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第148回 川合厚子さん

第148回 川合厚子さん

住  吉
住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、社会医療法人公徳会 トータルヘルスクリニック院長の川合厚子先生です。
川  合
おはようございます。よろしくお願いいたします。
住  吉
山形県南陽市にあるクリニックだそうですね。生活習慣病の予防や禁煙外来など、健康をトータルでサポートする病院です。さらに、川合先生は日本禁煙学会の理事で、NPO法人山形県喫煙問題研究会の副会長でもいらっしゃいます。
そんな川合先生とお送りする今日のキーワードは、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」。
改めて、このCOPDについて教えてください。
川  合
「COPD」というのは、「Chronic Obstructive Pulmonary Disease」という「慢性閉塞性肺疾患」の英語の頭文字を取った言葉です。従来、「肺気腫」や「慢性気管支炎」と言われていた病気の総称です。タバコの煙を主にする有害物質を長期に吸い込むことで生じる炎症性の疾患で、タバコによる生活習慣病と言えます。
皆さん、「骨粗しょう症」はご存知ですよね? 骨がスカスカになってしまう病気が骨粗しょう症なのですが、COPDというのは、“タバコの煙で肺がスカスカになってしまう病気”とイメージしていただくとわかりやすいかと思います。
住  吉
罹患するとどんな症状があらわれるのでしょうか?
川  合
慢性的な咳や痰、息切れ、特に階段を登ったり、動いた時に出る息切れですね。そういうものが主な症状です。一部の患者さんは、ゼーゼーしたり、喘息のような症状を合併することもあります。タバコを吸う方で少しでもこのような症状がある方は、歳のせいにしないで、COPDを疑っていただきたいと思います。
住  吉
COPDの特徴は?
川  合
タバコが主な原因なのですが、吸い続けていると肺がだんだん壊れていって、最初はあまり症状もないんです。でも、少しずつ少しずつ進んでいく病気なので、医療機関を受診した時には結構進んでいる状態の方が多い、というのがこの病気の特徴の一つかなと思います。
住  吉
長く吸っていると全員COPDになる、というわけでもないんですよね?
川  合
そうですね。体質、遺伝のようなもの、感受性というものがあって、なる人とならない人がいますが、だいたい喫煙している方の15~20%くらいがCOPDになると言われています。
住  吉
受動喫煙ではCOPDになるのでしょうか?
川  合
受動喫煙でもなるんです。いつも近くで他の人のタバコの煙を吸っているような方は、なりやすいと思います。
特に屋内、建物の中や車の中で常に煙にさらされているのはとても危険だと思います。
住  吉
治療としては、どういう方法があり、そして治るのでしょうか?
川  合
先ほど、タバコの煙が主な原因だとお話ししましたが、どんなにいいお薬を使っていても、タバコを吸っていては肺は壊れていきます。ですので、まず禁煙。その上で、薬物療法や呼吸リハビリテーションを行います。薬物療法というのは、気管支を広げるようなお薬が主で、吸入薬が今治療の中心になっています。その吸入は、きちんと指導を受けてしっかり正しい方法で吸わないと、せっかくいい方法なのに効かないということになってしまうので、先生や看護師さん、薬剤師さんからよく吸入の仕方を教えてもらって、正しい吸入の仕方でやると最大限の効果が得られると思います。
住  吉
先ほどの先生の表現で「肺がスカスカになってしまう」というのが衝撃的だったのですが、そのスカスカがまた元に戻っていくということはあるのでしょうか?
川  合
残念ながらないんです。
一度壊れてしまった肺は元には戻らないので、治療薬で気管支を広げたり、気道の炎症を抑えたり、あるいは吸入薬だけではなくて、飲み薬で痰を出しやすくしたり、貼り薬など、色々あるのですが、そういうお薬を使って症状を楽にして、日常生活がしやすくなるようにすると。COPDの方は、知らないうちに筋力も落ちてしまうんです。なので、呼吸するための筋肉をリハビリしたり、息が苦しくなるとどうしても動くことが億劫になってしまうんですね。でも動かないと全身の筋肉も落ちてしまうので、呼吸筋だけではなく、全身の筋肉を動かす、運動するということも大事です。
住  吉
あくまで外からのアプローチで、肺そのものは一度進行してしまうと戻ることはないと。
川  合
そうなんです。もっと息が苦しくなると、今度は在宅酸素と言って、お家でも出かける時も酸素をつけないといけない状態になってしまうんです。
住  吉
大変な病気ですね。
川  合
そうですね。40歳以降に出やすいのですが、頑張ってお仕事をして、定年になって「これから旅行に行くぞ!」などという時に、息が苦しかったり動けなかったり、人生の楽しみが少し減ってしまう…そんな病気なので、早く気づいて治療していただくということがとても大事かなと思っています。