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第237回 楢﨑智亜さん

第237回 楢﨑智亜さん

住  吉
住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、プロフリークライマーの楢﨑智亜選手です。おはようございます。
楢  﨑
おはようございます。
住  吉
楢﨑選手は、高校卒業後プロに転向され、2016年の世界選手権で日本勢として初優勝。2019年の世界選手権では複合で優勝。日本のクライミング界をリードされてきました。そして、東京オリンピックでは4位、9月の世界選手権では2位という活躍を今年も見せてくださっています。
今の時期はどのようなことをやっているのですか?
楢  﨑
だいたいクライミングのワールドカップのシーズンが9月ぐらいまでなので、その後は次の国内大会までオフという形で、トレーニングがメインです。
住  吉
次の大会は来年ですか?
楢  﨑
そうですね。来年2月に大会があります。
住  吉
スポーツクライミングをスタートしたきっかけは何だったのでしょうか?
楢  﨑
元々、5~10歳ぐらいまで器械体操をやっていたんですけど、器械体操をやめて、次に何かやりたいなと考えていた時に、兄が新聞のチラシを見て、たまたま近所のクライミングジムに行っていて。そこについて行ったのがきっかけです。
住  吉
それでやってみたらおもしろかった?
楢  﨑
そうですね。スタートとゴールは決まっているけど、その間は何をやってもいい、というのはすごく自由で楽しいなと思って始めました。
住  吉
自分に才能があるかも、これは伸ばせるかも、と感じた瞬間はあったのでしょうか?
楢  﨑
始めた時は、遊び感覚で、楽しくてやっていたので、むしろ同年代の中ではそんなに上手くなかったかもしれないですね。
住  吉
それは何歳頃ですか?
楢  﨑
10歳ぐらいから始めました。
住  吉
小学生からやらないとプロになれないような世界ですよね…。
楢  﨑
そんなことはなくて。高校生から始めて日本代表になっている人もいます。でも、小さい頃からやった方が、難しいことも普通になってくるので、有利だとは思います。
住  吉
いつ頃から、プロを目指そうと意識が変わっていったのでしょうか?
楢  﨑
プロになろうと思い始めたのは、高校生の時、ワールドカップに出始めてからですね。
住  吉
もっとやりたいと思ったのですか? それとも、これは行けるぞと?
楢  﨑
トップ選手の登りを間近で見たり、トレーニングを見たりしている中で、「自分もこのレベルまで行きたい」と思ったり、楽しかったので、「これで食べていきたい」と思いました。
住  吉
楢﨑選手の視点では、どのようなところがおもしろいですか?
楢  﨑
一番おもしろいのは、自由なところです。選手の体格によって登り方が全然違いますし、能力によっても登り方が変わってくるところがおもしろいと思っています。
住  吉
自分の肉体は、客観的に見て向いていると思いますか?
楢  﨑
ちょっと身長は低いですけど、まあまあいけるかなと思っています。
住  吉
そのことを考えた時に、「どこを中心に鍛えよう」など、常に自分で作戦や目標を考えながら?
楢  﨑
そうですね。海外には身長が180cmを超える選手がいる中で、僕は170cmしかないので、他の選手よりも足が切れて手だけになってしまうシチュエーションが多くなるんです。
住  吉
ぶら下がるような形で?
楢  﨑
そうなんです。そうなった時に、体幹が安定していないと手もしっかり保持していられないので、そういった部分を強化したりしています。
住  吉
普段のトレーニングはどういうことをしているのでしょうか?
楢  﨑
選手によるんですけど、僕の場合は、ほぼクライミングメインです。登り込みメインで、自分の弱点と向き合いながらやっています。
住  吉
腕立て伏せなどの筋トレよりは、ただただ登り込みを?
楢  﨑
そうですね。そういった筋肉に刺激を入れることはウォーミングアップでやって、あとは登りで体に覚えさせるという感じです。
住  吉
そうすると、登るための新しい課題が、無限に必要になってくるのではないですか?
楢  﨑
そこもクライミングのおもしろさなんですけど、どんなに強くなっても壁が絶対来るというか。難しい壁がいくらでも作れてしまうので。
住  吉
その度に何度もチームで作り直して?
楢  﨑
チームで課題を作ってもらったりしていますね。
住  吉
今、自分が感じている弱点はどのようなことですか?
楢  﨑
スタティック(静的)な動きがどちらかと言うと、あまり得意ではないので…。僕は、跳んだりとか、そういったアグレッシブな動きが得意なタイプで、ゆっくり動かなければいけない時が苦手なので、そういった練習が多いですね。
住  吉
それはどういう場面ですか?
楢  﨑
ボルダリングで言うと…手のかかりが悪くなってくると、体の振りや勢いをつけた時に、すぐ手が滑って落ちてしまう、ということが増えてくるんですよね。そういう時に、じわじわ少しずつ重心移動をしていかないといけない、というシチュエーションがあるんです。
住  吉
へぇ~! クライミングは、精神面も鍛えられそうですよね。
楢  﨑
そうですね。課題によって、どういった気持ちで登るかということも全然違います。