第200回 岡部信彦さん
- 住 吉
- 重症化するのは高齢者の方やリスクのある方が多い、しかし若い方の間でも広がっていると言われています。そのどちらを先にワクチンで抑えた方が合理的か、専門家的な考え方はあるのでしょうか?
- 岡 部
- 優先順位というのは、倫理的な問題も絡んでくると思うんです。世界中でみんなが同意するのは、患者さんを診る人が倒れてしまうと困るので、まずは医療関係者だろうと。高齢者施設で働いている方もその中に入れようという動きもあるんですけれども、いわゆる患者さんに直接触れる方です。その次は一般の方になっていきますが、例えば、よりリスクが高いということで言えば、何か病気を持っている方になります。インフルエンザ的な考え方です。やはり重症の方から先に接種しようと。それから、若者全員が接種するわけではおそらくないと思うんです。そうなると、例えば30~50%ぐらいの人が受けたとしても、流行がバンとおさまるわけではない。そうなると、重症化予防の方が先にやりやすいと思いますね。
- 住 吉
- ちなみに、ワクチンの接種が始まりますと、この今の状況や生活というのは変わるのでしょうか?
- 岡 部
- 一気に変わるということはないと思います。ワクチンがスタートしたら翌日からマスクを外して飲み会もやってもいい、ということにはなりません。ワクチンというのは、大きい感染を防いでいく、あるいは重症化を防いでいく道具の一つではあるけれども、ワクチン接種をしたその日から直ちに、あるいは1ヶ月後にがらっと変わるということではなくて、じわじわと変わっていくことになると思います。
- 住 吉
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ここからは、リスナーの皆さんからの疑問、質問にもお答えいただければと思います。
「発熱した場合、新型コロナウイルスとインフルエンザの見分け方がわかりません」 - 住 吉
- この見分け方はあるのでしょうか?
- 岡 部
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以前は、冬に急な熱が出て、頭が痛いし身体が痛いというと「インフルエンザですね」と言ってそれで良かったんですけれども、今は迅速診断キットと言って、慣用の先生のところでも検査ができると思います。そういったことをやらないと、正確にはわからないんですけれども、熱の出方からいうと、典型的なインフルエンザというのは、急に熱が出て、後から頭が痛い、だるいなどの症状がついてきます。新型コロナウイルスはどちらかというと、そんなに高い熱が急に出るわけではなくて、むしろ38度前後ぐらいでだらだらして、もう少し様子を見ようかというような、風邪に似たような症状になると思います。ただ、いずれも症状が重なる部分なので、熱が出ただけで新型コロナウイルスなのかインフルエンザなのかという正確な見分け方はわかりません。なので、やはり検査が必要になってきます。
「一度感染した後、免疫はどれくらい続くのが普通なのでしょうか?」 - 岡 部
- 普通というのは、おそらく新型コロナウイルスではどうなのでしょうか、という質問だと思います。病気によって違うんです。一度かかったらずっと一生に近いぐらいもつ病気もあれば、翌年また同じような病気にかかってしまうというものもあるんです。新型コロナウイルスは、まだ生まれてから1年しか経っていないので、実際これが3年もつのか、1~2年しかもたないのか、あるいは10年ぐらいもつのか、実証されていないので、正確に言うとわかりません。ただ、今免疫はある程度は低下するんですけれども、数値の上で低下しても、もう一度攻撃を受けた時は防げたり。それから、検査する方法として、1つの方法で見れば下がっているけれども、別の難しい方法でやるとまだ残っていたり。まさに研究段階、調査中ということになります。
- 住 吉
- 日本ではまだ、再感染の例やはっきりわかった例は出ていないのでしょうか?
- 岡 部
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再感染と判断するのは難しいんです。治りきっていなくて増えたのか、あるいは一度本当に治ったけれども、また別のウイルスにかかってしまったのかなど、そこがなかなか検査でも、毎日検査するわけではないのでわかりにくいです。ただ、非常にまれに、一度治った方がもう一度熱が出て、おそらくもう一度感染したんだろうと思われる例はあるんですけれども、それが圧倒的多数ということはないです。
「やはりみんな気になると思いますが、いつまでこの生活が続くのかというのが一番不安です」 - 岡 部
- これは、1週間後、半年後、1年後などと本当は言いたいんですけれども、まだ1年しか経っていない病気なので、試行錯誤しながら様子を見ていかなくてはいけないわけです。でも、1年前だけではなくて、半年前と今でもずいぶん色々なことがわかってきています。例えばワクチンも、10年もかからなくてはいけないワクチンが1年でできたり、色々と進歩の部分があるので、我慢は半年後まで、などと言えないですけれども、今から半年後は今とは違う生活になる、つまり新しいものが出てくるのでやり方が違ってくると思います。
- 住 吉
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力強いお言葉です。
一方、感染を恐れて受診控えや健診控えも起きていると見られるようですが、これもやはり問題ですよね。 - 岡 部
- 健診ということで言えば、健康診断はとても大切なので、それをやらないばかりに他の病気が出てきてしまったり、あるいは基礎疾患があると、新型コロナウイルスにかかってもインフルエンザにかかっても、急に具合が悪くなるということはあるので、ぜひきちんとチェックを受けられた方がいいと思います。
- 住 吉
- それでは最後に、岡部先生ご自身の「健康の秘密」を教えてください。
- 岡 部
- “家に帰って家内と色々喋りながら飲んだりしている”ということが、秘密と言えば秘密なんですかね。
- 住 吉
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素敵なご夫婦ですね。岡部信彦先生、ありがとうございました!
ここで、あなたの健康をサポートする協会けんぽ東京支部からのお知らせです。新型コロナウイルスの感染を警戒して、必要な健診や受診まで控えていませんか? 行き過ぎた受診控えは、健康上のリスクを高めてしまう可能性があります。コロナ禍でも、健診や持病の治療、お子さまの予防接種などの健康管理は大切です。医療機関や健診会場では、換気や消毒でしっかりとした感染予防対策を実施しています。健康に不安がある場合はまず、かかりつけ医、かかりつけ歯科医に相談しましょう。
2月4日(木)のゲストは、シンガーの城南海さんです。次回もどうぞお楽しみに!