第248回 大曲貴夫さん
- 住 吉
- ちなみに、今、病院内はどのような雰囲気なのでしょうか?
- 大 曲
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皆さんが思っているより相当静かなのではないかなと思います。特に10~11月は本当に静かでした。
今、東京都も新規陽性者数が少しずつ増えているのは皆さんお気づきだと思います。そうなって少しずつ患者さん方も入院されるようにはなってきたのですが、夏に比べたら全く。今のところは静かです。 - 住 吉
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そうですか。
今、大曲先生ご自身が一番問題意識を持っていることは、どのようなことでしょうか? - 大 曲
- オミクロン株が出てきて、改めて思うようになったのですが、オミクロン株は流行りやすいでしょうから、比較的軽い症状の感染者がものすごく大きな数で発生する、ということが起こりうると思うんです。一方で、この病気は途中で急に悪くなるので、きちんと家にいらっしゃる方も見守りをしなければならないんです。もちろん、重症化予防のためにお薬を使うこともあるのですが、それでも悪くなる方はおそらくいらっしゃるので、きちんと見守りをして、おかしかったらすぐに見つけて医療につなげる、ということをしなければなりません。でも、もし新規陽性者がものすごく大きな数で出たら、それをやるのはすごく大変で。例えば、東京でも、夏は同時に4万人ぐらいの方がご自宅にいらっしゃる時期がありましたが、その方々を全員見渡して、何かあったらすぐに見つけて対応する、という医療体制は今までなかったんです。今、それを作らなければならない状況にあるので、そのことに一番関心がありますね。
- 住 吉
- 実際に現場では、その対応に向けて動きがあるのでしょうか?
- 大 曲
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もう5月からずっと動いています。
例えば、診療所の先生方にも参加していただいたり、高齢者の介護などもコロナ禍では大変になるので、介護もきちんと対応してくださるように体制を整えたり…。色々な準備が必要で、夏からずっとやってきています。 - 住 吉
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ここからは、いくつか数字を見ていこうと思います。
まず、ワクチンの2回接種率は、全国で77.7%(12月22日時点)。この数字をどのように見ますか? - 大 曲
- 頑張って上げたな、すごいなと思います。皆さん方の認識もあるでしょうし、手前味噌ですが医療従事者も頑張ったと思います。ただ、個人的にはもう少し高くしておきたいなと正直思います。例えば、東京都だけを見ても、まだ1回も打っていない65歳以上の方が、たしか人口の7~8%いらっしゃるはずで、その方々がかかると、今まで通り、下手すると重症化するわけです。それは避けたいので、なるべく接種率は上げたいなというのが本音です。
- 住 吉
- そして、リスナーの皆さんにこのようなアンケートを行いました。「現在の日本の新型コロナウイルス感染対策は十分だと思いますか?」。結果は、「はい」が44%、「いいえ」が56%でした。この結果を先生はどのように見ますか?
- 大 曲
- 結構厳しいですね。でも、興味深いなと思いました。「対策が厳しすぎる。もう息苦しくてやっていられない」という声もあったと思いますし、一方で「もっと厳しくするべきだ」という声もあって…。これだけ新型コロナウイルスの問題が長く続いている中で、「早く元に戻りたい」という声が強いのではないか、つまり「もう少し対策をゆるくしたほうがいい」という声が多いのではないかと予想していたのですが、日本の方々はむしろ、しっかり対策をして、きちんと抑えこむことが大事だと思っている、ということが透けて見える結果ですよね。
- 住 吉
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それでは、新型コロナウイルスやワクチンについて、リスナーの皆さんからご質問やご意見が届いていますので、大曲先生からお答えやアドバイスをお願いいたします。
「マスクや除菌でしっかり対策をとれていると思う。質問は、副反応が出る人と出ない人の差があるのが何故なのか不思議で、知りたいです」 - 住 吉
- 3回目のブースター接種のときに「またあの副反応か…」という声も聞くので、この質問はすごくわかります。副反応の個人差について、わかってきたことはあるのでしょうか?
- 大 曲
- 誰がどのようになるのかというのは、なかなか予想しづらいですね。申し訳ないのですが…。でも、出た症状が違うからと言って、抗体の差がすごくある、ということはなさそうなので、それは申し上げておきます。人によって、「私は熱が出なかったが大丈夫か?」などとよく言われますが、そういうことはないです。僕も熱は出ませんでしたし。
- 住 吉
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そうなのですね!
12月20日に、政府公式の「新型コロナワクチン接種証明書アプリ」の運用が始まりました。これはどのようなものでしょうか? - 大 曲
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ワクチンを打った証明をしてくれる手段です。一番関係してくることは、国と国の間の移動ですね。入国したりするときに、基本的にはワクチンを打っていることを求められる場合が多いので、万国共通の証明書として示せます。我々の利便性を高める、というところはあるかもしれないですね。
あとは、社会や経済の活動に、こうした証明書をどのように使っていくかということが、これから考えていくことなのかなと思います。 - 住 吉
- あと、新型コロナウイルスによる受診控えや健診・検診控えもまだ続いているのでしょうか?
- 大 曲
- 続いているようですね。病院へ行くことに、気持ちの引っかかりがある方が結構多いようです。新型コロナウイルスの対策をしているので、感染症が減って、病院に行かなくて済む、という面もあります。ただ、慢性の病気や感染以外の病気はそうではないですものね。がんを診ていらっしゃる先生からすると、診断される方の数が減っているのではないか、病気が進んでから見つかっている方が増えているのではないか、あとはライフスタイルが崩れてしまって、持病のコントロールが上手くいっていないのではないか、などという声は聞きますよ。
- 住 吉
- 命という意味では同じぐらい心配なので、やはり病院へ行ってもらいたいと。
- 大 曲
- その通りですね。病院はしっかり対策しているので安全ですよ。むしろ、慢性の病気などは日々痛みを感じたりしないので、悪くなっていることになかなか気づかず、いつのまにか悪くなっているということもあります。ですので、病院にはしっかり行っていただきたいと思います。
- 住 吉
- 大変お忙しいですし、なかなか出口の見えない問題に立ち向かう立場で…まずは本当にありがとうございます。そして、本当にお疲れになる立場だと思うのですが、そんな大曲先生の健康の秘密は何でしょうか?
- 大 曲
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すごくシンプルで、“よく寝ること”と“しっかりバランスよく食べること”、あとは“しっかり運動をすること”。それをやっておくと大丈夫かなと思います。
例えば、新型コロナウイルスでどのような方が重症化のリスクが高いかということを考えると、免疫の根本的なところ、人間の身体の中にウイルスなどが入ってくるときに、最初に働く免疫がきちんと働いていないと重症になるんです。それは、すごくストレスがかかったり、生活リズムが崩れたりすると弱る、ということがよく知られているので、改めて大事だなと、この1年ですごく思いました。 - 住 吉
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大曲貴夫先生、ありがとうございました!
ここで、あなたの健康をサポートする協会けんぽ東京支部からのお知らせです。新型コロナウイルスの感染を警戒して、必要な健診や受診まで控えていませんか? 行きすぎた受診控えは、健康上のリスクを高めてしまう可能性があります。コロナ禍でも、健診や持病の治療、お子さまの予防接種などの健康管理は大切です。医療機関や健診会場では、換気や消毒でしっかりとした感染予防対策を実施しています。健康に不安がある場合は、まずかかりつけ医に相談しましょう。
次回もどうぞお楽しみに!