第135回 中村清吾さん
- 住 吉
- 住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、昭和大学病院乳腺外科の中村清吾先生です。中村先生は、日本外科学会指導医、日本乳癌学会監事も務めていらっしゃいます。よろしくお願いします。
- 中 村
- よろしくお願いします。
- 住 吉
- Blue Oceanでは、これまでも女性の健康と身体についてクローズアップしてきました。女性特有のがんにも注目してきましたが、今日は「乳がん」のお話です。 まず、乳がんとはどんな病気ですか?
- 中 村
- 乳腺は母乳を作って乳首のところから出すという生理的な働きがありますが、乳がんはそのブドウの房のような母乳を作るところから、乳管という母乳を乳首の方に出す経路の中で、細胞が増殖して出てくる病気です。
- 住 吉
- 原因はわかっているのでしょうか?
- 中 村
-
乳がんの8割方は女性ホルモンの刺激で大きくなるということで、主に女性ホルモンに関係する要素がリスクになります。
例えば、戦後間もない頃は、初潮年齢が遅くて閉経年齢が早く、その短い期間に5~10人のお子さんを産むということで、生理が止まっている期間が多かったのですが、最近は栄養状態が良くなって、初潮年齢が若返り、閉経年齢が遅くなり、その間にお子さんを産む回数も0ないしは1というような少ない数になったので、毎月1回高い女性ホルモンにさらされる機会が大きいという事が一つのリスクに繋がっています。 - 住 吉
- 乳がんは遺伝するのでしょうか?
- 中 村
- 乳がんの5~10%は遺伝性と言われていて、お父さん側お母さん側のどちらかの家系から生まれ持ったBRCA1、BRCA2という遺伝子の変異が原因になって乳がんが起きることがあります。
- 住 吉
- 中村先生は、特に「遺伝性乳がん・卵巣がんの診断と治療」に力を入れていると伺いました。
- 中 村
- そうですね。もし、家系内に複数の乳がんや卵巣がんの人がいる、あるいは若くして乳がんを発症した人がいるという場合には、「遺伝カウンセリング」を受けて、遺伝性の可能性が高いかどうかをまず診断します。その方たちには、希望があれば血液検査をすることによって、原因の遺伝子の変異があるかどうかを調べることができるんです。
- 住 吉
- そうなんですね。そうすると、事前に予防と言いますか…。
- 中 村
- リスクを知って、高いリスクであれば、例えば有名なのはアンジェリーナ・ジョリーさんが予防的に乳房を切除し、卵巣の手術もしたということはありますが、極端に言えばそういう手術的に予防するということもできるし、あるいは高エストロゲンという女性ホルモン剤を服用することによって予防するということも欧米では盛んに行われています。
- 住 吉
- なるほど。気をつけるべき年齢はあるのでしょうか?
- 中 村
- 一般的な乳がんは35歳から罹患率が上がってくるのですが、20代、30代前半というのは、まず第一に遺伝性の可能性があるかどうかということで、家系内に複数の乳がんや卵巣がんの人がいるかどうかということが、一番重要なポイントになります。
- 住 吉
- そして、乳がんの検診についてですが、「マンモグラフィー」と「超音波検査」はそれぞれどんな検査でしょうか?
- 中 村
- マンモグラフィーというのは、上下あるいは左右に挟んでX線の透過性を見る検査で、乳腺そのものはX線の透過が悪いので白く写ってしまうんです。ですから、若くて乳腺が豊富にあって脂肪が少ない乳腺ですと、X線の透過が悪くて白い影の中に小さな異常な白い影を探さなければいけないということで、マンモグラフィーは若い人には向かない検査です。もう一つは、超音波を乳腺の上から、皮膚の表面から当てて、その跳ね返ってくる超音波を画像化すると、いわゆる魚群探知機で魚影が見えるというような形になりますが、この検査方法だと、しこりがあれば乳腺が豊富にあったとしてもしっかりと写るので、若い人にどちらかと言うと向いている検査です。
- 住 吉
- では、お若い方で検査をしたいという場合は、超音波検査?
- 中 村
- そうですね。若い方でしこりが気になるという人は超音波検査を受けた方が良くて、マンモグラフィーは実は見落とされる可能性もある検査になります。
- 住 吉
- セルフチェックも重要になってきますよね?
- 中 村
- 乳がんは体表にできるがんなので、自分で触って気がつくことがあります。実際には、検診の場合、マンモグラフィーも超音波も触ってわからないような小さなしこりを見つけようとするので、触診というのは限界があるのですが、ただそうは言うものの、しこりがある程度の大きさになって外から触ってわかるようなものは自分で気がつくわけですから、注意しておくことに越したことはないと思います。