第268回 森田豊さん
- 住 吉
- 住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のテーマは、「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」。お伺いするのは、昭和大学病院 病院長の相良博典(さがら・ひろのり)先生です。相良先生は呼吸器疾患がご専門とのことで、どうぞよろしくお願いいたします。
- 相 良
- よろしくお願いします。
- 住 吉
- キーワードの「慢性閉塞性肺疾患(COPD)」。これまで番組でも何度かご紹介してきたテーマですが、改めて、このCOPDという病気について教えてください。
- 相 良
- まず「COPD」とは、「慢性閉塞性肺疾患」の英語の頭文字をとった言葉です。特にタバコがその原因のほとんどで、90%以上がタバコによって起こる疾患だと言われています。 特に問題視しなければいけないのは、肺が壊れてくる、ということです。壊れたものは元に戻らないので、COPDにならないように、まずは「タバコを吸わない」ということが一番重要だと思いますし、あとは例えばタバコを吸っていても、COPDになる前にやめるべきだと思います。
- 住 吉
- COPDの罹患者やその予備軍は増えているのでしょうか?
- 相 良
- そうですね。患者さんの数自体は、少し古いデータになりますが、550万人近くはいるだろうと。現在の数字で置き換えると、おそらく800万人ぐらいはいるのではないかと言われています。 もう1つ問題なのは、その人数の中でも、治療を受けている方が5%ぐらいしかいらっしゃらないんです。
- 住 吉
- そんなに少ないんですか…!
- 相 良
- そうです。つまり、自分の症状が、例えば「年齢のせいではないか?」と思い、病院に行かない。結果として、COPDと診断されない。それが一番問題です。
- 住 吉
- 症状と言いますか、どのようなときにCOPDを疑えばいいのでしょうか?
- 相 良
- それはごくありふれた症状で、咳や痰、息切れです。息切れは、咳や痰が出た後に出てきますので、なかなか気がつきません。ずっと咳が続いている、あるいはずっと痰が出ている方で、タバコを吸っているという場合は、まずCOPDを疑ったほうがいいと思います。
- 住 吉
- どのくらい続いていると、疑ったほうがいいですか?
- 相 良
- 2か月以上咳が続いている方はおかしいです。それでだいたい20年以上タバコを吸っていて、慢性の咳が続いているということであれば、COPDを疑ったほうがいいだろうと思います。
- 住 吉
- “40歳以上の喫煙者”ということもキーポイントだそうですね。
- 相 良
- そうですね。1つは、タバコを吸い始めてどのくらいでCOPDになっていくのか、ということです。だいたい20年ぐらい経つとCOPDになっていくと言われていますので、タバコを吸っていい年齢である20歳からプラス20歳の40歳以上でタバコを吸っていて、COPDになっていく人たちが多いだろうということで言っています。
- 住 吉
- 20年吸っていた場合、誰でも必ずかかるということですか?
- 相 良
- そうではないです。
- 住 吉
- かかる方とかからない方で、何が違うのでしょうか?
- 相 良
- そこがすごく難しいところで。タバコを吸ってCOPDになる方と、タバコを吸ってもCOPDにならない方がいらっしゃいます。そこをどうとるかだと思うんです。誰しも、タバコを吸うことによって肺が壊れていきます。ただ、その速度が早いか、ゆっくりなのか、というところで違いはあると思います。
- 住 吉
- なるほど。では、早く壊れてしまう体質など、そういう方がCOPDになっているのではないかと。
- 相 良
- そうです。
- 住 吉
- “加熱式タバコ”だと、COPDのリスクはどうなのでしょうか?
- 相 良
- そこは非常に注意しなければいけないんですが、例えば「今吸っているタバコをやめて、加熱式タバコに変えました。だから大丈夫」と思っている方がたくさんいらっしゃると思います。ただ、それは実は誤った認識で、加熱式タバコにしてもCOPDになっていきますので、それは注意したほうがいいと思います。
- 住 吉
- ニコチンが原因ですか?
- 相 良
- はい、ニコチンが入っていますので、そういう面ではきちんと注意しなければいけません。
- 住 吉
- タバコの関係で言うと、「受動喫煙を長らくしていたかも…」という方もいるかもしれません。“受動喫煙”だとどうでしょうか?
- 相 良
- 受動喫煙でも、煙を吸いますので、結果的にはCOPDになっていきます。例えば、「自分は吸っていないけれど、旦那さんが吸っていた」という方のレントゲンやCTをとってみると、肺気腫やCOPDが起こっているんです。ですから、受動喫煙もきちんと気をつけておかなければいけないと思います。
- 住 吉
- “元喫煙者”はどうですか?
- 相 良
- 元喫煙者であったとしても、「タバコを吸っていた」ということであれば、COPDになっている可能性もありますので、「今やめているから大丈夫」ということは言えません。
- 住 吉
- では、やめてしばらく経ってから発症する方もいるのですか?
- 相 良
- はい、いらっしゃいます。
- 住 吉
- そうなのですね。そうすると、重要なのは禁煙ですか?
- 相 良
- やはりタバコはしっかりやめる。「本数を減らしたから大丈夫」と言う方もたくさんいらっしゃいますが、本数ではなく、タバコを吸っているか吸っていないかです。例えば「1箱吸っていた方が半分に減らしたから…」とよく言うと思いますが、そうではなく、1本2本でも吸っていれば一緒なんです。
- 住 吉
- 一緒なんですか!?
- 相 良
- 一緒です。本数によってCOPDになるかならないかではなく、タバコを吸っているか吸っていないか、そこが重要です。ですから、禁煙、つまりやめることが重要だと思います。