今月の+10(プラス・テン)
6月1日配信 連載3回
ストレッチングで体をほぐし、ロコモも予防しよう

毎日の生活の中で「10分多く」体を動かす「+10(プラス・テン)」の習慣がついてきたら、もう1歩進んで、ちょっとした運動を取り入れてみましょう。筋肉や関節をほぐすことで、こりが改善し、ストレス解消や疲労回復にも役立ちます。さらに、将来的なロコモ(ロコモティブシンドローム)の予防にもつながり、一石二鳥です。
【監修】 宮地元彦 先生 国立健康・栄養研究所 健康増進研究部部長
ストレッチングにはさまざまな効果がある
短時間でできる運動の中でも、手軽にでき、これまで運動不足だった人に特におすすめなのが「ストレッチング」です。
ストレッチングは、意図的に筋肉や関節を伸ばす運動のこと。本格的な運動の前後に、準備運動や整理運動として行われることが多いですが、ストレッチングだけを行っても、次のようなさまざまな効果があります。
・体がやわらかくなる
筋肉や関節を伸ばすことで体の柔軟性が増し、筋温(筋肉の温度)や体温が上がります。肩・首のこりや体の冷えの改善、姿勢矯正などが期待できます。
・リラクゼーション効果がある
ストレッチングの前後に脳波や自律神経活動を調べた研究では、α波が増加し、心拍数が低下することが明らかになっています(*)。
深く呼吸をしながら体を伸ばすことで、気持ちが落ち着き、よく眠れるようになったり、疲労回復につながったりします。
・ロコモ予防につながる
ロコモ(ロコモティブシンドローム)とは、骨や関節、筋肉をはじめとする運動器の障害のために、「立つ」「歩く」などの移動機能が低下している状態のことをいいます。
ストレッチングを習慣づけて筋肉や関節をほぐしておくことが、ロコモ予防につながります。
*斉藤剛, 保野孝弘, 宮地元彦.特集「ストレッチングの生理学」大脳皮質・自律神経系活動および全身循環への影響.運動・物理療法 2001; 12: 2-9.
ストレッチングを行うときの5つの注意点
効果的にストレッチングを行うには、次の5つのポイントに注意しましょう。
(1) 呼吸は止めないようにする
(2) 20~30秒程度、ゆっくり伸ばす
(3) 痛いと感じない程度に、適度に伸ばす
(4) ストレッチングする部位の筋が十分伸びている感覚を意識する
(5) 反動をつけたり、押さえつけたりしない
これらを守らないと、かえって筋が硬直してしまったり、痛めたりしてしまいます。「ゆっくり、気持ちよい程度に」が基本です。
部位ごとにストレッチングをやってみよう
では、実際にストレッチングを行ってみましょう。
広い場所も道具も必要なく、簡単なので、家事や仕事の合間やテレビを見ながらなど、いつでもどこでもすぐできます。
【脚】

【体幹】

【肩・腕】

資料:厚生労働省「健康づくりのための運動指針2006」(エクササイズガイド2006)より一部改変
ロコモ予防にはストレッチングに筋トレを組み合わせよう
ロコモは、要支援・要介護状態となる原因の第1位となっており、働きざかりのころからの対策が重要です。
日ごろからストレッチングを行って体の柔軟性を保つとともに、簡単なトレーニングを組み合わせるのがよいでしょう。次回からは、体全体の働きをよくするロコトレ(ロコモーショントレーニング)と、足腰を鍛えるための軽い筋トレ(筋力トレーニング)を紹介します。
●家事や仕事の合間、テレビを見ながらなど、空いた時間にストレッチングを取り入れてみましょう。
●ストレッチングの効果を上げ、安全に行うには、5つの注意点を守るようにしましょう。