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第178回 斎藤豊さん

第178回 斎藤豊さん

住  吉
また、本人だけではなく、その家族の未来が変わってしまうという病気でもありますよね。
斎  藤
内視鏡で治ればもちろん一番ですね。今までと全く変わらない生活ができます。一方、ステージが上がって粘膜下層に浸潤したり、筋層まで浸潤しても、リンパ節転移や肺、肝臓の転移などがなければ、外科手術でしっかり治ります。直腸がんはちょっと別なんですが、直腸以外ですと外科手術しても最初は便の回数が増えたり、そういったところがありますが、1年ぐらいすると今までとあまり変わらなく生活できます。ただ、抗がん剤が必要になったりすると、完全に治癒するということが難しくなってきます。しかも治療費もばかになりません。
住  吉
なるほど。
新型コロナウイルスの影響で、がん検診の検査なども影響を受けていますか?
斎  藤
はい。都内の内視鏡クリニックの先生方に聞いても、やはり内視鏡を受ける方が減っていると。がんセンターでも新規の患者さんの内視鏡医の紹介が若干減っていますので、ちょっと心配しているのはやはり早期発見が遅れてしまうことが非常に危惧されることかと思います。
住  吉
一時、検査人数を減らしていた期間もあると思いますが、今は受け入れ体制としては「来てください」という感じなのでしょうか?
斎  藤
そうですね。一時ニュースでも問題になっていましたが、防護服が不足して、がんセンターでもガウンがないということで、スタッフで手分けして、コンビニなどで雨合羽を買って、雨合羽を着て内視鏡をしていたんですが、今はそういったものは寄付などのおかげで問題なく準備できています。ただ、密を避けるという意味では、大腸内視鏡は下剤を2リットル飲んで検査しますよね。今までは大体がんセンターも遠くから来られる方も多いので、院内飲みといって病院に来て下剤を飲んでいたんですが、それだとソーシャルディスタンス、フィジカルディスタンスを取るのが難しいということで、在宅飲みを推奨するようにはしています。
住  吉
なるほど。
番組のホームページでは、リスナーの皆さんに健康診断についてアンケートを行っています。「がん検診を受けたことはありますか?」という質問には、「YES」が44%、「NO」が56%という結果になりました。斎藤先生、この結果をどう捉えられますか?
斎  藤
リスナーの皆さんの年齢がどうかですね。40歳過ぎて市町村のがん検診を1回だけ受けるだけでは十分ではなくて、やはり逐年検診、毎年受けることが重要です。日本の対策型検診の問題点は、受診率の低さ。大腸の便潜血でも、40%いくかいかないかですし、便潜血が陽性になっても精密検査の受診率は6割いかない。これが問題ですね。
住  吉
そしてリスナーの皆さんに、「あなたの健康の秘密や秘訣は何ですか?」と聞いてみました。

「乳酸菌豊富なキムチや、ヨーグルトなど、脂肪の少なめたんぱく質を毎日摂取しています。」
斎  藤
非常に良いことだと思います。最近、腸内細菌が何かと話題になっていると思いますが、がんセンターも大阪大学と共同で患者さんの腸内細菌を世界最大の数で今調べて、論文化もしているんですが、大腸がんの方とそうでない方で腸内細菌の種類が違うということがわかっています。これは腸内細菌の変化が大腸がんに関連するのか、あるいは大腸がんになると腸内細菌が変わってくるのか、というのは、今後の検討課題なんですが、そういった善玉菌をしっかり取ることは腸内環境にとっては良いのではないかなと思います。

「私が心がけていることは梅干を食べること。夏は汗をかいて塩分を失いがちです。すっぱい梅干を食べて塩分補給をしています。」
斎  藤
夏は大腸がんというよりも熱中症予防にも良いかもしれません。ただ、大腸がんは内視鏡学会で大腸内視鏡スクリーニングとサーベイランスガイドラインというのを8月に出版するんですが、そこで食生活、生活習慣の因子で大腸がんの発生との関連を色々な論文を調べて検討すると、大腸がんの危険因子としては加工肉、過量のアルコール、肥満、あとは世界的には高身長というのが危険因子です。あとは、運動が大腸がんの抑制因子として国際的には受け入れられています。
住  吉
ちなみに、斎藤先生ご自身の「健康の秘密」を教えてください。
斎  藤
こと大腸がんに関すると、健康の秘密は“内視鏡を受けること”が一番、9割。ただ残り1割は“規則正しい食生活”だと思います。
住  吉
斎藤豊先生、ありがとうございました!
ここで、働くあなたの健康をサポートする協会けんぽ東京支部からのお知らせです。日本人の死因で最も多いのは、がん。中でも大腸がんによって亡くなる方は、年間5万人。男性では第3位、女性では第1位の死亡原因となっています。協会けんぽでは、加入者ご本人向けに生活習慣病予防健診をご用意しています。大腸がん、胃がん、肺がん検診が含まれており、女性は2年に1度、乳がん、子宮頸がん検診が受けられます。早期発見、早期治療のためにも積極的に受診してください。協会けんぽ東京支部からのお知らせでした。
9月3日(木)のゲストは、医師の森田豊さんです。次回もどうぞお楽しみに!