第165回 望月友美子さん
第165回 望月友美子さん
- 住 吉
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住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、医師の望月友美子先生です。
- 望 月
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よろしくお願いいたします。
- 住 吉
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望月先生は、日本対がん協会の参事をつとめていらっしゃいます。禁煙の推進、タバコフリー社会の実現にむけて、積極的に活動していらっしゃるということで、今日、望月先生とお送りするキーワードは、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」。
これまでも何度か取り組んできた話題ですが、改めて、COPDについて教えていただけますか?
- 望 月
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はい。日本語では「慢性閉塞性肺疾患」と言うのですが、英語では「Chronic Obstructive Pulmonary Disease」、その頭文字をとって「COPD」と言っています。私が医学部の時には「慢性気管支炎」や「肺気腫」、「気管支拡張症」という病気でしたが、今は病態として一つにまとめて「COPD」と言っています。
- 住 吉
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「タバコ病」とも呼ばれているんですよね?
- 望 月
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そうですね。「タバコ病」というのは実は何十種類もあるのですが、タバコ病の典型的なものは「肺がん」というのはご存知ですよね。その肺がんと同じぐらい、昔から肺気腫はタバコと関係があるとわかっていたんですが、病態としてくくられている中で、COPDもタバコ病の一つだと言われています。
他の環境からの汚染や、職場で有害物質を吸い込んでCOPDになる方もいらっしゃいますが、原因としては圧倒的にタバコと言っても言い過ぎではないんですね。タバコにはたくさんの種類の有害物質が入っていて、それを長期間ずっと肺の中に取り入れているので、「タバコ肺」と言われることもあります。
- 住 吉
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罹患するとどんな症状が現れるのか、どんな特徴のある病気なのでしょうか?
- 望 月
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臨床的には慢性の咳や痰で、それは誰にでも起こりうるじゃないですか。それから動作性の息切れ、呼吸困難と言いますが、体を動かした時、例えば早足で歩いたり、階段の上り下りなどで息切れがするという、その3つの症状が典型的なものなのですが、他の病気でも、あるいは風邪でも咳や痰が出るので、COPDに特異的だとは言い切れないところが、認知が遅れている原因でもあると思います。
- 住 吉
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治すことができるものなのでしょうか?
- 望 月
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根本的には治らないですね。肺の中の奥深くにある袋状のものが壊れていくので、それが治ったりはしないのですが、一番の治療法は実は禁煙で、禁煙をすればそれ以上は進まないと言われています。それで、重症化を防ぐようなお薬や、呼吸リハビリと言って呼吸の仕方で症状を軽減することはできます。
COPDというのは言わば不可逆、元に戻らない病気でもあります。
- 住 吉
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少しでも早く発見することが大事ですね。
あと、「加熱式タバコ」でもCOPDになるリスクはあるのでしょうか?
- 望 月
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加熱式タバコというのはまだ世に出て4~5年のもので、タバコを吸っていらっしゃる方が加熱式タバコに変えていったりするので、元々持っているリスクそのものが出てきてしまって、加熱式タバコと直接の関係があるかどうかはわからないです。ただ、加熱式タバコから出てくるエアロゾルというものの中には、ニコチンの蒸気だとか色々な有害物質がたくさん入っていますので、それがCOPDの重症化に関係してくると思います。
- 住 吉
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新型コロナウイルスは重症化すると肺炎を引き起こすことが知られていますが、同じ肺という意味では、喫煙習慣がある人にとっては怖い病気ということに…?
- 望 月
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感染の成立や重症化、人工呼吸器を使う、という全ての段階でリスクは2倍ぐらい高まります。ウイルスは目に見えないので、自分で防ぐのは難しいですが、タバコは目に見えるものなので、やめることで新型コロナウイルスの感染症になりにくいと思います。
- 住 吉
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番組ホームページで、リスナーの皆さんに喫煙習慣についてアンケートを行いました。「タバコを吸っていますか?」という質問に対して、「はい」が12%、「いいえ」が88%という結果になりました。Blue Oceanリスナーは喫煙者が少ないのかなという結果になっています。そしてもう一つ、喫煙者の方に「タバコをやめたいと思っていますか?」という質問をしたところ、「はい」が41%、「いいえ」が59%という結果になりました。喫煙をやめたくないという方のほうが少し多いということなのですが、この回答結果をどんな風にとらえますか?
- 望 月
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吸っていらっしゃる方が少ないというところとも関係すると思うのですが、やめたくてやめられた方はもうやめてしまっている、残っている方は、やめられない、やめられないからやめたくない、というちょっと屈折した心理の表れかもしれないですし、あるいは、色々な害がまさか自分に起こるとは思っていない、他人事のような感じがあるのかもしれないですね。リスクとしてとらえていないのでやめない。それから、タバコを続けていらっしゃる方は、やめる必然性がない。今、日本では、健康増進法、条例によってだいぶ喫煙できる場所が少なくはなってきていますが、先進国の中では非常に甘いんです。タバコをやめたい人が意外と少ないというのは、日本のタバコ対策の遅れを反映しているかもしれないですね。