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第214回 孫大輔さん

第214回 孫大輔さん

住  吉
住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、鳥取大学医学部 プロジェクト研究員で家庭医の孫大輔先生です。
  孫  
よろしくお願いします。
住  吉
今日のテーマは「まちが人を健康にする、ウェルビーイングという考え方」。
孫先生は、内科の医師として都内の大学病院などに勤務された後、「家庭医」の資格を取られたそうですが、この「家庭医」とはどういうものなのでしょうか?
  孫  
昔でいう、町のお医者さんのような感じで、子供から高齢者まで色々な健康問題に対応する、総合診療医とも呼ばれるんですが、そういうお医者さんのことです。
住  吉
家庭に近いということで「家庭医」と呼ばれているのでしょうか。
  孫  
そうですね、訪問診療、いわゆる在宅医療もやりますし、病院やクリニック、急性期から慢性期の医療、終末期医療と言いますか、そういうところまで広く関わる医師のことを言います。
住  吉
「かかりつけ医」とは違うのでしょうか?
  孫  
微妙に違います。例えば、耳鼻科だと「私の耳鼻科のかかりつけ医はあのクリニックの先生です」と言うことができるので、少し違う意味合いなんですが、かかりつけ医としてはそれを総合的に診てくれるお医者さんの方がいいと思うので、家庭医をおすすめしております。
住  吉
確かに、高齢化が進む日本だからこそ、家庭医という先生は、どんなコミュニティでもこれからすごく重要に、そして必要になってくるのでしょうね。
そんな中、見出された考え方が、今日のテーマでもある「まちが人を健康にする、ウェルビーイングという考え方」だそうですが、これはどういうものなのでしょうか?
  孫  
自分の住んでいる地域が自分の健康にも関わっている、という話なんですが、例えば、孤立している方、近所付き合いもなく、家族もいないような一人暮らしの方は、非常に不健康になってしまいます。孤独でいると、1日15本ぐらいタバコを吸うのと同じぐらい死亡率が上がってしまう、という研究があるんです。なので、「タバコをやめてください」とお医者さんが言うと思うんですが、それと同じぐらい「孤独はやめてください」と言わなければいけない、ということなんです。
住  吉
それが、“まちが人を健康にする”という、人と関わったり地域と関わることが実は健康に繋がっている、ということなんですね。
  孫  
そうですね。健康な街というのもあって。例えば、自殺率がすごく低い街の研究をされた方がいるんですが、徳島県のある街が日本一自殺率が低かったということで、そこを研究したら、街の人たちの関係性、人と人との関係性に非常に特徴があったんです。お節介をするような、困っていたら助け合う、というような関係性があるんですが、密着しすぎない、ゆるい繋がり、という特徴がある、という研究結果もあって。その街の、人の繋がり方も非常に健康に関係があるんです。
住  吉
他にも、「まちけん」という活動があるそうですが、これはどういう活動なのでしょうか?
  孫  
去年鳥取に移ったんですが、私が東京にいた頃、谷中・根津・千駄木という、古い町並みがあるところでやっていた活動です。街の人との繋がりを増やしつつ、みんなで健康になるようなことをやりましょう、というプロジェクトを3年間ぐらいやっていたんです。
住  吉
活動はどういうことをされていたんですか?
  孫  
最初は、お医者さんや看護師で屋台を引いてみようという話になりまして。モバイル屋台という小さめの屋台を街の人と一緒に作って、完成した屋台を街で引きながら、コーヒーを配るんです。「コーヒーどうですか?」と街の人に話しかけて、「実は私たちは医者なんですけど…」と。「健康相談も乗りますよ」「普段、かかりつけ医はいますか?」「健診は受けていますか?」とか、そういう話を街の人とする、という活動を最初に始めたんです。
住  吉
面白い! 3年間活動されて、何か変化などはありましたか?
  孫  
屋台を引くのはエネルギーがいるので、そんなにしょっちゅうできなくて、別の活動も増やしていったんです。谷根千は落語家や寄席が多い地域なので、みんなで落語を聴きに行きましょうとか、みんなで映画を観て話し合いましょうとか、そういう色々な活動をしていたんですが、そのうち自分たちでも、素人ながら落語を見よう見まねでやって、発表会を行ったり、映画も『下街ろまん』という25分ぐらいの映画をみんなで作って、自主上映するというところまで発展しました。関わった人は、すごく元気になったというか何というんですかね…自発性が活性化して、みんな「楽しいね」という感じで活動も活性化しました。 ウェルビーイングという考えが、元気さと幸福を合わせたような考えなんですが、それが上がっていった人はいたように思いますね。
住  吉
ちなみに、これは“街”であることが大事なのでしょうか? 例えば、ちょっと離れた人たちとの繋がりがあればいい、とか…。
  孫  
その問いは、今のコロナ時代、非常に重要ですね。オンラインの繋がりでも、人と繋がっていれば元気になるかな、という問いとも繋がっていると思うんですが、全くないよりはオンラインの繋がりでもいいと思います。色々なサポートが得られたり、人と話すことですごく元気になったりしますので。ただ、リアルに会って、同じ空間を共有しながら一緒に活動する、ということが非常に大事だなと思っています。
まちけんの人たちに最近またインタビューしたんですが、コロナの時代で、実際に対面できないもどかしさがあって、今はバーチャルな繋がりが多いので、対面に比べると少し寂しいなということは言っていましたね。
住  吉
特に、少しずつお年を召してきてから、大きく移動しなくても一緒に会えて、色々なことを一緒にできる仲間を常に作っておくということが、ウェルビーイングに繋がるということなんですね。
  孫  
近所の人でなくても、趣味の会やサークルに行ったりして、何か繋がりを持っておくということは非常に重要かなと思いますね。