第135回 中村清吾さん
- 住 吉
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ここからは、乳がんに関する素朴な疑問と最新の治療法について伺います。
まず、乳がんに関する素朴な疑問ですが、お酒やタバコなどの生活習慣も乳がんのリスクを高める原因になるのでしょうか? - 中 村
- そうですね。お酒はおそらくリスクを高めることに繋がっていますが、そんなに顕著に関係しているというわけではありません。タバコも同じで、乳がんのリスクを高める因子の一つだと言われています。
- 住 吉
-
では、両方ともリスクを高めると言われているんですね。
経口避妊薬(ピル)や女性ホルモン補充療法が乳がんのリスクを高める原因になるというのは本当ですか? - 中 村
- そうですね。お酒はおそらくリスクを高めることに繋がっていますが、そんなに顕著に関係しているというわけではありません。タバコも同じで、乳がんのリスクを高める因子の一つだと言われています。
- 住 吉
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では、両方ともリスクを高めると言われているんですね。
経口避妊薬(ピル)や女性ホルモン補充療法が乳がんのリスクを高める原因になるというのは本当ですか? - 中 村
- ピルに関しては、短期間であれば特にリスクを高めることには繋がらないと言われていますが、長期に使った場合には、若干乳がんのリスクが高まると言われています。それから女性ホルモン補充療法というのは、女性ホルモンにはエストロゲンとプロゲステロンの2種類があるのですが、この2種類を合成した錠剤を使うことがあります。この場合には、例えば5年以上服用するとホルモンの刺激で大きくなるタイプの乳がんが若干増えると言われています。
- 住 吉
- そうすると、利用する必要があると感じている方々は、どう取り入れればいいのでしょうか?
- 中 村
- まず検診は年に1回は必ず受けた方がいいということと、5年以内であればリスクが高まることはないということで、産婦人科の先生方とよくご相談することと、乳腺専門医を受診して、検診も毎年必ず受けるということが重要だと思います。
- 住 吉
- そして、もし乳がんに罹患してしまった場合の治療のお話ですが、まず罹患してしまうとどんな症状が現れるのでしょうか?
- 中 村
- 乳がんで一番多いのは、自分でしこりを触れるということで病院にいらっしゃる方が多くて、次は乳首から血が出るというようなことで。ただこれも、そのうちの3割ぐらいが乳がんで、良性のしこりが原因になって血液が出ることもあるので“しこり=乳がん”というわけではありません。あとは、痛みを主訴にしてくる方はいなくはないですが、それほど多くなくて、乳がんの場合はあまり症状が出ず、それが故に少し進んでから見つかることが多いです。
- 住 吉
- 初期の乳がんの場合は、今どんな治療が行われるのでしょうか?
- 中 村
- 例えば、3cm以下で見つければ、乳房を部分的にしこりを包むようにとって、ワキの下のリンパ節という、リンパの流れが乳腺からは最初にワキの下のリンパ節に流れていくことが多いのですが、かつてはリンパ節郭清と言って、リンパ節を徹底的に取り除く手術が行われていましたが、学問が進んで、リンパ節というのはそこに転移があれば取った方がいいけれども、例えば一つ目の門番のような働きをしているリンパ節を見つけ出して、それを1個だけ調べて、そこに転移がなければその先は取らないという、その1個目のリンパ節のことをセンチネルリンパ節と言うのですが、センチネルリンパ節生検を手術中に行って、その1個をお医者さんに出して調べて、その場で転移がないことを顕微鏡で確認してもらいます。そして転移がなければその先のリンパ節は取らない、ということが主流になっています。
- 住 吉
- 中村先生は「乳房温存手術」に注目されて、患者さんと相談しながら治療や手術の方針を決めていらっしゃるそうですが、「乳房温存」とは?
- 中 村
- 先ほど話した通り、早期に乳がんを3cm以下で見つけることができれば、部分的に切除して、左右差のない乳房が残せるならば乳房を残すという手術が、「乳房温存手術」です。乳房を全部切除するという「乳房切除術」というのは、患者さんにとってはツラいことですので、なるべく整容性を考慮して手術を行います。ただそのためには本当に乳がんが3cm以下に留まっているのかどうかを正確に診断しなければいけないので、その場合にはMRIという検査を併用をして、広がりをきちんと把握するということが大切です。
- 住 吉
- 乳房を温存すると、再発の可能性への影響はあるのでしょうか?
- 中 村
- もちろん同じような乳がんが出てこないようにするためには、放射線治療が必要なので、この乳房温存手術というのは、基本的には残した乳房に放射線を当てるという放射線治療を併用するのが一般的です。
- 住 吉
- やはり他人事と思わずに検診を受けることが第一ですよね。
- 中 村
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そうですね。自分に合った検診手段は何なのかを知るということも最近は大切ですね。
乳腺の濃度が濃い人は超音波検査の方がしこりを発見する能力が高いので、そういった検査をどう組み合わせるかということがこれからは重要になりますね。 - 住 吉
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40歳以降は2年に1回の検診を必ず受けてください。また、セルフチェックも欠かさずに、気になる症状がありましたらぜひ乳腺外科あるいは乳腺科を受診してください。
中村先生も、健康診断は欠かさず受けていますか? - 中 村
- 血液検査を中心とする検診を毎年受けています。
- 住 吉
- それでは最後に、中村先生の健康の秘密を教えてください。
- 中 村
- 携帯電話の歩数計を利用して“毎日一万歩歩くこと”を目標にしています。
- 住 吉
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中村清吾先生、ありがとうございました!
ここで、あなたの健康をサポートする協会けんぽ東京支部からのお知らせです。皆さんは、乳がん検診を受けていますか? 生涯のうちに乳がんになる日本人女性の割合は年々増加し、現在では11人に1人と言われています。協会けんぽでは、加入者ご本人様向けに乳がんなどの様々ながんに対応した生活習慣病予防健診をご用意しています。早期発見、早期治療のためにもぜひご利用ください。詳しくは、協会けんぽ東京支部のホームページをご覧ください。
11月7日(木)のゲストは、野宮真貴さんです。次回もどうぞお楽しみに!