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第334回 岩崎真宏さん

第334回 岩崎真宏さん

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住 吉
住吉美紀がお届けしています、TOKYO FM「Blue Ocean」。今日の「Blue Ocean Professional supported by 協会けんぽ 健康サポート」のゲストは、“栄養のスペシャリスト”。医学博士で管理栄養士、日本栄養コンシェルジュ協会代表理事でもいらっしゃる、岩崎真宏さんです。おはようございます。
岩 崎
おはようございます。お願いします。
住 吉
病院勤務の管理栄養士の経験などから、生活習慣病を治療するための食事や栄養の研究に力を注ぎ、数々の論文を発表してこられました。そして、アスリートとともに日本栄養コンシェルジュ協会を立ち上げて、栄養に関する指導者の育成にも注力していらっしゃいます。
そんな岩崎さんが注目していらっしゃるのが、「野菜」。『野菜は最強のインベストメント-投資-である』というご本を出版され、今、このご本が話題を集めています。
なぜ野菜に注目されたのですか?
岩 崎
おそらく皆さん、野菜が身体に良いことは知っていると思うんですよね。ところが、未だに野菜不足という世の中で、世界中、同じ課題を抱えています。昔は、野菜は裕福な家庭などでしか食べられなかったんですよね。ところが今は、たくさんの野菜がスーパーでも並ぶ時代になって、誰でも食べられる、贅沢なものを手に入れることができます。野菜を食べることで身体をもっと健康にする時代が、いよいよ来たのではないかと。
住 吉
野菜だけが持つ栄養素があるのだそうですね?
岩 崎
そうですね。「フィトケミカル」という、ビタミンやミネラルとはまた別の新たな成分が、植物や野菜から見つかっているんですよ。
住 吉
フィトケミカル?
岩 崎
はい。例えば、玉ねぎを食べると体脂肪がどんどん燃えやすくなる、体力が上がる、という効果がフィトケミカルにあるんですよ。ニラを食べたら髪の毛が生えてくる、という動物実験の結果も出ていたり。ところが、それがどの成分なのかはまだ見つかっていないんです。
住 吉
“フィトケミカル”という成分ではないのですか?
岩 崎
フィトケミカルという成分なんですが、何万という種類があって。1つの野菜の中に、複数のフィトケミカルが含まれているんです。それで今まさに、「この成分はどんな働きがあるのか?」という解明が進んでいるところで、まだまだ見つかってくると言われています。
住 吉
フィトケミカルは、「生で食べなければ…」とか「茹でなければ…」とか、そういうことも関係なく摂れるのですか?
岩 崎
多くのフィトケミカルは、加熱しても能力が維持されるものが多いです。あとは、加熱したほうがよく吸収される場合もあったりして、栄養としてはすごくおもしろいです。
住 吉
おもしろいですね。
ご本に、『野菜は最強のインベストメント-投資-である』というタイトルをおつけになっていますが、「インベストメント」、つまり「投資」という言葉を選んだのはなぜですか?
岩 崎
今は健康だとしても、病気になったり、体調が悪くなったりするのは、今よりも少し先なんですよね。ただ、今食べているものが、その先の身体を作っているので、健康は投資なんですよ。野菜を食べることで、色々な成分が身体を変えるので、その変える力を早い段階で手に入れておくと、将来のリターンに繋がってきます。
住 吉
少し先の未来のためにも、野菜をもっと取り入れたほうがいいということなのですね。
岩 崎
そうですね。今食べないと、投資にはならないんですよね。リターンは来ない。
しかも、野菜への投資、食べるということへの投資は、ほぼノーリスクなんですよね。なのに、投資の仕方によっては、ハイリターンになるんです。
住 吉
今ここから聴いた方は、ファイナンシャルプランナーの方にお話を聞いているのかと思ってしまいますね(笑)。野菜の話をしています。
なるほど。「だから、野菜を摂ったほうが得だよ」というようなことを、ご本にお書きになっています。すごく色々な視点から野菜の話を書いていらっしゃるので、著書の中からいくつかテーマをピックアップしたいと思います。
まず、まさに今おっしゃった、「野菜が大事なのはわかっているけど、食べなくても別に健康な気がします」というお声もたくさん寄せられると思います。それに対しては、どのようにお答えになりますか?
岩 崎
「今、健康である」というのは良いことだと思うんですよね。ところが、我々生きているものは秒速で老化しているんですよ。なので、昨日よりも少し老けているはずなんです。健康診断を受けてようやく気づくことは、健康診断をしなかったら気づかないわけですよね。つまり、今は健康でも明日はどうかわからないので、将来の健康のために、今、野菜を食べておいたほうがいいですよ、というふうにお答えしています。
住 吉
続いて、「肉を食べたほうが、生産性が上がるのではないか?」「結局、必要なのはタンパク質なのではないか?」という項目もありますが、こちらは?
岩 崎
タンパク質ももちろん大事な栄養なんですが、タンパク質の役割は、身体の部品なんです。傷ができたら食べたほうが治りやすい、筋肉をつけるなら食べたほうがつきやすい。ところが、部品と言っても、例えば、車も部品が揃って出来上がっていますが、より効率よく動くとか、故障しないように走り続けるとなると、そこにはまた別の栄養成分が必要で、それをやっている成分が、フィトケミカルであったり、野菜に含まれている成分なんです。なので、“肉+野菜”が身体にとっても非常に良いですね。
住 吉
なるほど。役割が違うということですね。
あとは、「サプリや野菜ジュースで野菜を摂っています」という方もいると思いますが、こちらはいかがですか?
岩 崎
サプリメントは、野菜に含まれている成分の1つを効率よく摂る、というものですが、野菜は1つに何千という種類の成分が入っています。なので、野菜はサプリメントとはまた別の物で、役割が全く違います。
住 吉
「サプリを摂っているからオールOK」ではないよ、ということですね。
岩 崎
そうですね。サプリ=野菜ではない、ということです。
住 吉
野菜ジュースもそうですか?
岩 崎
野菜ジュースも、野菜を絞った状態なので、たくさん水と触れている時間がどうしても長くなります。そうすると、野菜もそれぞれその中で発酵があったり、成分が減ってしまったりするということは当然あるので、悪くはないんですが、野菜をジュースで摂ることと食事で摂ることとでは、また違った成分になります。
住 吉
なるほど。では、生であれ、料理した状態であれ、野菜として食べるというのが、健康のためにはすごく大事なのですね。
大人だと、だいたい1日のうちにどのくらい摂ると良いのでしょうか?
岩 崎
目指しましょうと言われているのが350gで、結構なボリュームなんですよ。
住 吉
確かに、かなりのボリュームですね。
岩 崎
ただ、それは目標のトータル量で、普通に食事をしていたら、平均で270gぐらいは摂れているんですよ。ということは、残り50~70gでいいので、野菜料理を1皿か2皿、1日の中で追加できたらもう勝ちなんですよ。
住 吉
普通の食事というのは…。
岩 崎
朝・昼・夕の3食食べていたら、付け合わせがあったり、ハンバーグにも玉ねぎが混ざっていたりと、結構野菜が混ざっているんです。
住 吉
なるほど、そういうものもカウントしていいということですね。
岩 崎
していいんです。なので平均すると、270gは摂れている、と。
住 吉
では、朝に1つ、昼に1つとか、何か野菜の小鉢などを追加する、という意識が大事ですね。
岩 崎
そうなんです。