2016年3月18日配信 連載64回
12条 正しいがん情報でがんを知ることから
世の中に氾濫するたくさんの情報に惑わされず、科学的根拠に基づくがん情報を得て、あなたに合ったがんの予防法を身につけることが大切です。間違った思い込み、情報の過信には、くれぐれも気をつけましょう。
【監修】 津金昌一郎 先生
国立がん研究センター 社会と健康研究センター センター長
生活習慣改善こそが予防の基本
がんは、生活習慣や生活環境と密接に関係していることがわかっています。このコーナーで前回までにご紹介してきたがん予防法は、日本人を対象とした研究をもとに、科学的根拠にもとづいて提示したものです。
とはいえ、がんはさまざまな要因が複雑に重なり合い、長い時間をかけて発生してくる病気です。そのため、「これをするとがんのリスクが一気に上がる」とか、「これさえ守れば絶対にがんにはならない」などということは、ほぼないに等しいといってよいでしょう。
ですから、各項目で提示した目標値は、がん予防法を実践するうえでの手がかりとして、あくまでもひとつの目安とお考えください。
また、現代はインターネットからも手軽に情報が収集できるため、世の中には多種多様な情報が氾濫しています。専門知識をもたない一般の方が、これらのなかから科学的根拠にもとづいた信頼できる情報を見極めるのは、容易なことではありません。そのため、その時々に耳にした報道などに、どうしても左右されてしまいがちです。よくありがちな「〇〇で予防する!」といった情報を鵜呑みにしてしまうと、その内容によっては、かえって健康面にマイナスの影響を与える危険もあります。
これまで述べたとおり、禁煙、食事、運動といった生活習慣の改善が、がん予防の基本です。このごく当たり前とも思える生活習慣改善こそが、現段階では、個人としてもっとも実行する価値のあるがん予防法といえるのです。
がん予防法を実践するうえでの注意点
ここでご紹介してきたがん予防法は、多くの方にとって有益な方法といえます。とはいえ、誤った解釈をしてしまうと、予防効果が期待できないだけでなく、かえって逆効果になることもあり得ます。以下の点に注意したうえで、実践するようにしましょう。
- ・どんなに体によいものでもとり過ぎには注意 ある食品や栄養素が体によいと聞くと、そればかりを集中的に摂取しようとする人がいます。しかし、どんなに有効な成分を含んでいるものであっても、たくさんとるほど効果も上がるとは限りません。ものによっては、過剰摂取により、弊害が起こる危険もあります。とくに、栄養補助剤(サプリメント)を服用する際は、注意が必要です。
- ・総合的なバランスを考えたうえで、生活習慣の改善を 一部のがんや糖尿病の予防には、肥満の解消が有効であることがわかっています。一方で、やせ過ぎは別の部位のがんや感染症のリスクを上げることもわかっています。このように、同じがんであっても、対象となる部位により、予防法も変わってきます。一部の情報だけにとらわれて極端な取り組みをするのではなく、あくまでも総合的な健康に配慮したうえで、生活習慣を改善することが大切です。
- ・最適な予防法は常に「アップデート」が必要と心得て たとえば、乳がんや子宮がんといった女性特有のがんなどは、閉経の前後により発症のリスクが変わってくる場合があります。また、適正な体重も年齢によって異なります。
このように、同じ人であっても、一生のなかでライフステージが移り変わっていくに従い、必要かつ最適な予防法も変化していきます。自身の体質や生活環境の変化などを時々見つめ直し、がん予防のための戦略も練り直すことを心がけましょう。
がんに関する情報全般については、国立がん研究センターの「がん情報サービス」を参照してください。