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第206回 森田豊さん

第206回 森田豊さん

住  吉
住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、医師で医療ジャーナリストの森田豊さんです。
森  田
よろしくお願いいたします。
住  吉
今日は、「災害に備える ~ヘルスケア編~」。「防災・減災」を、健康や医療の視点で考えていきたいと思います。
まず伺うのは「防災心理学」。災害が起きた時に、私たちがどんな心理状態になるのかを知っておこう、ということなのですが…。
森  田
イギリスの心理学者、ジョン・リーチ博士の研究によりますと、被害に見舞われた場合の人のとる行動は、3つあると考えられています。呆然として何もできない状態になる人が70~75%、我を失って泣き叫ぶ人が15%以下、落ち着いて行動できる人は10~15%ということなんです。
何もできなくなるという状態は、心や体、行動が凍りついたようになるということから、「凍りつき症候群」と言われています。脳の認知機能、情報処理機能が働かなくなってしまい、避難が遅れて犠牲となる場合も多いと考えられています。
住  吉
地震は突然やってきますから、凍りつくのも仕方がないかなと…。自分のことを思い返しても共感する数字ですね。
森  田
「まさか」という気持ちになって、受け入れられない方も多いかと思うんです。
災害かもしれない、という異常が生じた時、人間には「正常性バイアス」と「同調バイアス」という心理が働くと考えられています。
「正常性バイアス」というのは、予期しない事態が迫ってきた時に、「こんなことはありえない」「まさかこんなことが起こるわけがない」という先入観や思い込みが働いてしまい、起きていることを正常な範囲内だと考えてしまう、心の働きのことを言います。
この正常性バイアスは、ある意味、心のバランスや冷静さを保とうとする仕組みなのでしょうが、この正常性バイアスによって、正常な判断や身を守るための行動ができなくなり、避難行動などが遅れてしまう、と考えられているんです。
住  吉
これも振り返るとすごくわかりますし、自分もそうだったかもしれないと思いますね。
「同調バイアス」はどのようなものですか?
森  田
「同調バイアス」というのは、“周りの人と同じ行動をとる”ことが安全だと考える心の働きです。特に、日本人はこの働きが強いと考えられています。
この同調バイアスは、災害などの非常時に一致団結して助け合う、ということに繋がる良い例もあるのですが、逆に被害に繋がるような同調バイアスもあって、「周りの人が逃げないから自分も逃げなくていいだろう」という選択をすることもあるんです。
例えば、火災で煙が充満しているのに「周りの人が逃げないから」とその場で待機してしまう、という例も過去に報告がありました。
正常性バイアスも同調バイアスも、体の中にそういう仕組みがある、ということを客観的にわかっているだけでもずいぶん違うのではないかなと思います。
住  吉
両方とも被害が少ない方向に働いてほしいですが、そのためにはどうしたらいいのでしょうか?
森  田
必要なのは、訓練とイメージトレーニングです。
自然災害に関しては、家庭や職場で、日頃から「訓練」や「イメージトレーニング」、そして「定期的な会議」をしておくことで、非常時にも状況を正確に把握して、きちんと動けるようになるのではないかと考えられます。
災害を、非常なこととして捉えるのではなく、日常の中に組み込める心を持っておくことが大切だと思います。