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第250回 森田豊さん

第250回 森田豊さん

住  吉
住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、医師で医療ジャーナリストの森田豊さんです。
森  田
おはようございます。よろしくお願いいたします。
住  吉
Blue Oceanでは昨日、「高齢者の免許返納」についてリスナーと一緒に考えました。物忘れと認知症の違いや、どうしたら予防できるのかなど、医学的な視点で森田先生に詳しく聞いていきたいと思います。
まず、自動車などの運転をするときに、身体や脳はどのように働くのでしょうか?
森  田
自動車などの運転をするときは、目や耳から入ってくる情報を知覚神経によって正確に脳に伝え、脳の中では、状況を理解し、判断し、意志を決めなければなりません。この脳の働きが「認知機能」というもので、運転にはとても重要な役割を果たしています。そして最終的には、運動神経によって行動や運転操作につなげていくことになります。
住  吉
年をとることによって、運転する技量がなぜ衰えるのでしょうか?
森  田
年をとっていくと、知覚神経や運動神経の働きが鈍くなるだけではなく、運転に肝心な脳における認知機能、すなわち、理解し、判断し、意志を決定する働きが衰えてくることが問題です。これが、安全でない運転を引き起こすことにつながります。ただ、この認知機能の衰えは、同じ年齢でも個人差があるんです。
住  吉
そうですよね。一般的には、年をとると脳はどうなっていくのでしょうか?
森  田
30歳ぐらいから脳の萎縮が少しずつ始まり、65歳ぐらいになると、MRIなどの画像の上でも明らかな萎縮がある、とわかる人が多いです。
脳が萎縮する主な原因の一つに、神経の細胞の数が少なくなることが考えられています。ただ、数多くの神経細胞が脱落したとしても、残った神経細胞が新たな神経の経路を作り出すことが多いため、脳の働きは全体としては失われにくいとも考えられています。
この加齢に伴う脳の萎縮や働きの衰え方は、個人差によるところが大きい、ということが問題です。
これが、認知機能の衰えとなり、認知症につながると考えられています。
住  吉
認知機能の衰え、認知症の原因は、“年をとること”なのでしょうか?
森  田
認知症のおよそ70%が、アルツハイマー病といって、脳にアミロイドβ(ベータ)という老化物質が溜まることが原因とされています。なぜ、溜まる人がいるのか、ということはよくわかっていません。
40代など、若い世代で発症する若年性アルツハイマー病も存在します。加齢が一番の原因ですが、若いから心配しなくてもいい、というわけではないんです。
このアルツハイマー病の他に、脳梗塞や脳出血などの脳の疾患が原因となり、認知症になることもあります。
住  吉
日常生活で、ど忘れや物忘れをすることがありますが、“物忘れしている=問題がある”ということなのでしょうか?
森  田
心配のない物忘れと、認知症による記憶のトラブルには、違いがあります。
例えば、突然街中で出会った知り合いの人の名前が出てこない、あるいはテレビなどに出てきた俳優さんの名前が出てこない。
住  吉
しょっちゅうです…!
森  田
それは心配のない物忘れのことが多いです。
ただ、その出てきた人が俳優さんだということはわかりますよね?
住  吉
それはわかります。
森  田
でしたら大丈夫だと思います。認知症になると、その人との関係性がわからなくなるんです。
例えば、私が街中で住吉さんと偶然会ったとします。そのときに、“住吉さん”という名前が出てこないのはど忘れかもしれませんが、アナウンサーだということを忘れてしまうのは、認知症の症状だと考えられます。
あとは、朝ご飯に何を食べたのか言えない、ということはありませんか?
住  吉
2日前の夜に何を食べたか、は忘れることが結構ありますね。
森  田
これはそんなに心配のない物忘れのことが多いです。認知症になると、朝ご飯を食べたこと自体を忘れてしまうことが多いです。
住  吉
なるほど。
認知症の初期症状は、どのようなものがありますか?
森  田
まずは、「“あの人”“あれ”“これ”などの言葉をよく使うようになった」。要するに、固有名詞を出したくないんです。
そして、「会計をする時に小銭を出さなくなった」。計算するのが億劫になるので、いつも千円札を出す。ただ、若いころからいつも千円札しか出さない習慣の人はいいと思います。
あとよくあるのが、「これまで使っていた電気製品の使い方がわからなくなった」。ラジオやテレビのオン・オフだけならあまり忘れませんが、ビデオや電子レンジなどの操作は少し難しいですよね。今までずっと使ってきたのに、ある日突然わからなくなってしまったり、「故障している」と思うことが多くなったりした場合は、認知症の初期症状かもしれません。
その他、性格の異常ということで発症することもあります。例えば、今までは家の中でもずっと化粧をしていたのに、外へ行くときもすっぴんで行くようになったり、だらしない格好をしていたり、急に「身なりがだらしなくなった」ということも認知症の兆候なのかなと思います。
住  吉
認知症の予防のためにできることは何でしょうか?
森  田
まず、とても大切なのは、「会話を増やす」。一人暮らしや引きこもる人など、対人接触が乏しい人は、アルツハイマー病の発症率が8倍も高いという研究結果が出ています。コロナ禍での自粛生活によって、対人接触が減り、認知症は増えつつあるようです。ですから、人と接して会話をする、直接会わなくても、電話などで会話をする。特に年配の方々とは、頻繁に連絡をとったり、電話をしたりすることが大切です。
続いて2つ目は、「有酸素運動を行う」。運動習慣のない人を100%とすると、運動習慣のある人の認知症の発症率は50~60%に減ります。若いころから、散歩やジョギングなどを習慣づけることは大切です。
そして3つ目は、「脳を使う」。具体的には、楽器を演奏している人はリスクが約31%になり、読書をしている人は約65%になると報告されています。楽器は、手足や口などを使って脳を活性化し、読書は、目から入った情報を脳で処理します。こうして脳を盛んに使う習慣がある人は、認知症になりにくいということです。