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第264回 SAMさん

第264回 SAMさん

住  吉
住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、TRFのSAMさんです。
SAM
よろしくお願いします。
住  吉
ダンサーで、ダンスクリエイターのSAMさん。TRFのデビューは1993年。すごく忙しくお仕事をされ、踊ってこられたと思います。その後も、振り付けや演出など幅広くダンスパフォーマンスの世界で活躍されてきました。そんなSAMさんも、なんと今年還暦になったのですよね。
SAM
そうなんですよね。
住  吉
やはり、40代くらいから体やダンスの変化を感じてきた、と伺いました。
SAM
40代後半ぐらいに、がくっとダンスのキレが悪くなったということを体感して。しばらくやっていなかったブレイクダンスの技みたいなものがあるんですけど、それができなくなっていたんですよね。それで結構愕然として、「もう1回きちんと体を作り直さなければ」という意識になったのがその頃です。
住  吉
そうして、改めて体のことを考えたい、と思う中で出会ったのが「ジェロントロジー」という学問。南カリフォルニア大学デイビススクールのジェロントロジー学科通信教育課程を修了されています。
そして今回、『いつまでも動ける。 年をとることを科学する、ジェロントロジー』という本も出版されています。
この「ジェロントロジー」という言葉を初めて聞くという方もいると思いますが、どういうものなのでしょうか?
SAM
わかりやすく言うと、「老化することを科学的に紐解いていく」という学問です。医学ではなく学問なので、治療したり、良くする、ということはないんです。老化するというのはどういうシステムなのか、老化を取り巻く環境など、色々な側面から考えて、老化すること自体をポジティブにとらえていきましょう、という学問です。
住  吉
なるほど。それが自分のダンスにも役立ちそうだということを、勉強しながら感じたということですね。
SAM
そうですね。僕は6~7年前から、「ダレデモダンス」という高齢者の方の健康寿命を延ばすダンスプログラムを自分で作り始めて、そういう中で、高齢者の方の特性だったり、どういうことが必要なのか、ということを自分なりに勉強していたんです。それをやっていく中で、ジェロントロジーというものに出会ったので、高齢者の方に何かを伝えたいときに、もっと具体的に言ってあげられるのではないかなと思って。自分の奥行きを深くしたくなったというか。
住  吉
しかも、勉強したら「これだ!」と感じるところがあったと。
SAM
そうです。だいぶ深いですね。
住  吉
“いつまでも動ける体”でいるために、ご本にもある具体的な方法をいくつか伺いたいと思います。
まず、その1「悩むより筋トレ、休みより運動」。
SAM
これは、僕がこういう仕事をしていて、筋トレや体を動かすことを身近に感じているから、と思われてしまうんですけど、一般の方で運動が得意ではないという方は、どういう運動をしたらいいのかわからない方もたくさんいると思うんです。そういう方は、散歩でもいいし、家の中で座っている時間を意識して短くするとか。椅子に座っているんだったら椅子から立ったり座ったりということを10回、30分に1回はやってみるとか、そういうことで体の運動にはなっていくので、身近なところから体を使うということを意識するとだいぶ変わってくると思います。
住  吉
では、「悩むより筋トレ」と言っても、すごく激しくなくてもいいのですね。
SAM
そうです。筋トレと言っても、何をすればいいのかわからない方もいると思います。世の中に出ている筋トレの本や動画はたくさんあると思うんですけど、間違っているものはないと思うんですよ。何でもいいので、目にしたものをやってみるといいと思います。
住  吉
その2「姿勢こそトレーニング。すべては股関節で決まる」。
SAM
姿勢は大事です。どうしても肩が前に出てしまったり、背中の力が抜けてしまいがちなんですけど、できるだけ姿勢を良く保つと、内臓にもすごくいいし、股関節や足腰にもものすごくいいんです。だからそれだけで腰痛が治ったり、肩こりが治ったりすると思います。
住  吉
「すべては股関節で決まる」というのは、股関節は老化においてもポイントということですか?
SAM
そうですね。老化のカギだと思っていて。股関節が衰えると、転倒したり歩きづらくなったりしていきます。股関節は、上半身と下半身をつなげている部分、体の中心なので、ここをしっかり意識することによって、腹筋も保てたり、筋力も保っていけると思います。
住  吉
その3「コミュニティが寿命を延ばす。つながりから生まれたダレデモダンス」。
SAM
コミュニティというのは、社会との関わりなんですけど、例えば定年退職して、会社の人とも会わなくなって、家にずっといて、人ともあまり会話をしなくなっていくと、まず脳が老化していくんですよね。それで外にも出なくなっていくと体も弱っていく、と。そういうことがあるので、できるだけ社会との関わりを持っていく。これは例えば、地域のボランティアに参加するでもいいし、盆栽教室でもいいし、絵画教室でもいいし、仲間と集まって囲碁や将棋をするでもいいし。とにかく人と関わっていくということがすごく大切だと思っています。
住  吉
なるほど。何をしようというよりは、何でも好きなことでいいから、家から出て、何かしてみるという。
SAM
はい、趣味でいいと思います。
住  吉
「ジェロントロジー」という学問の中には、「なぜ人間は年をとるのか」という根本的な問いにも向き合うそうで、これがおもしろかったのだそうですね。
SAM
はい。ジェロントロジーの学問は、生物学的側面、社会学的側面、心理学的側面という、大きく3つの側面から説いていくんですけど、生物学的側面は、耳が遠くなったり悪くなったり、加齢することで髪の毛が抜けたり、皮膚が弱くなったり、ということです。それまでは、なぜ体が弱っていくのかということを、きちんと考えたことがなかったんですよ。体の中の仕組みで、細胞レベルまでいくんです。分子と原子が…というような世界にいくんですよね。そもそも、分子と原子とは何だろうと調べてみると、原子核の中には中性子と陽子があって、その周りに電子が2つ飛んでいて…というような、そこがすごくおもしろくて。2つ飛んでいる電子の1つが分離してしまうと、それによってダメージが起こる。これは酸化によるダメージと言うんですけど、その電子を他のところから補おうとして、それによって体がダメージを受けていく。そういうシステムだったり、知らない間に自分たちの体の中で起こっていることなんですよね。
住  吉
色々な説があるということで、「カロリー制限で寿命が延びる」という説も取り上げられているようですね。
SAM
色々な説が出るんですけど、有効だと言われているものはそんなになくて。ただ、「酸素代謝が早い生物ほど寿命が短い」というのは、信ぴょう性があるみたいですね。