第268回 森田豊さん
- 住 吉
- 住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、医師で医療ジャーナリストの森田豊さんです。おはようございます。
- 森 田
- おはようございます。よろしくお願いいたします。
- 住 吉
- 以前、先生に「寒暖差疲労」のお話を伺いましたが、最近は気温差が日によってバラバラで、疲労が溜まりそうな日が続いていますね。
- 森 田
- そうですね。外来でも、「何となくだるい…」「元気がない…」という患者さんが多くて、気候の変化が体に及ぼす影響を目の当たりにしています。
- 住 吉
- だからこそ、自分に優しく過ごしたいですよね。そんな中、森田先生が『健康寿命を決める[70の選択肢]』というご本を出されました。「健康に歳を重ねるためにはこうしたほうがいいよ」という医学知識を、クイズ形式でまとめた本です。気になる項目ばかりなので、今日はこの中からいくつかピックアップしてご紹介します。 まずは、「食」に関するクエスチョンです。森田先生、お願いいたします。
- 森 田
- はい。
「次の楽器のうち、どの楽器の演奏を聴きながら食事をすると、食べ物をより甘く感じられるという研究結果があるでしょうか?」
1. バイオリン 2. チェロ 3. コントラバス - 住 吉
- なるほど…音の高さが違う…。自分の体験で想像すると、「3. コントラバス」。低い音を聴いているほうが甘さを感じられる気がします。
- 森 田
- 正解は、「1. バイオリン」なんです。
- 住 吉
- 逆!?
- 森 田
- オックスフォード大学の研究によると、人間は高い音の音楽を聴くと食べ物を甘く感じ、低い音の音楽では苦みを感じやすい、ということなんです。これを「ソニック・シーズニング」と言って、“音による味付け”と呼んでいます。
例えば、バイオリンやフルートなどは高い音ですから、食べたものをより甘く感じますし、チェロやコントラバスは低い音ですから、苦みを感じます。
こういった「音などによって味が変わってくる」という研究は、世界各国で行われています。 - 住 吉
- 少し甘いものを控えたいときには、バイオリンやフルートを聴きながら食べると、砂糖控えめでも満足できるのでしょうか?
- 森 田
- 高い音を聴きながら食べると、甘さも早く満足できるので、ダイエットにつながるのではないかなと思って、ちょっと本でも書こうかと…(笑)。
- 住 吉
- 実際にやってみたわけではないのですね(笑)。
- 森 田
- やってみたわけではないです(笑)。
- 住 吉
- 続いても、「食」に関するクエスチョンです。
「カルシウム不足だとイライラする、とよく聞きますが、本当でしょうか?」
1. 本当 2. うそ 3. 諸説ある - 住 吉
- 「1. 本当」と言いたいですが…「3. 諸説ある」?
- 森 田
- 正解は、「2. うそ」なんです。
- 住 吉
- えっ!うそなのですか!?
- 森 田
- 多くの人が「1. 本当」か「3. 諸説ある」と答えると思うんですが、医学的には、カルシウムとイライラは何の関係もないんです。
- 住 吉
- そうなのですか!
なぜそのように言われているのでしょうね? - 森 田
- おそらくですが、日本人のカルシウム摂取量が少ないことと、ストレス社会でイライラしている人が多いということを、短絡的に結びつけた都市伝説的なものなのではないかと言われています。
- 住 吉
- 意外です…!
- 森 田
- イライラしたときにはこれを食べたほうがいい、というものが研究でわかってきて。2016年のオーストラリアの研究発表で、果物や野菜の食べる量を増やした場合、幸福度や生活、健康に関する満足度が高まる、という研究結果が得られました。
- 住 吉
- ビタミンですか?
- 森 田
- ビタミンもあると思いますし、「そういうものを食べている」という意識が高まることで、自分も満足する、ということもあるのだと思います。
- 住 吉
- それでは続いて、「花粉症」に関するクエスチョンです。
「子どもの頃、次のうちのどれで遊ぶことの多かった人が、花粉症になりやすいでしょうか?」
1. すべり台 2. プール 3. ゲーム - 住 吉
- 花粉症の原因がありそうな、公園の「1. すべり台」。
- 森 田
- 研究では、「2. プール」が関係しているとのことです。
- 住 吉
- えーっ!どうしてですか?
- 森 田
- プールに使用されている塩素が、花粉症に関してあまり良くないのではないかということなんです。
ドイツの国立環境健康研究センターによって行われた研究によりますと、成人約2600人を調べたところ、学童期に年間3~11回プールを使用していた人は、そうでなかった人に比べて、花粉症を発症する確率が74%高まったということです。劇的に差があるわけではないんですが、豆知識として、そのようなこともあると知っておいてもらいたいです。 - 住 吉
- 学校に行っていると、3回はプールに入りますよね。
- 森 田
- そうですね。ただ、今の日本での塩素濃度は、このときに調べられたよりも少ないので、そんなに大騒ぎするような話ではないということです。
- 住 吉
- 続いては、「ライフスタイルと病気」に関するクエスチョンです。
「ネクタイをしている人ほど、ある病気にかかりやすいという報告があります。それは次のうち、どの病気でしょうか?」
1. 脳の病気 2. ぜんそく 3. 睡眠障害 - 住 吉
- どれもありそうですが…首に負担をかけているので、血流が悪くなって「1. 脳の病気」。
- 森 田
- 素晴らしい!
2018年に発表されたドイツの研究で、24歳の健康な男性30人を、「ネクタイを着用した人」と「着用していない人」の2グループに分けて、MRIを観察したところ、ネクタイをぎゅっと締めている人は血流が悪くなったと。そして、脳への血流が7.5%減少しているということなんです。ネクタイを外した後も、つける前より5.7%も血流が減少したということなので、特にタバコを吸う方や高齢者、高血圧の方は、気をつけていただきたいです。
できれば、ネクタイはゆるくつけていただきたいですし、クールビズですからネクタイをしなくてもいいのではないかなと思いますけどね。