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第200回 岡部信彦さん

第200回 岡部信彦さん

住  吉
住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、感染症のスペシャリスト、川崎市健康安全研究所所長の岡部信彦先生です。
今日のテーマは、「新型コロナウイルス」。
慈恵医大小児科、世界保健機構(WHO)や国立感染症研究所などで臨床や研究、感染症対策にあたり、現在は「新型コロナウイルス感染症対策分科会」のメンバーとしても、国の感染対策に深く関わっていらっしゃいます。
岡部先生、どうぞよろしくお願いいたします。
岡  部
よろしくお願いいたします。
住  吉
まず早速、感染状況と医療体制について伺いたいのですが、感染が拡大する中、首都圏の医療体制も心配です。岡部先生が一番危惧していらっしゃることは、どんなことでしょうか?
岡  部
医療機関は、一定の枠、容量があるわけです。その中にたくさん患者さんが増えてきているので、少しでも病棟を増やしたり、あるいはそのための医療機関ということにしてみたり。それから仮に、病床、ベッドを増やすことができたとしても、そこに医者も看護師も検査係も必要なので、そこを病院の中でやりくりしていると、普段自分のやっている一般の医療機関を開けて、新型コロナウイルスの方にも手伝いに行くことになります。そうすると、自分が普段やっている医療、例えば整形外科やお産などの方が手薄になってしまうので、できるだけそれを防がなくてはいけないということが、今の心配事と言うか、やらなくてはいけないことだと思っています。
住  吉
緊急事態宣言が発出されて3週間ほどになりますが、このままで感染はおさまるのでしょうか?
岡  部
クリスマスと年末の時に感染者数が一気に増えているんです。その状況から、少し増え方が緩くなってきている、つまりフラットになってきています。ですが、緊急事態宣言後にどうなるかというのがちょうどこの3週間ぐらいで、この辺りで評価をしなくてはいけないので、まだ正確にはわかっていない状況です。そのフラットな状態でも、以前よりは患者さんの発生そのものが増えていて、入院も増えてしまうことになるので、もう少し減らさなくてはいけないと思うんです。そういう仕組みで動きを止めるようなことをもっとやらなくてはいけないのか、あるいは、皆さんが今まで10ぐらい我慢しているならば、そこを20まではしなくてもいいけれども、11か12ぐらいにしていただくと、もう少し患者さんが減るかもしれないなど、今まさに議論中です。
住  吉
では続いて、変異ウイルスについて伺いたいのですが、今回の感染拡大に変異ウイルスは関係していると見ていますか?
岡  部
今回の動きというのは、年末辺りの増え方ということですよね。その辺から今に至るまで、国内でその変異ウイルスが中心になっているという証拠はないんです。周辺をいくつか調べても、もれなく全部調べているわけではないけれども、話題になるような変異ウイルスがたくさん出ているというような状況ではまだないです。ウイルスはいずれにしろ変異するものなので、変異そのものは決して珍しいことではないんです。ですが、その変異している遺伝子の場所はどこかということで、増えやすいのか、あるいは病気が強くなるのか、弱くなるのか、増えやすいけれども病気は弱くなるのか、病気としては重症になりやすいけれども広がり方は減るのかなど、ウイルスの変異だけではなくて、病気そのものの動きを一緒にみていかなくてはいけないので、早急に全て変異だからと言ってわかるわけではないです。
住  吉
そうなりますと、今回の新型コロナウイルスの変異ウイルスの特徴として、今、何かわかっているのでしょうか?
岡  部
変異の部分の話と、ヨーロッパでは実際に数が増えているところでその変異ウイルスがある、というようなところを合わせると、広がりやすいウイルスなのかもしれない。でもそこを一致させる、完全な医学的な証拠付けと言いますか、そういうところまではまだ至っていません。ただ、変異ウイルスがあっても大丈夫ですよ、ということも言えないので、十分注意をして、この変異ウイルスがどのくらいの割合であるのか、あるいはその病原性、病気の強さや感染力に違いがあるかを、今色々な方法でみたり、外国の情報などを得ているところです。一般の方にとって、今すぐ変異ウイルスで何か困ってしまうということはないですし、変異ウイルスであってもそうでなくても、日常生活の中で行う対策は同じで、特別なことがあるわけではないです。
住  吉
ありがとうございます。
続いて、ワクチンについて伺います。日本でワクチン接種ができるのは、いつ頃になりそうでしょうか?
岡  部
できる、という言い方は色々あると思うんです。スタートするのがいつなのか、最初の段階のワクチンができるのがいつなのか、優先順位となっている高齢者の方ができるのがいつなのか、あるいは、多くの方が全員できるようになるのがいつなのか、それによって違うと思います。普通の人が普通にワクチンを受けられるようになるには、そのやり方もありますし、メーカーがいっぺんに1億人分を届けるわけではないので、順番が出てきます。ですから、多くの方へのワクチンがスタートする、ということで考えるならば、5月、6月ぐらいになるのではないかと思うんですけれども、色々な方法によってズレはあるので、正確な時期は言えないです。