文字サイズ

第220回 宮本亞門さん

第220回 宮本亞門さん

住  吉
住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、演出家の宮本亞門さんです。リモートでお話を伺います。
宮  本
おはようございます。よろしくお願いします。
住  吉
この1年半、新型コロナウイルスの影響でエンターテインメントは大きな打撃を受けました。宮本さんも演出家として色々なことを考えたり、試行錯誤されたと思いますが、どんなことを考えていらっしゃいましたか? 時期によっても色々とあったと思いますが…。
宮  本
そうですね…。1年以上あったから、本当に色々なことを…。僕の場合は原点回帰かな。「なんで舞台を作っているんだろう」「本当に舞台は必要なのだろうか」とか、自分の仕事や生き方とか。部屋にずっと居たりすると、散歩した時に「自然ってこんなに人間と関係なく生き生きと花を咲かすんだ」とか。色々なことを教えてもらう時期でもありましたね。
住  吉
演出家としても人としても、原点の色々な気持ちに戻る時期だったんですね。
宮  本
そうですね。だから、すごく巨大なブレーキをかけられたけど、もちろんつらいこともあるし、不安になる自分を見つめることもできたし…。こんな言い方は失礼かもしれないけど、かえってこういうことがあってよかったかな、僕には。今まで通り、とにかく競争の中で「頑張らなきゃ!」というだけではない、違う視点を生ませてもらったというところはありますね。
住  吉
そんな中、今YouTubeで宮本さん演出の作品が無料配信されています。『日本一 わきまえない女優「スマコ」~それでも彼女は舞台に立つ~』というタイトルの作品で、およそ100年前に活躍された大女優・松井須磨子が主人公。
宮  本
そうなんです。パンデミックの、同じような状態が日本でもあった、スペイン風邪の時なんですけども。まだ男尊女卑があって、なんと女性の役を女優が演じられなかった時代があるんですよ。歌舞伎の影響があったので、女方さん、つまり舞台に立つのは男性のみ、という影響があった時に、外国の台本なのにそれでも立てなかった。でもやっぱり女性の役は女優がやるべきだ、と本当に戦って、あらゆることを全てやり遂げた女性がいて。日本で初めての整形手術をしたり、舞台で初めて歌を歌ったり、レコードに吹き込んで、それが日本中で大ヒットして、それが今度は発禁になったり…。それでも負けずに、彼女はあらゆることをやったんです。スペイン風邪に感染して、それも、妻子ある演出家と恋仲になってその彼にうつしてしまい、そして彼の看病をしている時も、その演出家が「舞台に行け」と言ったので、結局は稽古をして本番をやったと。周りの全員から止められて、「お前こそ最悪の女だ」と言われたのに最後まで負けなかった、という人がいたということを知ってほしくて。
住  吉
全て実際の話なんですね…!
宮  本
そうなんですよ。
住  吉
元々ご存知だったんですか? それとも色々と調べて?
宮  本
これは正直に言うと、NHKの番組で、パンデミックが日本で起こる前のことを少し言っていたんです。でもほとんど資料が残っていないんですよ。それで唯一、与謝野晶子さんだとか、彼らの残した言葉などが色々あるということで、ちょうどコロナ禍にリサーチをして。この人たちが日本の演劇を変えたんだ、ということへの興味もあったけど、それ以上に、パンデミックの中に同じような状況があったという。それで、ちょっとこれは厳しかったのでかわいそうだったんだけど…岡江久美子さんの娘さんの、大和田美帆さん。僕、一緒に舞台をやったことがあって。彼女は、「演劇をやるかどうか悩んでいる」という、すごく落ち込んでいる1年間があって、このままだったら本当にやめるかもしれないなと思っていたんですけど、「つらいでしょうが、もしできたらやってほしい」と僕は台本を渡しました。この1月なんですけど、彼女はその内容を読んで、「私以外に誰がやりますか!」と最後に言ったんですよ。本人も心を切り裂かれるような気持ちで挑んでくれたものが、配信で無料で観られます。