第178回 斎藤豊さん
- 住 吉
- 住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、国立がん研究センター中央病院の斎藤豊先生です。
- 斎 藤
- よろしくお願いいたします。
- 住 吉
- 今日のテーマは「大腸がん」。新型コロナウイルスの感染ももちろん心配ですが、「がん」も差し迫った脅威。なぜなら、「日本人の死亡原因の1位は男女ともにがん」、なんですよね。
- 斎 藤
- しかも、2016年の統計ですと男女計で罹患率(がんにかかっている人数)は「大腸がん」が1位で15万8千人となっています。
- 住 吉
- そうなんですね。大腸がんが増えている傾向もあるのでしょうか?
- 斎 藤
- そうですね。世界を見てみると、アメリカでは大腸がんの罹患率、死亡率が徐々に減ってきているんですが、日本はなぜか増えています。原因の一つは、食生活の欧米化。もう一つは、日本は内視鏡の診断や治療が世界一と言われているんですが、大腸がん検診などの検診の受診率が低い、ということが問題だと言われています。
- 住 吉
- 大腸がんの原因は、今おっしゃった食生活の欧米化以外に、わかっていることはあるのでしょうか?
- 斎 藤
- あと一つは、年齢が高くなると大腸がんの罹患率が増えていきますので、高齢化もあります。あとは、大腸がんの中に遺伝性大腸がんなどもありますが、その割合は全体の5%ぐらいと言われていますので、主に生活習慣と年齢とが関係していると言われています。
- 住 吉
- 罹患するとどんな症状が現れるのでしょうか?
- 斎 藤
- 大腸がんが進行して、例えばすごく大きくなったり、潰瘍ができてくると、出血、便に血便が混じったり、腹痛、腸閉塞、そういった症状が出るんですが、初期の段階では全く症状が出ない、便潜血も出ないというところが問題かと思います。
- 住 吉
- 早期で発見すれば治りやすいがんである、ということも本当ですか?
- 斎 藤
- そうですね。他の、例えば胃がんや食道がんと比べても、初期で発見して治療するとほぼ100%近く治りますし、上皮内がんの段階で内視鏡で治療すると、それ以外の追加の外科手術や抗がん剤などがいらず、しっかり完治するということがわかっています。
- 住 吉
- やはり早期に発見することが非常に大切になってきますよね。検査は、さっきおっしゃった便潜血、いわゆる検便ですか?
- 斎 藤
- はい。公費を使った対策型検診と言いますが、国でやっている市町村区のがん検診は、検査をすることで死亡率を抑制させることができるということが判明しているもの、あるいはマンパワーですとかコストを考えて決められて、それが今現在日本では、40歳以上あるいは50歳以上の便潜血というものになっています。その便潜血は今2日法でやっているんですが、40歳を超えたら逐年検診といって毎年しっかり受けて、便潜血が1回でも陽性になったら精密検査の全大腸内視鏡検査を受けることで、大腸がんの罹患率、死亡率を少なくすることができるということがわかっています。
- 住 吉
- 検査方法としては、便潜血反応という検便と、今おっしゃった内視鏡検査というのもありますよね。
- 斎 藤
- はい。一番の精密検査は、全大腸内視鏡検査ということで、胃カメラのようなカメラを肛門から入れて、大腸の一番奥、盲腸まで見る。そして腸の中をくまなく見てきて。大腸というのは、今まで色々な研究で大腸内視鏡検査をして、腺腫と言って前がん病変なんですが、そういう前がん病変を内視鏡で治療することで、大腸がんの罹患率だけではなく死亡率までを下げることができる、ということがわかっているんです。
- 住 吉
- 見落としも便潜血より少ないのでしょうか?
- 斎 藤
- 便潜血というのは、基本的にはある程度進行したがん、要するに外科手術をすることで治る大腸がんを見つけるための検査です。ただ、内視鏡で治療すると、その日に普通に歩けますし、食事も普通にできる。今までと全く変わりない生活ができるんですが、そういった低侵襲な治療で大腸がんを予防するには、40歳あるいは50歳を超えたら1回は人間ドックなどで大腸内視鏡を受けることをおすすめします。
- 住 吉
- 私も昨年初めて体験して、事前に大腸を綺麗にするための下剤みたいなものを飲むのが大変でしたが、検査自体はすごく苦痛だったというわけでもなく、気づいたら終わっていたという感じでした。これを数年に一度受けていれば安心だったら、やはり受けた方がいいなと強く思いました。
- 斎 藤
- そうですね。車も車検をすると思いますが、やはり自分の身体は一番大切ですので、しっかり検査を受けてメンテナンスするということが重要ですし、昔は大腸内視鏡はお産よりもつらかったという人もいたんですが、内視鏡は年々改良されて、奥までカメラを挿入するのも簡単になってきていますし、あとは内視鏡学会が認める専門医、指導医というのがあるんですが、そういうのを持っている、しっかりトレーニングした内視鏡医がやると、基本的には通常だと痛みなく検査できます。
- 住 吉
- 実際にがんになってしまって、しかもその発見が遅れたりすればするほど、仕事や生活にも影響が出ますよね。
- 斎 藤
- そうですね。ステージ別に見たら、5年生存率というのがあるんですが、ステージ0だと94%。ステージ0というのは、上皮内がんなどの内視鏡で治るものです。がんが深く浸潤、潜っていったり、リンパ節や肺、肝臓に転移するステージ4ですと、18.8%になりますので、この生存率を見るだけで、やはり早期発見、早期治療が重要ということがわかるかと思います。