第261回 伊藤裕さん
- 住 吉
- ちょっとしたストレスや緊張が、その場ですぐに表れるのが血圧なのですね。
- 伊 藤
-
そうなんです。ですから、それが短い間ならまだいいんですが、長期間あると問題になります。そういう意味では、決められた時間に血圧を測るということはもちろん大事なんですが、色々なときに測ってみる。「私は職場に行ったときに血圧が上がっている」とか、「上司に叱られる回数がすごく多くて、そのときに上がった」という方もたくさんいらっしゃるんです。
自分の血圧が上がりやすいのはいつなのか、ということを知って、そういう状況をなるべく避けることが大事ですね。 - 住 吉
- コロナ禍も2年を超えまして、影響があるのではないかと想像します。もちろんストレスもあると思いますが、コロナ禍での高血圧について、先生が気になっていることはどのようなことですか?
- 伊 藤
-
単純に考えて、ずっと家の中にいなければならないとなると、ずっとだらだら食べて、じっとしていて、運動もできないということなので、血圧が上がる方が多かったです。それから、家族とずっと顔を合わせていると、ケンカになることも多いので、そういうことで血圧が上がる、ということもありました。それから、最近はだいぶ解消されましたが、当時、皆さん病院に来なかったですよね。その中で、「もう薬はいいや」と飲まなかった方もいらっしゃいます。それは直接的に血圧が上がる要因になりました。東日本大震災のときには、ストレスで、避難された方、避難されない方も含めて、2年間ぐらい影響が出ました。たしかに今診ていると、患者さんは太っている方が多いんです。このコロナ禍で。そういうことで血圧や血糖が上がっている方が多いということは、直接的な問題です。
もう一つは、今、病院に来られないということで、オンラインの診療が広く認められるようになってきました。薬を取りに来られない方よりも、オンラインで話をして薬を送る、という形がよかったんですが、少し問題なのが、それに慣れてしまうと、「病院に行く必要がない」と思ってしまうんです。特に高血圧は症状があるわけではないですから。それで済ませようとするのは、僕は今後よくないのではないかと。もちろんオンラインである程度頻回に話を聞くのはいいんですが、たまに病院に行くと、皆さん緊張するじゃないですか。「明日病院に行くから頑張ろう」とか「採血があるし、食生活を直そう」とか、そういうことは逆にいいですし、医者にとっても、顔色を見られるというのは全然違うんですよ。雑談すると、他の病気が見つかるんです。「今日は顔色が悪いね」とか。オンラインの画面上だけで見ると、お互いにそういうことをスルーしてしまうので、今後はオンラインもいいんですが、対面の診療も入れていく必要があるのではないかと思いますね。 - 住 吉
-
なるほど。
さて、番組サイトでは、リスナーの皆さんに健康に関するアンケートを行っています。
「日常生活で血圧を気にされていますか?」という質問では、「はい」が39%、「いいえ」が61%。
「高血圧が気になって健康診断に行かれたことはありますか?」という質問では、「はい」が9%、「いいえ」が91%という結果になりました。
先生はこの結果をどうご覧になりますか? - 伊 藤
- 割と正直な答えだと思います。高血圧が身体に悪いということは誰でも知っていると思いますが、「気にされているのか?」という場合、まず自分の血圧をきちんと知っている、ということですよね。そのうえで、「これはまずいのではないか」と思っている方は半数を超えていない、というこの状況はあると思います。身体はみたくないし、血圧が高くてもそのほうが元気だ、というような方が多いと思います。問題なのは、健康診断に行かれる方がそんなにいないこと。会社の場合は会社の健診があると思いますが、受けていない方は、ぜひ一度健診を受けていただいて、自分の身体がどうなっているのかをみるということは、非常に大事だと思います。
- 住 吉
-
そして、「血圧コントロールについて、実践していることを教えてください」という質問には、このようなメッセージが届いています。
「喫煙をやめました」
「毎朝血圧を測っています」 - 住 吉
- こちら、いかがでしょうか?
- 伊 藤
- 喫煙は圧倒的に身体に悪くて、身体にとっていいことは一つもないので、喫煙と高血圧があると、かなり危ないです。この方が、例えばコレステロールが高かったらアウトです。ですから、何か一つ気をつけるとしたら、喫煙をやめることが身体にとっては一番いいことなので、これはいいことではないでしょうか。
- 住 吉
-
続いて…。
「減塩を心がけています。あと、家の中で寒暖差が出来すぎないように、エアコンなどを使って温度調節をしています」 - 伊 藤
- 減塩のことは昔から言われていますが、住居環境の影響もすごく大きいんです。特に最近は温暖化の中で、ものすごく気候が変わってきましたよね。ものすごく寒かったり、ものすごく暑かったり。夏場は脱水になり、ものすごく脳梗塞が増えるんです。血管が悪くなっているところで脱水があると詰まってしまったりするので。この寒暖差の問題はすごく大きな問題です。
- 住 吉
- 高血圧の予防のためには、「健康診断」は欠かせないでしょうか?
- 伊 藤
- そうですね。まずは自分の身体が健康かどうかを知らないと始まらないので、そこで真面目な方はきちんと受けると思いますが、不真面目な方は受けないですね。それでも会社で健診をやっていると、「受けてください」と家族に言われてしぶしぶ行きますが…。問題は、そこできちんとした医師にかかれたらいいんですが、医師に適当なことを言われてしまうとうまくいかないので、自分で自分の血圧を無理なく管理する、自分で自分の健康を管理する、ということが大事です。積極的に、自分で色々な工夫をすることが大事だと思います。
- 住 吉
- 自分でもきちんと結果を把握して、「自分には何ができるだろうか?」と考えて。
- 伊 藤
- はい。できることをやらないといけないので、食べることに関して言えば、「これは食べてはいけない」とか、「もっと味の薄いものを食べろ」とか、そういうことは長続きしないんです。だからどちらかというと、ポジティブに。「もう少しいいものをとろう」ということは皆さんできると思うので、それがいいのではないでしょうか。
- 住 吉
- それでは、伊藤先生ご自身が健康や元気のために心がけていることを教えてください。
- 伊 藤
-
昔と今で変わっているんです。若いときは、健康の秘密は“恐れ”だと思っていました。つまり、「自分はめちゃくちゃ元気だ」とか「自分は病気にならない」という根拠のない考えをもつのではなくて、「自分はいつか病気になるかもしれない」という恐れをもって。あるいは、少し身体が悪いと健康診断で言われたら、そのことを大切に行うことが大事だと思っていたんです。それはおそらく若い方にとっては大事なんです。
ところが最近変わってきました。年を取ってくると、一つぐらい病気をもっていたりするし、あまり恐れていると人生が楽しくないんですよ。今はそうではなくて、“見た目”だと思うんです。見た目というのは、「あなた、年齢よりも若いね」と言われたいじゃないですか。だから、若々しいと思われるために、若々しくするための健康管理ができますよね。だから、年を取ってくると、ポジティブな考え方のほうがいいのではないかなと僕は思っています。 - 住 吉
-
伊藤裕先生、ありがとうございました!
ここで、あなたの健康をサポートする協会けんぽ東京支部からのお知らせです。日本人の20歳以上の2人に1人は、高血圧と言われています。飲酒や運動不足も高血圧の原因ですが、最大の原因は、塩分の摂りすぎです。お醤油やソースはかけずにつけること。味つけにショウガやレモンを使ったり、麺類の汁を残すだけでも塩分を控えられます。また、高血圧は自覚症状がほとんどないため、毎年健診を受けることも重要です。協会けんぽからのお知らせでした。
次回もどうぞお楽しみに!