのは、そういった体調不良が生産性に影響を与える、ということなんです。かつては、企業の生産性に大きな影響を与える「体調不良による欠勤(アブセンティーイズム)」をいかに防ぐかが健康管理の目的でしたが、今は「出勤しているけど体調が悪い(我慢して働いている、プレゼンティーイズム)」ということが注目されています。一人一人の生産性低下は小さくても、多くの人が少しずつ体調が悪いと、企業全体としては掛け算で多大な生産性低下に繋がるからです。