第228回 鴻上尚史さん
- 住 吉
- 「同調圧力」は、親子関係だけではなく日本社会の底辺にあって、戦争に向かった時にもすごく大きく底辺にあった、ということも本に書かれていますが…。
- 鴻 上
-
僕がずっと言っている「世間」というのは、自分が知っている人たちのことを言っていて、近所や職場、もちろん家庭もそうです。その「世間」の反対語が「社会」というもので、同じ電車に乗っている、同じ映画を観ているなど、自分の全く知らない人たちのことが「社会」なんです。日本人は、社会に対して、どのように会話したらいいかがよくわかっていなくて、世間の人たちだけにはすごく気を遣っているんです。
「所与性」と言って、ずっと続ける、変化しない、同じことを続けていく、というものが世間の特徴で、一度始めたら、みんなが内心「違うのではないか?」と思っていても、とにかく続けていってしまう。例えば戦争で言うと、アジア・太平洋戦争で日本人は310万人がお亡くなりになっているんですが、そのうちの9割が昭和19~20年、終戦前の2年の間にお亡くなりになっているんです。みんなが「これは負けるのではないか…」「ぼちぼちやめた方がいいのではないか…」と思っていた昭和19年以降に、9割の人が亡くなっているということは、みんなが「やばい」とは思っているのに止められないという、日本人特有の「始めたことはやめられない」ということにすごく似ています。 - 住 吉
- この1~2年、日本で起きていることを見ても、「あれもだな…」と思い浮かぶことがたくさんありますね。
- 鴻 上
-
はい。「社会」は「法のルール」で動いていますが、「世間」は「情のルール」「気持ちのルール」なんです。だから、例えば自粛警察は「情のルール」なので、「あそこで新型コロナウイルスに感染した人が出た」と言うと、引越しをしても延々と追いかけてきます。社会は「法のルール」なので、犯罪をすると懲役○年など、そこで一応禊になりますが、情のルールは終わりがないんです。
そして「家族」は、本当は「愛情のルール」で、欧米だと自分の子供が犯罪をしても平気で守る親が多いんですよ。「息子が失業したから…」など、顔を出して喋ることもあって。愛情のルールが社会のルールよりも強かったりするんですが、日本の場合は、愛情のルールではなくて、家庭も世間のルールになってしまうので、世間様の目を見て、「恥ずかしいからいい大学に入りなさい」「こんな情けない大学に入って恥ずかしい。世間に何を言われるかわからない」などと言う親になってしまうんです。 - 住 吉
-
なるほど。
ここからは、鴻上尚史さんの健康・元気の秘密を伺っていきます。その前に、まずリスナーから届いたメッセージをご紹介します。
「わたしの健康の秘密は、好きなもの、好きなことをなるべく我慢しないことです」 - 住 吉
- 鴻上さんは、健康のために何か気をつけていることはありますか?
- 鴻 上
- 僕は、何があっても7時間寝ます。
- 住 吉
-
何があっても!?
仕事が溜まっていて、寝ないでやらないとこなせなくても、必ず? - 鴻 上
- その時は手を抜いて寝ます。
- 住 吉
- 仕事の手を抜いてでも寝た方がいいと。それは、その方がいいという実感があったんですか?
- 鴻 上
- 絶対にその方が作業能率も上がるし、結果的に良くなります。体もその分健康になりますしね。それは間違いないですね。
- 住 吉
- そうですよね。“手を抜いてでも”という、自分の中での基準がしっかりとあるのがさすがですね。
- 鴻 上
- 手を抜いて原稿を書くでしょ。そして、編集者へ渡す時に、散々トークで盛り上げるんです。そうすると、もらった編集者は、「原稿がおもしろかったのか、会った時の鴻上の話がおもしろかったのかよくわからないが、トータルでおもしろかった」という気持ちで帰っていってくれるので、大丈夫なんです。
- 住 吉
-
睡眠のために編み出された技かもしれませんね(笑)。
運動面では何か気をつけていますか? - 鴻 上
- なるべく週1~2回はスポーツジムに行こうとしています。
- 住 吉
- ずっと続けられているんですね。
- 鴻 上
- そうですね。ここ何年かは続いていますね。
- 住 吉
- それでは最後に、鴻上尚史さんの健康の秘密を教えてください。
- 鴻 上
-
健康の秘密は“きちんと寝ること”です。
あっ…でも、何とか7時間寝るというのは嘘でした。今日はBlue Oceanに出るために7時間寝ていないです。起きています。 - 住 吉
- えっ! 大変…!
- 鴻 上
- 大丈夫です。これが終わった後に寝ます!
- 住 吉
-
朝寝をしていただいて…! ありがとうございます。
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次回もどうぞお楽しみに!