第315回 工藤進英さん
- 住 吉
- 住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のテーマは、「大腸がん」です。スタジオにお迎えしたのは、昭和大学特任教授で、昭和大学国際消化器内視鏡研修センター長の工藤進英先生です。よろしくお願いいたします。
- 工 藤
- よろしくお願いします。
- 住 吉
- 先生は、これまで内視鏡検査数を何十万例も行い、“神の手”とも称される、内視鏡検査の世界的な第一人者でいらっしゃいます。
今日は、「大腸がん」のことを伺っていきますが、まず、日本人の死亡原因の1位は「がん」で、しかも「大腸がん」は男女ともに死亡原因の上位にありますよね。 - 工 藤
- そうですね。特に女性がものすごく多いですね。
コロナ禍になって、世界中で検診受診率が大幅に下がったんです。下がった途端、大腸がんの死亡者数が上がって、1年間で15~16%上がったとイギリスのロンドン大学から出て、大騒ぎになりました。 - 住 吉
- これは、男女ともに?
- 工 藤
- 男女ともです。
- 住 吉
- これは、先生もおっしゃったように、コロナ禍の検診控えが原因であると。
- 工 藤
- そうです。それともう一つは、大腸がんが、早期がんから進行がんになって転移して死亡するまでのスピードが非常に早いということですね。
- 住 吉
- だからこそ、先生は色々な方に「大腸がんについて知ってほしい」「検査を控えないでほしい」ということを、今のタイミングですごく訴えたいと思っていらっしゃるのですね。
- 工 藤
- そうなんですよ。大腸がんの死亡者数増加をみんなが認識して、自分の体は自分で守るということ。要するに、検査を受けなければいけないということです。
- 住 吉
- その検査について、まず一番初歩的なものに、便潜血反応、いわゆる検便がありますが…。
- 工 藤
- 便潜血が陽性になるのは、進行がんや大きな隆起のポリープです。その場合は、ぶつかって血が出て陽性になります。ただ、陥凹型の大腸がんの場合、ほとんど陽性にならないんです。そして、その陥凹型が非常に危ないということがわかってきました。ですから、便潜血や症状に関わらず、がん年齢になったら検査をやることですね。
- 住 吉
- 昔は検便をしていると少し安心かなと思っていましたが、今わかっていることだと、検便だけでは大腸がんの早期発見はできないのですね。
- 工 藤
- 早期がんとして一番重要な陥凹型をほとんど見逃すことになってしまうんです。
- 住 吉
- 検便では足りないとなると、登場するのが「内視鏡検査」なのですが、受けたことのない方は、「内視鏡検査は痛いのではないか?」「どういうことをやるんだろう…」と思っている方もいると思います。
- 工 藤
- 日本は胃がんが多いので、胃カメラはやったことがあるかもしれません。あれも内視鏡ですね。胃の内視鏡は、口から入って食道を通って、すっと胃の中に入るので、そこを見るのは割と簡単です。ところが、大腸は縮めると50cmぐらいまで縮まって、伸ばすと1mぐらいになるので、縮めながら入れていくのですが、やはり内視鏡医の訓練がいるんです。そのため、経験数のある人にやってもらったほうがいいです。 それと、私が今日一番言いたいのは、胃がんも食道がんも陥凹型ですが、大腸がんだけはポリープという誤った概念がありました。ポリープはゆっくりとした発育で、10倍ぐらい遅いんですよ。ただ、陥凹型は1年であっという間に進行がんになって、転移して死亡する。大腸がんの死亡者数が今上がっているのは、まさに陥凹型を多くの人が見つけていないからなんですよね。
- 住 吉
- 内視鏡検査に関しては、何歳くらいから検診を勧めていますか?
- 工 藤
- がん年齢になったら、すぐにやったほうがいいです。
- 住 吉
- がん年齢というのは?
- 工 藤
- 成人ですね。あまり若い人はいらないと思いますけどね。
- 住 吉
- では例えば、社会人になったらすぐに?
- 工 藤
- やったほうがいいです。そうすると、腸の中がどうなっているか、ポリープがたくさんあるとか、陥凹型があるとか、そういうことがわかるので、その状況に応じて、毎年検査を受けたほうがいい場合も、何年か期間をおいてもいい場合もあります。あとは、家族歴。大腸がんは遺伝ともものすごく関係してきます。自分の体は自分が守る。さぼっていたら、大腸がんで死ぬ確率は一番高くなるんです。
- 住 吉
- 検査を受けることで死に至るような病が防げるなら、受けたほうがいいですね。
- 工 藤
- 今、女性の死因第1位が大腸がんですから。
- 住 吉
- 陥凹型のお話もありましたが、私たちが大腸がんのイメージとして持っていたポリープも、内視鏡検査では探して切っているわけですよね?
- 工 藤
- 探すと言いますか、ポリープは多くの人が持っているんですよ。一番極端な例は、家族性大腸腺腫症と言って、1万個もポリープができる人がいます。ただ、がんはそれほどできません。ですから、今まではポリープを放っておくとがんになる、という感覚がありましたが、我々の経験では、ポリープからがんになるのはそれほど多くないです。
胃や食道もそうですが、がんは最初からがんとして、要するに陥凹型として起こるんですよ。 - 住 吉
- ポリープだからがんになるのではなく。
- 工 藤
- ポリープが陥凹するのではなく、がんの元は、最初から進行がんも陥凹しているし、早期がんも陥凹しています。3mmでも。そういうものを見つけなければいけません。