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第239回 山内英子さん

第239回 山内英子さん

住  吉
住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、聖路加国際病院副院長でブレストセンター長・乳腺外科部長の山内英子先生です。先日リモートでお話を伺いました。
テーマは「乳がんと健康診断」。今、日本人女性の9人に1人は乳がんに罹患しているそうです。早期発見や早期治療がとても重要ということで、病気のこと、検診のこと、山内先生に詳しく伺いました。
住  吉
山内先生、よろしくお願いします。
山  内
皆さんこんにちは、よろしくお願いいたします。
今月は10月ですよね。10月は「ピンクリボン月間」と言って、乳がんの啓発月間として、日本でも東京スカイツリーや東京タワーなどがピンクに染まりますが、世界中で色々な建物がピンクに染まる月なんです。そういった意味で、乳がんのことを勉強していただくこと、この機会をいただいたことに感謝しています。
住  吉
そうなんです。ピンクリボン月間ということで、今日は「乳がんと健康診断」というテーマで山内先生にお話を伺っていきます。
まずは、「乳がんの基礎知識」をおさらいしたいと思います。「乳がん」とは、どのような病気でしょうか?
山  内
乳がんとは、乳房にできるがんです。乳房は、主に母乳を作るところと乳管でできています。その周りには、それを支える組織や脂肪などがありますが、乳がんの多くは、「乳管」という母乳を乳頭まで運んでいく管の中にできます。その管から発生して、管を破って周りに広がっていって、しこりを作ったり…というものがほとんどだと思います。
ただ、そう言うと「男性は関係ないのではないか?」と思うかもしれませんが、男性にもそういう組織構造はあるんです。ですから、女性ばかりのものではなく、割合は非常に少ないですが、男性にも起こりえます。
住  吉
乳がんになりやすい人はいるのでしょうか?
山  内
やはり女性に多いのですが、乳がんというのはエストロジェンという女性ホルモンとの関連が非常に高いと言われています。ですから、生涯でエストロジェンにどのくらい曝露されているか、曝露されているリスクが高い人ほど乳がんになりやすい、ということは昔から言われています。
どういうことかと言うと、例えば、お子さんを産む年齢が高い、生理の年齢が非常に低い、閉経の年齢が高いなど、それだけでエストロジェンに曝露されている期間が長いということが想像できると思います。そういった形で、ホルモン環境の変化が非常に影響してくるがんだと言われています。
住  吉
今、日本人女性だとどのくらいの割合で乳がんになると言われているのでしょうか?
山  内
今、9人に1人の割合で乳がんになると言われているんです。20~30年前は50人に1人でした。
住  吉
早期発見すると、治る病気でもあるのでしょうか?
山  内
私も日々、がんと診断された方に「治るのですか?」と聞かれるのですが、がんは「完治」という言葉が使えません。こう言うと恐怖心を持つかもしれませんが、がんと診断されると、ずっとがんの芽のようなものは身体の中に潜んでいます。特に乳がんは、10年20年経っても身体のどこかに巣くってきたりするので、なかなか「治る」という言葉を使うのは難しいです。ただ、反対に10年生存率を見ると、乳がんは平均的な生存率が90%ぐらいで、がんの治療を終えた後、普通の生活に戻れるタイプのがんだということが言えると思います。
住  吉
そのためにも早期発見したい、ということになるかと思います。早期発見の手立てとなるのが検査ですよね。
山  内
そうですね。検査も重要ですが、早期発見で今お伝えしたいことは、「ブレスト・アウェアネス」です。“アウェアネス”とは、乳房を皆さんに“意識”していただきたい、乳房を意識する生活習慣を持っていただきたい、ということなんです。お風呂上がり、鏡の前に立った時に、毎日胸の状態を意識して見ていただいて、例えば、乳首がただれてきていたり、乳首から血液などが出てきていたり、乳房の一部が盛り上がっていたり、そういうことはご自分で乳房を見てみるとわかりますよね。ですから、まずはご自分の乳房の普通の状態を知っていただいて、変化を知っていただきたいと思うんです。特に女性は生理周期がありますよね。生理の前は胸がすごく張りますが、生理が終わった直後は割と胸が柔らかくなっているので、その時期に毎月触っていただくことで、ご自分の胸の変化に気づいていただくということが、検査よりも前にまずとても大切なことだと思います。
住  吉
これは今日から始められることですね。
そして、「マンモグラフィ検査」と「超音波検査」がありますが、外出を控える中で、「今年はコロナ禍なので乳がん検診をスキップしよう」と考えている方もいるかもしれません。これは乳腺の専門医から見ていかがでしょうか?
山  内
実は昨年4~5月は、緊急事態宣言で健診センターも全て休止していたので、その時に検診を受けられなかった方がかなり多くて、その後、進んだ状態で見つかった方が増えています。今は、マスクをして検診を受けられますし、ワクチンも普及してきましたし、検診を受けたからといって新型コロナウイルスにかかるわけではないので、検診はきちんと受ける必要があると思います。