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血管を若返らせて動脈硬化予防。見た目や行動も若々しく

血管を若返らせて動脈硬化予防。見た目や行動も若々しく

 「人は血管とともに老いる」といわれるように、年をとるにつれて血管も老化し、弾力が失われ、血液が流れにくくなります。血管の老化は生活習慣病の危険に直結しますが、逆に弾力を保っていて若い血管の持ち主ならば、その人は血管だけでなく、見た目や行動も年齢以上に若々しいはず。ファッションで若返る前に、体の中から若返りましょう。

血管の若さを左右するのは動脈硬化

 血管の若さは動脈硬化によって大きく阻害されます。動脈硬化は血管壁が肥厚し、弾力を失う病変です。脂肪の多いドロドロの血液から血管壁内に侵入したコレステロールや、それを食べた免疫細胞の死がいなどがたまってプラーク(動脈硬化巣)ができ、血管壁が厚く硬くなり、血管の内腔が狭くなって血流が障害されます。これが動脈硬化です。
 動脈硬化は老化現象の一つなので、年齢を重ねれば誰にでも起こり得るもので、徐々に進みます。高血圧や糖尿病があると、その進み具合が速く、現代社会では、実年齢以上に血管の老化が進んでいる人が増えています。
 動脈硬化をもたらす主な原因は、メタボリックシンドローム(内臓脂肪症候群。以下、メタボ)です。メタボとは、内臓脂肪の蓄積(内臓脂肪型肥満)から、糖代謝異常(高血糖)や脂質代謝異常(脂質異常)、血圧の異常(高血圧)が複合的に起こった状態をいいます。この状態が続くと動脈硬化が促進され、心血管疾患や脳血管疾患などの合併症を引き起こすリスクが高まります。
 動脈硬化を、ただの血管の老化と軽視せず、命にかかわる病気の引き金になっていることを意識し、予防・改善に努めることが大切です。

動脈硬化の元、メタボの原因は日頃の生活習慣

 メタボの原因は日頃の生活習慣にあります。以下のような生活習慣に当てはまることが多いほどメタボになりやすく、血管の老化が進みます。

血管の老化を進める生活習慣の例

      
  • 好んで野菜を食べようとは思わない
  • 毎日おなかいっぱい食べる
  • 栄養など気にせず、食べたいものを食べる
  • から揚げやとんかつが好き
  • 魚より肉が好き
  • 焼き魚や漬け物にしょうゆをかける
  • めん類の汁は全部飲む
  • 外食が多い
  • 甘いものに目がない
  • 生活が不規則
  • これといって運動はしていない
  • 歩くのが嫌い
  • 休日は家にいてあまり外出しない
  • たばこを吸う
  • 自分は酒豪だと思う
  • お酒を飲んだ後にラーメンを食べてしまう
  • 睡眠時間が短い
  • 朝ごはんは食べない

メタボを解消すれば血管は若返る

 メタボ解消が血管若返りのカギを握ります。それには上記のような問題のある生活習慣を一つずつ解消していくことです。大きくは、以下のようにまとめることができますので、今日から早速、メタボ習慣を改善し、血管を若々しく保ちましょう。

メタボ習慣を改善する心得

     
  • 甘いものや、油脂の多い料理は減らす
  • 魚や野菜を多くとることを心がけ、栄養バランスの取れた食事をする
  • 塩分(食塩)を控える
  • 毎日できるだけ歩くほか、軽く息切れするような運動を毎週定期的に行う
  • 禁煙する
  • お酒は飲みすぎない(日本酒にして1日1合まで)
  • 十分な睡眠をとる
  • ストレスを減らす
  • 毎日3食、規則的に食べる

猿田 享男 先生

監修者 猿田 享男名 先生 (日本高血圧協会理事・慶應義塾大学名誉教授)
1964年慶應義塾大学医学部卒業。同大学大学院医学研究科、聖路加国際病院を経て、69~71年米国テキサス州立大学に留学。帰国後、慶應義塾大学医学部専任講師、伊勢慶應病院内科部長などを経て、86年慶應義塾大学医学部内科教授。同大学医学部長、慶應義塾常任理事などを歴任後、現在に至る。専門は高血圧、腎臓病、内分泌など。日本内科学会理事、日本高血圧学会理事長、国際高血圧学会理事ほか、多くの学会役員を歴任。2004年版の高血圧治療ガイドライン作成委員会委員長。現在、厚生労働省先進医療専門家会議座長も務める。