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第308回 永倉仁史さん

第308回 永倉仁史さん

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住 吉
住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のテーマは、「アレルギーとジェネリック」です。お話を伺うのは、アレルギー専門医で、ながくら耳鼻咽喉科アレルギークリニック院長の永倉仁史先生です。よろしくお願いいたします。
永 倉
よろしくお願いいたします。
住 吉
クリニックにも、すでにたくさんの花粉症の方がいらっしゃるのではないかと思います。周りでも、花粉症の方が年々増えているように感じます。実際、患者数はどのくらいいるのでしょうか?
永 倉
だいたい国民の3人に1人、都市部の20~30代の方は、2人に1人が花粉症を発症しています。
住 吉
本当に増えていますね。やはりスギ花粉の花粉症の方が多いのですか?
永 倉
はい。花粉症と言いますと、スギ花粉が主な理由です。
花粉症は、1963年ぐらいに日光市で見つかったのですが、日光のスギ林に近いところと、トラックなどの交通量の多いところとでは、トラックが多くて排気ガスの多いところのほうが花粉症になる方が多い、ということがわかりました。大気汚染がアレルギーを悪化させていると言われています。
住 吉
花粉症のメカニズムや症状についても、改めて教えてください。
永 倉
人間の体は免疫を持っていて、その免疫が体を守っているのですが、例えばインフルエンザや麻疹、おたふく風邪など、一度かかると、そのウイルスに対して抗体ができるので、再びそのウイルスが入ってきたときは、抗体がやっつけます。ただ、アレルギーの場合、スギ花粉やハウスダストなどが再び体の中に入ってきたときに、アレルギー反応を起こしてしまいます。自分の体にとってはスギ花粉などの異物を追い出すのですが、くしゃみや鼻水、鼻詰まり、涙など、ご本人にとってはすごく不愉快な反応が起こってしまう、これがアレルギーの原因となります。
住 吉
口腔アレルギー症候群が起きる方もいるのでしょうか?
永 倉
はい。花粉症の方の2割ぐらいと言われるのですが、マンゴーやキウイ、メロンなどを食べると口の中がかゆくなるという方がいらっしゃいます。
住 吉
それは花粉症とも関係があるのですか?
永 倉
天然で飛んでくる花粉成分と、果物や野菜に含まれるタンパク質は、一部同じものを持っているので、花粉症の方は、果物に対してアレルギーを持つと、口の中がかゆくなったり、腫れたりする方もいらっしゃいます。
住 吉
花粉症は、遺伝するのでしょうか?
永 倉
遺伝が関係する病気です。例えば、両親の1人が花粉症の場合、両親が花粉症でない方よりも約2倍、さらにもし両親とも花粉症の場合は約4倍、花粉症を起こしやすいと言われています。
住 吉
小さなお子さんでも、花粉症になりうるのでしょうか?
永 倉
花粉の量が増えてきたということもありますので、外来で診ていますと、早いと2歳。先日も、2歳で顔が腫れてしまって、鼻水が溢れて夜眠れない、という方が見えています。
住 吉
新型コロナウイルス・インフルエンザ・風邪と、花粉症の見分けがつきにくいこともあると思います。受診や見極めのアドバイスはありますか?
永 倉
新型コロナウイルスは、急なウイルスの感染症ですので、熱が高かったり、喉の痛みがいつになく強かったりします。それに対して花粉症の場合は、くしゃみや鼻水、鼻詰まりが主ですし、例えば目のかゆみは、新型コロナウイルスで起こることはまずないと考えて、その辺から区別していくことができると思います。
住 吉
目のかゆみが出たら、おそらくアレルギーだなと。
永 倉
はい。たまに、風邪を引くと目もかゆくなるという方がいるので、絶対ではないのですが、割合で言うと、ほとんどの新型コロナウイルスの方、風邪の方は、目がかゆくなるということはありません。その辺を見ながら診断していくということになります。
住 吉
そして、最新の治療についてです。実は、この番組のディレクターも今、「舌下免疫療法」を試しているのですが、舌下免疫療法について教えてください。
永 倉
自分のアレルギーの抗原を大量に入れることで、自分の体がアレルギーを起こさないようになる、というメカニズムを利用した治療法です。2000年代にヨーロッパから広がってきて、日本でもすごく増えている花粉症を何とかしようと、10年20年と研究して、なかなか完成しなかったのですが、2014年から舌下免疫療法が保険で使えるようになりました。
住 吉
スギ花粉のワクチンを舌下に入れるということですか?
永 倉
免疫を変えて良くするというと、ワクチンという種類に入るのですが、スギの抗原でアレルギーを起こしているタンパク質を、例えば鼻の中に入れると大変なことになります。ただ、舌下はアレルギー細胞が少なくて、免疫細胞が多いところなので、大量に入れると、自分の体がスギを異物だと思わないようになって、アレルギーを起こさないようになるという、体質を変えていく治療法です。
住 吉
ただし、これは結構続けなければいけないのですよね。
永 倉
だいたい3~5年。というのは、WHOがこれを世界でまとめまして、3~5年やったほうがいいという目安になっています。
住 吉
「もしかしたら自分は花粉症かもしれない…」という方の、受診の目安について、アドバイスなどはありますか?
永 倉
だんだん目がかゆくなったり、鼻水が増えたりしてきたら、血液検査をしていただくと、抗体の有無、あるいは数値でわかります。もし花粉症とわかれば、花粉症に対してマスクをするなどの対策をしたり、お薬を使ったりすることで、症状はずいぶん和らげていけると思います。まずは病院に行っていただいて、検査を受けていただくことが一番良いと思います。
住 吉
では、怪しいなと思った時点で、まずは一度診察に行ったほうがいいのですね。
アレルギーは、ひどい症状が出てから対処するよりも、出始めや出る直前に対処したほうが、その後の経過もずいぶん違うのでしょうか?
永 倉
花粉症の場合、だいたい花粉の来る時期はわかっていて、今使っているお薬が、1週間ぐらい前から連続して使っていただくと最大限効いてくれるので、最大限効かせて迎え撃って、なるべく症状を出さないようにする。それが、少し早めから予防的にお薬を飲んでいただく、初期療法という治療法です。
もし、しばらく経って、症状がもっと強くなってから抑えようとすると、お薬をあれこれ使っても、だんだん体が過敏になって反応が強くなりますので、効きにくくなってきます。