第191回 小田原雅人さん
- 住 吉
- 住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、「糖尿病」のスペシャリストでいらっしゃいます、東京医科大学特任教授、国際医療福祉大学教授、日本成人病(生活習慣病)学会理事長の小田原雅人先生です。
- 小田原
- よろしくお願いします。
- 住 吉
-
今日のテーマは、ずばり「糖尿病」です。
まず、日本の糖尿病患者とその予備軍は、2000万人を超える、と。 - 小田原
-
そうですね。厚生労働省が出している国民健康・栄養調査のデータなんですけれども、これは4年前のデータなんです。ですから、おそらくもっとたくさんの方が糖尿病にかかっていらっしゃると思います。
この時のデータは、糖尿病の患者さんが1000万人、予備軍の方が1000万人という報告でした。 - 住 吉
-
日本でももはや国民病と言えるくらい増えているんですね。
まず基礎知識からなのですが、「糖尿病」とはどんな病気でしょうか? - 小田原
- 一言で言えば、インスリンというホルモンの働きが不十分で高血糖になって臓器障害を起こす、という病気です。
- 住 吉
- 糖尿病になりやすい人はいるのでしょうか?
- 小田原
- 糖尿病は、体質と生活習慣、先天的なものと後天的なものの両方が関係するということがわかっています。ですから、体質的に糖尿病になりやすい家系の方はいらっしゃいますので、そういう方々は生活習慣をきちんとしていただくというのがより重要になってきます。
- 住 吉
- それは、家族に糖尿病の人がいるかどうか?
- 小田原
- その通りです。
- 住 吉
- 生活習慣の方だけでも、家族にいなくても糖尿病になってしまう?
- 小田原
- そうですね。例えば、第二次世界大戦、太平洋戦争直後は、糖尿病の方が非常に少なかったわけです。それは、過食や肥満の方が少なかったから。ですけれども、急激に豊かになりますと糖尿病が激増します。これは日本だけではなくて、東アジア、東南アジアの国も同じような傾向がありまして、急激に豊かになることが糖尿病を増やしているんです。ですから、ご家族にいらっしゃらなくても、生活習慣が悪くなると糖尿病が激増する、ということがわかっています。
- 住 吉
- そして、糖尿病のキーワードが「血糖値」ということなのですが…。
- 小田原
- そうですね。糖尿病は、お小水がたくさん出ることで気づくんですけれども、これは尿から糖が出る時、水を引っ張って出るために多尿になるんです。それでわかるんです。しかもその尿が甘いということがわかるんですが、その大元は血糖値が上がるということなんです。この血糖値が上がることが、様々な障害を起こすということになります。
- 住 吉
- 血糖値が高いままだと何が悪いのでしょうか?
- 小田原
- 例えば、800~1000になりますと、糖尿病性ケトアシドーシスという昏睡になってしまったりするんですが、ちょっと高い分には、すぐにはあまり障害や症状が出ないんですよ。例えば、普通の方はいくら食べても140をほぼ超えないように、インスリンがコントロールしているんです。ところが、それが200~250になっても、普通の方の場合はほとんど症状がありません。喉が渇くという症状はだんだん出てきますけれども。ですから短期的には、高いことで症状は出ないので、放置されやすいんです。その間に血管の障害が出て、臓器障害が出てしまう。そして知らないうちに合併症が出てしまう、というのが糖尿病の怖いところなんです。
- 住 吉
- 血糖値が高いままだと、そのことが臓器を傷つけるんですね。
- 小田原
- そうなんです。色々なメカニズムがあるんですが、高血糖が続きますと血管を障害するんです。血管は、普通の血管動脈からものすごく小さい毛細血管まで障害を起こすんです。そういうことで色々な臓器の色々な障害を起こしてくるということの大元が高血糖ということになりますね。
- 住 吉
- 糖尿病は、20~30代の若い世代の方は心配しなくていい病気なのでしょうか?
- 小田原
-
そうだといいんですが…以前は確かに成人病と言っていて、中年以降に発症する病気とされていました。ところが最近、小児の肥満がものすごく増えてきまして、小児期から肥満がありますと、だんだん自分のインスリンを使い果たしてくるんです。つまり、肥満がありますと、血糖を下げるのにたくさんのインスリンが必要になるんです。これをインスリン抵抗性と呼んでいるんですが、血糖値を100下げるのに、普通の方は例えば10のインスリンが必要だとすると、太っていることによってそれが30~40も必要になってくる。そうすると、インスリンを出している膵臓のβ細胞がだんだん疲れてくるんです。これが他のホルモンを出している細胞と違うんです。他のホルモンを出している細胞は、使わないと出せなくなってきます。ところが、インスリンの場合は逆で、たくさん働くと出せなくなるので、外から補充をした方が長持ちするんです。ですから、インスリンの注射が嫌だという方も多いんですけれども、本当にご自分のインスリンを守るためには、必要になった時はインスリンを使った方が良いケースも多いんです。そうすると、ご自分のインスリンが長く使える、ということになります。
子供の時からインスリンの無駄遣いをしていますと、若い頃に十分なインスリンが出なくなってしまって糖尿病になってしまう、ということで、20~30代の糖尿病の方が増えているんです。 - 住 吉
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では無関係の人はいないと言ってもいいくらいの病気なんですね。
糖尿病、または糖尿病予備軍と言われる方々は、まず体にどのような変化や症状が出てくるのでしょうか? - 小田原
-
これが出たら糖尿病、糖尿病予備軍というのがあればいいんですが、糖尿病予備軍でも糖尿病の早期の方でも、ほとんど症状はありません。ですから、この病気は血糖値を調べないとわかりません。
そのため、健康診断をきちんと受けて血糖値を調べていただく、ということです。
血糖値を調べる機械というのも1万円程度で売っていて、かなり正確で優秀な機械です。それで測っていただくこともできますけれども、尿糖をチェックするという方法もあるんですよ。
それは、尿糖試験紙が数十個入ったものが700円ぐらいで薬局で売っています。食後にその試験紙に尿をかけて、色が変わったら相当悪いです。尿糖は、血糖値が180ぐらいを超えないと出ないんですよ。つまり、尿糖試験紙の色が変わるということは、180以上になっているということです。ですから、食後に尿糖が出ているかどうかをチェックするというのは、簡便で非常に有効なチェック方法ですね。