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第221回 大曲貴夫さん

第221回 大曲貴夫さん

住  吉
住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、医師で、国立国際医療研究センター・国際感染症センター長の大曲貴夫先生です。今週火曜日にリモートでお話を伺いました。
テーマは「感染症」です。前半は「変異ウイルス」や「治療薬の開発」についてのお話。後半はリスナーの皆さんの「新型コロナウイルスに関する質問」にもお答えいただきました。
住  吉
感染症、今は新型コロナウイルス感染症が長らく皆さんの心配事です。今の感染状況を、先生はどうご覧になっていますか?
大  曲
新規の陽性の方の数は下がってきていたんですが、先週ぐらいから止まってきたなというのは見えてきましたよね。増えてきたかもしれないと思って残念がっているところですね。
人の流れが関係していると言われていますが、東京は人流が5、6週間ぐらいずっと増えっぱなしなんです。人流が増えると新規の陽性の患者さんの数が増えるというのは、過去に何回も繰り返されているので、それで今すごく心配しています。
住  吉
同じ専門家同士では、どんな意見交換をされていますか?
大  曲
これまでになく危険な状況だという話は出てきます。東京都は感染者数が下がってきましたが、300人など多くの方が陽性になるわけですよね。人流も増えてきているので、今後感染者数が増える可能性が十分あって、そうすると元々そこに来ていた患者さんの数が多い分、増え始めたらものすごく早いんですよ。昨年末も1日で患者さんの数が倍になったりしました。そうすると当然医療も大変な状況になりますし、多くの方が重症になったりしますので、そうならないように何とかしなければ…ということを今みんなで考えています。
住  吉
今、変異ウイルスがいくつも出てきていて、第4波と言われる状況に影響したと見られている、というニュースもありますが、変異ウイルスについては今どういう状況なのでしょうか?
大  曲
元々最初にイギリスで見つかった変異株が、世界中、日本でも問題になっていましたが、今回はまた新しい「デルタ株」という変異株が日本に入ってきて、増えつつあります。このデルタ株は、元々イギリスで見つかっていた「アルファ株」よりも、人から人にうつっていく可能性がすごく高いと言われています。ということは、これがすごく広まると、陽性の患者さんの増えるスピードが一気に上がる、ということになるので、ものすごく心配しています。
住  吉
今のところ出てきている変異株は、感染しやすくなるものが多いのでしょうか?
大  曲
春に問題になっていたアルファ株は、増えやすいのは間違いないと。重症化しやすいかどうかがなかなか難しいところですね。イギリスでは「重症化しやすいのではないか」と言われましたが、日本ではどうかと言うと結構難しいところです。ただ、若い方だけ見ると、今まで出てきたウイルスよりも重症化しやすい可能性はあるのかなと思って見ています。そこはまだ検討している最中なんです。
今度来たデルタ株は、増えやすいのは間違いないだろうと。アルファ株などと比較して、重症化しやすいかというと、積極的に伝えられる情報はまだ出てきていないですね。広がりやすいということは、すそ野の患者さんの数がものすごく多くなるので、上の方に来る重症の方の数もどうしても増えてしまいます。そういう意味では、警戒しなければならないウイルスなのは間違いないです。
住  吉
国立国際医療研究センターや国際感染症センターで、先生は今どのようなお仕事をされているのでしょうか?
大  曲
普段は、もっと患者さんの近くで診療するんですが、今はこういう有事でもあるので、もっと多くの患者さんに貢献できるように、まずは薬などの研究開発の仕事が中心です。あとは、東京都や厚生労働省など、社会のレベルでの対策もすごく大事なので、そこで声をかけていただいて、助言をしたり、対応したり。そういうことがほとんどです。
住  吉
薬の開発にも取り組んでいらっしゃるのですね。
大  曲
取り組んでいます。例えば、米国の政府機関、NIHなどがありますが、そういったところと一緒に国際共同研究をして、この薬は効くか効かないかを確かめたり…ということをしています。それは今もやっています。
住  吉
皆さんは今ワクチンに期待していますが、一方で特効薬が出るとまた違う安心が生まれます。そのような薬が見つかったり作られたりする可能性、何か見えてきたことなどはあるのでしょうか?
大  曲
風邪にかかるのと一緒で、かかってしまうこと自体は防げないのではないかと思うんですよ。もちろんそういう意味では体調管理がすごく大事だと思います。ただ、薬を使うことで、重症になる危険を下げたり、重症になった方を何とか救う、ということはできるようになってきたと思います。それは結構大きなことだと思います。
住  吉
既存の薬で、これを使うとずいぶん違う、ということがわかってきたのですね。
大  曲
そうですね。特に、重症の方をどう助けるかというのは、今まである薬を色々と試験でトライして、その中で効くものが見えてきました。あと、新しい薬はどちらかというと、軽い方や重症までいかないような方に対して使うことで、もっと悪くならずに済む。例えば、入院しなくて済んだり、人工呼吸をしなくて済んだり、嫌な話ですが亡くなるリスクを下げるなど、そういうのは新しい薬で出てきていますね。
住  吉
新しい薬もどんどん出てきているのですね。
大  曲
出てきています。日本だとまだ試験中で承認されていないんですが、アメリカやイギリスだと、緊急承認と言って、ある程度データが出たら使っていい、という許可を政府が出して、使っているんです。その効果は結構印象的ですごいなと思っています。
住  吉
そうなんですね。今のところ、最新でわかってきたことはどのようなことですか?
大  曲
最新だと、誰が重症になりそうか、というのは検査である程度わかるようになってきました。国際医療研究センターでみんなで共同でやっているんですが、採血をして、その検査結果で値がすごく低い人は、1週間後に重症になっている可能性が高いんです。それが厚生労働省にも承認されて、保険点数もついて、実際の診療で使えるようになりました。これが普及すると、診断してすぐに採血をして、重症になりやすい方は目の届くところに居ていただく。例えば、入院していただく。そうでない方は、体調も良いんだったら、ある程度落ち着いてお家に居ていただいてもいいのではないかと。そういうことができるようになると思います。
今だと、若くて、例えば体重もそんなにない、という普通の見た目の方は、重症化しやすいかどうかが、ぱっと見ではわからないです。でも、それを採血である程度区別できるようになりつつあるんです。言われた方は嫌な気がするかもしれませんが、入院して早く治療なりすれば、1年前と比べればすぐに良くなっていきます。
住  吉
研究や治療などにあたられている中で、大曲先生ご自身が今一番注目していることは何かありますか?
大  曲
後遺症の問題かなと思っています。後遺症は、何が起こるのか全体像がよくわかっていない、というのが一つ。あとは、後遺症で生活が苦しい、息が苦しい、動けない、という方がいらっしゃって、そこそこ回復はするんですが、すごく時間がかかるんですよね。この前も中国からの論文を見ていると、1年経って肺の機能が良くはなっているんですが、全部戻ってはいない、と。それは本人にとっては非常に苦痛というか、大きな障害になる。そこを何とかできないかなと思って、今色々な先生方からお知恵をいただいて、ご示唆をいただいてやっているところです。