第312回 森田豊さん
- 住 吉
- 住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、医師で医療ジャーナリストの森田豊先生です。おはようございます。
- 森 田
- おはようございます。よろしくお願いいたします。
- 住 吉
- 森田先生は、認知症のご家族の介護にあたった経験から、昨年、『医者の僕が認知症の母と過ごす23年間のこと』というご本を出版されています。
認知症と言うと、先日、俳優のブルース・ウィリスさんが「前頭側頭型認知症」であることを、ご家族が明らかにしました。この「前頭側頭型認知症」とは、どういうものなのでしょうか? - 森 田
- 脳の一部である、前頭葉と側頭葉に萎縮が見られ、そこにいくつかの老化物質がたまって生じる認知症の一つのタイプのことです。特徴的な症状として、前頭葉、側頭葉の働きが悪くなることで、身だしなみが無頓着になったり、相手に対して遠慮ができなくなったり、同じ行動を繰り返すようになったり、感情の鈍麻が生じたりします。そこが、認知症で最も頻度の高い「アルツハイマー病」との違いです。
- 住 吉
- なるほど、アルツハイマー病が認知症の全てではないのですね。
- 森 田
- そうですね。アルツハイマー病は、認知症全体の60~70%です。
この前頭側頭型認知症は、発症年齢が50~60代と比較的若いことが多いです。また、症状を改善させたり、進行を防いだりする治療方法がまだ開発されていないことも特徴で、抗精神病薬による対症療法で症状を緩和させることが、現状の対処法です。 - 住 吉
- ブルース・ウィリスさんは現在68歳でいらっしゃって、お若いですものね。長年俳優として活躍してこられて、昨年「失語症を患っている」と、家族がブルース・ウィリスさんの引退を発表していました。
誰にでも、認知症発症の可能性はあるということなのでしょうか? - 森 田
- アルツハイマー病、前頭側頭型認知症も含めて、2年後には、高齢者の5人に1人が認知症になると試算されているんです。そのため、自分が認知症にならなくても、家族や知り合いが認知症になって、何らかの形で認知症に直面しなければならない場が出てくるのではないかなと思いますね。
- 住 吉
- この前頭側頭型認知症も、はっきりした原因や防ぎ方がわかっていないのですよね?
- 森 田
- わかっていないですね。
- 住 吉
- そして今日は、「食物アレルギー」のお話も伺っていきます。
リスナーの方から、健康にまつわるこのようなメッセージが届いています。
「ここ何年かでアレルギーが増えてきて豆腐がダメになり、大好物だった麻婆豆腐が食べられなくなってしまいました。麻婆茄子は食べられるのですが。茄子以外で麻婆に合う食材やレシピ、なにかないでしょうか」 - 住 吉
- 麻婆が美味しければ、色々な食材に合うから落ち込みすぎないで…とは言いたいのですが、私も豆腐が大好きなので、急に豆腐でアレルギーが出るようになったらショックだろうなと…。
まず、「食物アレルギー」はどのように起こるのでしょうか? - 森 田
- アレルギーというのは、体に入ってきた異物をやっつける仕組み、これを免疫と言いますが、この免疫が働き過ぎたり、異常を起こしたりして生じる反応のことです。アレルギーを引き起こす物質はアレルゲンと呼ばれ、本来は多くの方にとってそれほど害にならないような物質なのですが、特定の方に対しては、アレルギーの原因になることがあるんです。
- 住 吉
- “豆腐がダメ”ということは、「大豆アレルギー」だということですね。
- 森 田
- そうですね。
食物アレルギーは、小さいお子さんに現れることが多いのですが、成長とともに、徐々に治ることも少なくありません。ただ、一部の方は大人になってもアレルギーが残ったり、大人になってから発症したりすることもあります。
原因となる食べ物は年齢によって異なり、乳幼児期では、鶏卵、乳製品、小麦が3大アレルゲンとして知られていますが、幼児期になると、木の実類、魚卵、落花生によるアレルギーが増加し、小学校以上では果物類、えびやかになどの甲殻類のアレルギーが増えていきます。 - 住 吉
- では、卵や牛乳、小麦がアレルギーだった方は、大人になって変わるのですか?
- 森 田
- そうですね、治ることが多いですね。子供の頃にアレルギーとなっていた、鶏卵、牛乳、小麦、大豆でも、3歳までに約50%、6歳までに約70%が自然に食べられるようになると報告されています。これを耐性化と呼んでいます。
ただ、それ以外の食物アレルギーは治りにくく、一度発症すると、生涯にわたって食べることを避ける必要が出てくる、というのが現状かと思います。 - 住 吉
- そうなのですね。
アレルギーの症状には、重篤なものもあるとよく聞きますが…。 - 森 田
- そうですね。軽い症状ですと、皮膚の症状で、食べてからだいたい数分から数時間で、かゆみや蕁麻疹などの症状が現れます。ただ、ひどくなると、下痢が起きたり、喘鳴と言ってぜいぜいしたりと、全身に症状が現れることもあり、これをアナフィラキシーと言います。さらに、意識障害や血圧低下など、重篤なアナフィラキシーショックを発症した場合は、すぐに救急車を呼んで処置が必要となります。
- 住 吉
- 食物アレルギーの診断はどのように行われるのでしょうか?
- 森 田
- 問診が最も大事です。「どのような症状が、何を食べた後、どのぐらい時間が経ってから現れたか?」を詳細に聞きます。問診で疑わしい食物を絞り込めたら、場合によっては、医療設備の整った場所で、実際にその食物を食べてみて、症状が出るかどうかの「食物経口負荷試験」というものを慎重に行うこともあります。ただ、これは医療機関でやらなければ危険なので勝手にやってはいけません。
また、血液検査や皮膚テストの結果を、診断の参考にすることがありますが、あくまでも診断の補助として用います。 - 住 吉
- 血液検査で、食べ物の一覧に“陽性”と書いてあることもあるようですが、陽性なら食べてはいけないということなのでしょうか?
- 森 田
- これは、大勢の方が勘違いをしているのですが、抗体の量を調べる血液検査で陽性だったからといって、食べてはいけないというわけではないんです。
- 住 吉
- そうなのですか!
- 森 田
- 「将来、食物アレルギーを発症するリスクがある」ということなので、決して食べてはいけないというものではありません。補助的診断として、この血液検査を使っています。
- 住 吉
- ただ、意識として、その食材に気をつけたほうがいいということですね。
- 森 田
- そうですね。食べてはいけないというわけではなく、その食材を食べて何か反応が出たら、きちんと医師に報告しましょう、ということです。
- 住 吉
- あとは、食べ過ぎない。
- 森 田
- そうですね。
そして、結果が出たら、その結果をどう受け止めるかということを、きちんと医師に相談したほうがいいですね。