第317回 石川光也さん
- 住 吉
- 住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のテーマは、「子宮頸がん」です。お話を伺うのは、国立がん研究センター中央病院 婦人腫瘍科長の石川光也先生です。よろしくお願いいたします。
- 石 川
- おはようございます。よろしくお願いいたします。
- 住 吉
- 番組ではこれまでも何度か、女性特有のがんを取り上げて一緒に考えてきましたが、改めて、「子宮頸がん」とはどのような病気かを教えてください。
- 石 川
- 子宮がんには、「子宮体がん」と「子宮頸がん」の2つがあります。そのうち、「子宮頸がん」は子宮の出口にできるがんです。早期に発見できれば治療して治る確率も高いのですが、進行すると再発したり、命を落とす危険が増えてきます。 最近の日本では、年間約1万人が子宮頸がんになり、そのうち約2,900人が命を落としています。
- 住 吉
- 子宮頸がんは、原因がわかっているがんなのですよね?
- 石 川
- そうですね。子宮頸がんの発生の多くは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が関連しています。HPVは、性交渉で感染することが知られているウイルスで、子宮頸がんの患者さんの90%以上からHPVが検出されることがわかっています。
感染自体はまれではなく、多くの場合、症状のないうちに排除されていると考えられていますが、一部の人では感染が長期間持続し、異形成と呼ばれる子宮頸がんの前がん病変に進み、そこからまた時間をかけて子宮頸がんに進行すると考えられています。 - 住 吉
- 自覚症状はあるのでしょうか?
- 石 川
- 子宮頸がんの代表的な症状は、生理以外の出血や性交渉したときの出血などの不正出血です。ただ、前がん病変や、ごく初期の子宮頸がんの段階では、出血が起きないこともありますので、早期に発見するには子宮がん検診が重要です。
- 住 吉
- 子宮頸がんの検査は、どのような検査でしょうか?
- 石 川
- 腟鏡を腟内に挿入し、子宮の入り口付近を綿棒やブラシで擦って細胞を集め、顕微鏡でがん細胞を見つける細胞診検査として行われています。
また最近では、HPV感染を調べる方法も出てきています。 - 住 吉
- 市町村で行う検診では、20歳以上、2年に一度が推奨されているようですが、実際は何歳ぐらいから検査を受けたほうがいいのでしょうか?
- 石 川
- 現在、20歳以上の方が検診の対象になっています。子宮頸がんの患者さんの発症年齢は、実は20歳台から増え始めます。特に近年の日本では、若い方の子宮頸がんが増えています。
早期がんの段階では、患部のみの切除で子宮を温存できることもありますが、進行してしまうと、がんの治療のために子宮を失い、妊娠できなくなりますので、早期発見が何よりも大事です。そのために、子宮がん検診をしっかり受けていただきたいと思います。 - 住 吉
- 20歳以上の方が検診対象とのことですが、何歳ぐらいまで検査を受けたほうがいいのでしょうか?
- 石 川
- 子宮頸がんは、若い年代から高齢者まで幅広い年齢層で発症しますので、閉経されても検診は受けていただくのが良いと考えています。
- 住 吉
- 大人になったらずっと気をつけておいたほうがいいのですね。
- 石 川
- そうですね。
- 住 吉
- 子宮頸がんの患者さんに接していて、先生はどのようなことを感じていますか?
- 石 川
- 日本では、子宮頸がんの患者数も亡くなる方の数も増えていて、子宮がん検診の受診率が低いことが原因の一つかと思われます。子宮頸がんは、がん検診の有効性がわかっている数少ない病気の一つなので、ぜひ検診を受けていただきたいですね。
- 住 吉
- “日本では”ということは、海外ではもう減っているところもあるのですか?
- 石 川
- そうですね。ワクチンの普及によって減っている国もあります。
- 住 吉
- ワクチンのお話は後ほど伺います。
ここからは、「子宮頸がんに関する素朴な疑問」にいくつかお答えいただければと思います。
まず1つ目は、性交渉で感染する病気だと先ほど伺いましたが、男性は罹患しないのでしょうか? - 石 川
- 実は男性にも関連することがわかっています。HPV感染が原因となるがんでは、子宮頸がん以外にも、男性の場合、「陰茎がん」「外陰がん」「肛門がん」「咽頭がん」などが知られています。ただ、これらのがんは子宮頸がんよりも頻度の低い病気です。
- 住 吉
- もう1つ、素朴な疑問ですが、遺伝的要素はありますか?
- 石 川
- 子宮頸がんの一部のタイプでは遺伝的要素が知られていますが、ほとんどは、遺伝的要素はないと考えられています。
- 住 吉
- 先ほど、ワクチンのお話も少しありましたが、子宮頸がんのワクチンとはどのようなものなのでしょうか?
- 石 川
- HPV感染を予防する目的のワクチンですので、すでに感染したウイルスを排除したり、感染した細胞を治したりする効果はありません。そのため、性交渉が始まる前にワクチンを接種することが大事です。
世界保健機関(WHO)は、HPVワクチンと子宮頸がん検診をしっかりと行うことで子宮頸がんを排除することができると呼びかけています。すでにワクチン接種が普及している国では、子宮頸がんの患者数が減ってきていることが示されています。