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第208回 中山和弘さん

第208回 中山和弘さん

住  吉
住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、聖路加国際大学大学院 看護学研究科教授の中山和弘さんです。リモートでお話を伺います。
中 山
よろしくお願いします。
住  吉
今日のテーマは「健診受診推奨」。キーワードは「ヘルスリテラシー」です。
中山さんは保健医療社会学・看護情報学がご専門で、まさに「ヘルスリテラシー」も研究テーマの一つということなのですが…番組サイトでは、リスナーの皆さんに「“ヘルスリテラシー”という言葉を知っていますか?」と質問しました。回答は「はい」が16%、「いいえ」が84%という結果になりました。「まだ知らない」という方が多いようなのですが、この「ヘルスリテラシー」とは何でしょうか?
中 山
「ヘルスリテラシー」というのは、私は一言で「健康を決める力」と呼んでいます。健康というのは、自分の行動やライフスタイルの影響を受けていて、適切な行動を自分で決められるかどうか、というところが大きいわけです。それは、自分が健康な行動をとりやすい環境を選ぶということや、ストレスに対処すること。それからもう一つは、健康というのはそもそも何なのか、誰が決めるのか、ということです。私は、健康とは何かを自分で決められるのではないかと思っています。例えば、病気や障害があっても健康というのはあるわけですよ。生き生きと自分らしく生きるとか、そういったことも含めて、自分で健康を決められる、ということをもう少し考えてもいいのではないかということで、そう呼んでいます。
住  吉
誰かに「健康ですね」と言われることではなく、自分で「私は健康だ」と思えるかどうか、そのための行動や判断ができているかどうか、ということですね。
中 山
そうですね。全て医師に決めてもらうということではなくて、健康と言っても多様になっているので、治療法など、「どれを選ぶか」ということが大事になってきています。
住  吉
ヘルスリテラシーが低い人の特徴はあるのでしょうか?
中 山
日本で調査すると、年齢や性別でそんなに大きな違いがあるわけではないんです。どちらかというと、私たちの調査で発見したのは、ヨーロッパとアジアでヘルスリテラシーが測られていて、それと比べると、日本人がすごく低かったんですよ。どういう測り方をしているかということにもよるんですが、ヘルスリテラシーというのは国際的にはどういう力なのかというのをもう少し具体的に言うと、情報を“入手”して、“理解”して、それを“評価”する。評価するというのは、自分はこうした方がいい、例えば「もっと痩せた方がいい」という情報を見つけて、「痩せた方がいいというのは本当なのか」ということや「自分に当てはまるのか」、例えば十分痩せているのであれば、その情報は自分にとっては適切ではないですよね。そうやってきちんと見極められるかどうかという、評価する力。それから最終的には、行動に移すのかどうか、という“意思決定”。入手、理解、評価、意思決定、というプロセス、この4つの力をヘルスリテラシーと言うんですが、世界と比べると、日本人は理解まではできるんですが、自分で判断して評価したり、意思決定するというところがすごく苦手だということがわかったんです。
ヘルスリテラシーが低い人は、特に日本の場合は、そこに問題があります。なぜかという理由は今調べているんですが、一つは、わかりやすく信頼できる情報が不足しているのではないかと。英語圏だと特に、国がすごくわかりやすい情報を出しています。今はコロナ禍ですが、新型コロナウイルスの情報はどこに行ったら一番わかりやすくて信頼できるのか、ここにさえ行けばというサイトなどはわかりますか?
住  吉
そう言われてみると…ネットニュースを読んで、「きっとこれが正しい」と思うものを見たり…。ここに行けば必ず、というのはわからないかもしれません。
中 山
そうですよね。
色々な人が色々なことを言っていますよね。本当は、国がしっかりと出す。例えばアメリカなら、CDCなどの専門機関がわかりやすく提供してくれています。 日本でも色々な情報は手に入りますが、どれがいいのかを判断するのは難しい状況にあるんです。
あとは、情報を鵜呑みにしがちです。日本人は、新聞やテレビなど、メディアをすごく信じているんです。それは悪いことではないと思うんですが、そこに答えを求めに行っているんです。本当はいくつか選択肢があって、自分に合ったのはどれか、と決めなければいけないはずなのに、例えばワクチンなら、打った方がいいのか打たない方がいいのかを教えてほしいわけです。それでメディアが「打った方がいい」と言ったら「打った方がいいんだ」と思う。でも本当は、自分で判断しなければなりません。当然、長所と短所があるので、それを見比べて、自分で判断する。そういうことが苦手で、信頼したものから答えを得ようとしています。