第300回 大曲貴夫さん
- 住 吉
- 住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のテーマは、「感染症」です。スタジオにお迎えしたのは、医師で国立国際医療研究センター・国際感染症センター長の大曲貴夫先生です。よろしくお願いします。
- 大 曲
- よろしくお願いします。
- 住 吉
- 大曲先生は、東京都新型コロナウイルス感染症医療アドバイザーも務めていらっしゃいます。新型コロナウイルスの第8波も来て、今年も忙しい1年だったのではないかと想像しますが、いかがでしたか?
- 大 曲
- 今年は、去年とはまた全く違う忙しさでした。患者さんの数がすごく増えたということもありますが、高齢の方も増えて。肺炎ではないけれど入院が必要、という方が増えてきたときに、医療としてどう対応すればいいかということはあまり決まっていなかったので、その辺りの議論も今年は大変でしたね。
- 住 吉
- ウイルスの変化とともに、社会もどのように変化していくか、ということは今後も大事な課題となっていきますね。
その変化の中で最近話題にのぼるのが、新型コロナウイルスとインフルエンザの同時検査キットについてです。これは、どこで手に入るのでしょうか? - 大 曲
- これは、元々病院ではできた検査ですが、実際に買えるようになりました。ネット通販でも買えるでしょうし、そのうち薬局でも買えるようになると思いますが、まだ始まったばかりですので、すぐには見つからないかもしれないですね。
- 住 吉
- この時期は、どちらに感染したかわからない方が増える、ということで、この時期の発売になったのでしょうか?
- 大 曲
- うまく間に合った、という感じですかね。
- 住 吉
- 実際、現場ではどうでしょうか? 新型コロナウイルスとインフルエンザのどちらに感染したかわからないという方が多かったり、インフルエンザに感染した方が増えてきていたり、ということをニュースでも耳にしますが…。
- 大 曲
- そうですね。「新型コロナウイルスとインフルエンザは同時に来ない」など、色々なことを言われていましたが、やはり同時に来ているんですよね。新型コロナウイルスの患者さんが多いということは間違いないです。ただ、2~3週間ぐらい前から、外来でもインフルエンザの患者さんも出始めてきていて、東京都のデータも出ていますが、急に増えていますよね。それ以外にも、同じような症状で、例えばRSウイルス感染症もあって、そういう患者さんも少しお見かけするようになりました。どれも冬に流行る感染症です。ですので、元々見分けるのは難しいのですが、同時に流行ってしまうとなかなか大変だなとは思います。
- 住 吉
- ちなみに、注意点はありますか?
- 大 曲
- 注意点は、新型コロナウイルスの抗原検査キットと一緒で、全ての感染症を100%拾い上げられるわけではないんですよね。ですので、陰性が出たとしても、新型コロナウイルスやインフルエンザの可能性が100%否定されたわけではない、ということはあると思います。
- 住 吉
- そして、新型コロナウイルスの治療薬の最新情報についても、皆さん気になっていると思います。国産初の新型コロナウイルスの飲み薬、塩野義製薬の「ゾコーバ」が承認されました。現在、新型コロナウイルスの治療薬は、種類も増えているようですね?
- 大 曲
- 増えてきましたね。飲み薬だけでも3種類ありますし、点滴の抗ウイルス薬だけでも4種類ありますし、免疫を抑えるお薬も3種類あります。最初はゼロだったので、だいぶ増えました。
- 住 吉
- そうですね。効く・効かない、ということについては…。
- 大 曲
- 実感するということがなかなか難しいのかなと思います。多くの方は、新型コロナウイルスにかかるのが初めてだと思うので、前にかかった経験がない分、比較できないと思うんです。
- 住 吉
- 飲んだら翌日元気になる、という即効性は当然ないということですね。
- 大 曲
- ないんですよ。おそらく、7日続く熱が6日で済むとか…。
- 住 吉
- ただ、無かった頃を考えると、やはり心強いですね。
- 大 曲
- 全く違います。無かった頃を経験していて、治療する側も怖かったので。
- 住 吉
- 治療薬が出てきて、海外ではノーマスクで、新型コロナウイルスとインフルエンザが同じ扱い、という国も出てきています。日本でも、新型コロナワクチンの有料化や、2類から5類へ、という議論も出始めています。
専門家の目から見て、日本は今後どうするべきなのでしょうか? - 大 曲
- この話は結構難しいと思うのですが…。海外の様子を見ると「いいな」と思えますが、あそこまで行くのに、日本とは桁違いの多くの方が感染して、あまり言いたくないですが、多くの方が入院したり亡くなったりしているんです。ですので、日本も一気に真似をすると、同じようなことが起こると思います。日本はおかげさまで、今、世界でも人口当たりの陽性者数や亡くなった方の数が一番低いぐらいなんです。ここで対策を全て他の国と一緒にしてしまうと、同じような状況になってしまうので危ないです。
- 住 吉
- 新型コロナウイルスが変異して、状況が変わってきていても、そのようになる危険があるのですね。
- 大 曲
- あるんですよね。特に高齢の方は、入院のリスクや亡くなるリスクがまだ高いです。さらに、献血に行った方を調べたデータが出てきたのですが、高齢の方は、抗体陽性の方の割合が低いんです。つまり、かかっていないんですよね。ですので、まだかかっていない、守らなければいけない方々が日本にはたくさんいらっしゃる、ということを覚えておかなければいけません。
- 住 吉
- では、「変異して重症化しないウイルスになったみたいだから…」というように、ストレートには考えないほうがいいのですね。
- 大 曲
- 考えられないですね。